研究課題/領域番号 |
21K18979
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研究種目 |
挑戦的研究(萌芽)
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
中区分34:無機・錯体化学、分析化学およびその関連分野
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
長谷川 健 京都大学, 化学研究所, 教授 (30258123)
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研究期間 (年度) |
2021-07-09 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
6,370千円 (直接経費: 4,900千円、間接経費: 1,470千円)
2023年度: 2,470千円 (直接経費: 1,900千円、間接経費: 570千円)
2022年度: 1,950千円 (直接経費: 1,500千円、間接経費: 450千円)
2021年度: 1,950千円 (直接経費: 1,500千円、間接経費: 450千円)
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キーワード | 非晶モルフォロジー / MAIRS法 / フォノン / 非晶 / モルフォロジー / 高分子薄膜 / MAIRS / 構造パラメータ / 高分子 / 物性制御 / 微小モルフォロジー |
研究開始時の研究の概要 |
最先端の分子デバイスの機能発現を“薄膜”が担っている。薄膜の分子集合構造は,分子配向,配向分布,結晶多形などの“構造パラメータ”を通じて表され,それらは膜展開溶媒,蒸着条件,基板表面の性質などの“実験条件”に依存する。分光学および結晶学のいずれにとっても“非晶”の解析は難しく,解析に必要な“構造パラメータ”すら定まっていない状態にある。本研究では,非晶の解析に必要な新たな構造パラメータとして“微小モルフォロジー表面”に狙いを絞って分光学的に定量解析できるようにし,分子設計や実験条件にフィードバックした非晶の物性制御に革新をもたらす。
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研究実績の概要 |
高分子材料の微小モルフォロジー表面を読み解く重要なカギが,フォノン/ポラリトンの表面モードである。振動スペクトルに現れる有機物の表面モード由来のバンドは,一見して基準振動バンドと区別がつかず,非晶の多い高分子材料の解析に使える状況ではない。しかし,振動スペクトルの表面モードは微小なモルフォロジーの違いを強く反映し,またその量がバンド強度に反映されることは活用すべきである。本研究では,独自開発の多角入射分解分光法(MAIRS)を利用して,有機材料の表面モード解析が容易にできる状況に変える。MAIRSは,薄膜中の遷移モーメントを面内(IP)および面外(OP)成分に分けた二つのスペクトルにして,同一縦軸スケールで取り出せる唯一の吸収分光法であり,主としてFT-IRと組み合わせて用いられる。数ある表面モードのうち,光導波路を必要とせずに測れる平滑平面のBerremanモードと,粒子由来の多重極子モードは偏光特性が大きく異なることから,IPおよびOPスペクトルに現れる比率が大きく異なり,これを表面選択律と見ることでMAIRSだけで容易に識別でき,また配向が異なる基準振動との識別を実現させる。 戦略として,強い双極子モーメントを持つC-F結合からなるパーフルオロアルキル化合物(PFAS)を用いて,フォノンの有無を制御できる物質系を考えた.通常,単一化合物を分子集合させると,PFAS同士の双極子間相互作用が強く働き,フォノンが生じる.一方,炭化水素で同様の実験をするとフォノンが生じない.PFASと炭化水素を混ぜると,それぞれがドメインを形成して,フォノンの程度を調整できない問題がある.そこで,群馬大学の園山研と共同研究により,一分子の中にパーフルオロアルキル鎖と炭化水素鎖を両方持つ化合物を合成し,それを水面上の展開単分子膜として実験したところ,フォノンを適度に調整することに成功し,MAIRSスペクトルからその変化を読み取れることを実証できた.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
合成に時間がかかったが,その後は測定が順調に進み,予定していた成果にほぼ近いものが得られている.
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今後の研究の推進方策 |
フォノンの程度を制御することに成功したため,今後はモルフォロジーとの関係を突き止める研究を行う.AFM-IRによる局所解析も検討したい.
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