研究課題/領域番号 |
21K18977
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研究種目 |
挑戦的研究(萌芽)
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
中区分34:無機・錯体化学、分析化学およびその関連分野
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研究機関 | 金沢大学 |
研究代表者 |
酒田 陽子 金沢大学, 物質化学系, 准教授 (70630630)
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研究期間 (年度) |
2021-07-09 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
6,500千円 (直接経費: 5,000千円、間接経費: 1,500千円)
2023年度: 2,080千円 (直接経費: 1,600千円、間接経費: 480千円)
2022年度: 2,210千円 (直接経費: 1,700千円、間接経費: 510千円)
2021年度: 2,210千円 (直接経費: 1,700千円、間接経費: 510千円)
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キーワード | ロタキサン / フレームワーク結晶 / 動的特性 / 金属錯体 / 回転運動 / 自己集合 / 強誘電体 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究では、ロタキサンをフレームワーク結晶中に精緻に配列し、ロタキサン輪分子の回転運動の活性化エネルギーを精密に制御することで、新奇な強誘電体材料創製に挑む。具体的には、ロタキサン構造が固体状態で精密に配列した場として、有機配位子と金属イオンの自己集合によって得られる多孔性配位高分子を用い、ロタキサン同士の距離や密度が異なる様々なフレームワーク結晶を作成する。続いて、得られた結晶中のロタキサンの輪分子の運動性解析および誘電応答特性の探索を行い、ロタキサンのナノメートルスケールの回転運動ならびにフレームワーク結晶のナノ細孔の特徴を活かした機能発現を目指す。
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研究実績の概要 |
本研究は、様々なロタキサン骨格を結晶構造内に配列させ、ロタキサンの輪分子のナノメートルスケールの回転運動を電場などの外部刺激に応答させて制御し、新規な強誘電体材料の創製を目指すものである。昨年度の研究において、新たなロタキサンモチーフとして2,3-ジアミノトリプチセンとPd(II)イオンからなる錯体が様々なクラウンエーテルとの相互作用によりロタキサンが形成することを見出した。今年度は、この錯体の輪分子にDB30C10あるいは27C9を用いたロタキサンの結晶構造解析に成功した。二つの結晶構造について錯体周りの構造を比較すると、環サイズの小さい27C9の方がDB30C10よりも錯体骨格にサイズがフィットし、水素結合形成による安定化を受けやすいことが明らかとなった。また、27C9を用いたロタキサン結晶については27C9が四ヶ所にディスオーダーしている様子が観測され、結晶状態においても輪分子の回転運動が可能であることが示唆された。 さらに、このロタキサンの形成速度を加速させる試みも行った。溶液中において、単純に軸分子となるPd(II)錯体と輪分子の27C9を混合した場合は、半減期122分とロタキサン形成は非常にゆっくりと進行する。この形成速度を加速させるため、様々な加速剤の添加実験を行った。Pd(II)イオンに配位する単座配位子を種々検討した結果、ハロゲン化物イオンを加えると、形成速度が最大27倍加速されることを見出した。これは、今後類似のロタキサンモチーフを構築する上での、効率的なロタキサン合成手法となり得る。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度の研究において、Pd(II)錯体と27C9から形成されるロタキサン構造の結晶構造解析に成功し、今後結晶構造内のロタキサンの輪分子の動的特性を調べる上で重要な知見が得られたと考えられる。そのため、研究は概ね順調に進展したと判断できる。
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今後の研究の推進方策 |
2,3-ジアミノトリプチセンとPd(II)イオンからなる錯体と様々なクラウンエーテルが相互作用することによりロタキサン構造が形成できることについてすでに報告しているが、軸分子錯体の構成要素となるフェニレンジアミン誘導体の置換基効果についても今後明らかにする。特に、どの程度の嵩高さの置換基を導入した場合にロタキサンの輪分子が通り抜けられなくなるかという点や、置換基の種類によりロタキサンの安定性がどのように変化するかなどについて調べることで、結晶状態での輪分子の運動性を制御するための指針が得られると期待される。 また、ジフェニルビオロゲン誘導体とクラウンエーテル誘導体から形成される[3]擬ロタキサンをビルディングブロックとした多孔性配位高分子のようなフレ-ムワーク結晶の構築についても引き続き検討する。
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