研究課題/領域番号 |
21K18987
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研究種目 |
挑戦的研究(萌芽)
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
中区分34:無機・錯体化学、分析化学およびその関連分野
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研究機関 | 大阪公立大学 (2022) 大阪府立大学 (2021) |
研究代表者 |
亀尾 肇 大阪公立大学, 大学院理学研究科, 准教授 (50597218)
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研究期間 (年度) |
2021-07-09 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
6,500千円 (直接経費: 5,000千円、間接経費: 1,500千円)
2023年度: 1,950千円 (直接経費: 1,500千円、間接経費: 450千円)
2022年度: 2,210千円 (直接経費: 1,700千円、間接経費: 510千円)
2021年度: 2,340千円 (直接経費: 1,800千円、間接経費: 540千円)
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キーワード | 無機化学 / 錯体化学 / 触媒 / 炭素-炭素結合活性化 |
研究開始時の研究の概要 |
現代化学で挑戦的な物質変換反応の一つは、分子性触媒を用いて炭素-炭素結合を自在に変換する反応である。もし有機化合物の主骨格である炭素-炭素結合を思い通りに変換できれば、多段階の合成反応の合成ステップを減らし格段に原子効率を高めることができる。本研究では、申請者が見出した炭素-炭素結合のラジカル的酸化的付加という、概念的に新しい素反応過程を基盤として、炭素-炭素結合の効率的変換という有機合成化学の核心的な課題に取り組む。
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研究実績の概要 |
分子性触媒を用いて炭素-炭素結合を自在に変換する反応の開発は、現代化学でも挑戦的な課題の一つである。特に、環歪みのない炭素-炭素単結合の変換は現在の触媒技術を用いても極めて難しい。これは、一般的な炭素-炭素単結合の切断法の鍵中間体が、遷移金属と炭素-炭素 σ 結合周辺との立体反発により生成しにくいためである。申請者は、電子移動に注目した新しい方法論を着想し、分子性触媒を用いて四級炭素間の炭素-炭素結合の切断を実現した。本研究の目的は、その知見を足掛かりに、四級炭素間の炭素-炭素結合を触媒的に変換するための学術的知的基盤を構築することにある。さらに、その知見に基づいて、四級炭素間の炭素-炭素結合変換を基軸とする、効率的な触媒反応の開発に取り組む。 申請者は、四級炭素間の炭素-炭素結合変換を鍵要素とするオレフィンのヒドロアルキル化反応を開発している。前年度までに、ニッケルホスフィン錯体と反応基質との化学量論反応を検討して、2つのカルバニオン配位子を有する反応中間体の構造決定を実現した。しかしながら、そのカルバニオン中間体の安定性が低くく、鍵となる中間体の反応性を調査することは困難であった。そこで、当該年度では中間体の安定化を図るため、(i) 高電子供与性 NHC 配位子を導入と (ii) カルバニオン周りへの電子吸引性置換基の導入を検討した。その結果、これらをともに取り入れることで、中間体の安定化を実現することができた。また、中間体の解析から、2つのカルバニオン配位子間にπ共役系が拡張し、その共鳴安定化効果が切断反応の重要な駆動力となっていることを明らかにした。今後は、これらの知見を基に、カルバニオン中間体の反応性の探索、更なる反応の高効率化に取り組む。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
これまでに、四級炭素間の炭素-炭素結合の切断を鍵要素とする、オレフィンのヒドロアルキル化反応の詳細を明らかにするため、中間体の捕捉を検討してきた。しかしながら、その熱的な安定性は低く、反応機構の知見を得るには、如何に中間体の安定化が課題となっていた。そこで、当該年度では、中間体の電子的な構造を考慮して触媒を再設計することで、十分な安定性を有する中間体の創製を実現した。さらに、その構造解析から、切断反応を促進される要因を考察することができた。これらの知見は、反応機構解明および反応の効率化のための重要な知見となる。
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今後の研究の推進方策 |
同定・単離したカルバニオン中間体の反応性を検討することで、触媒反応の詳細を明らかにする。特に、求電子的オレフィンとの反応を検討して、重要反応中間体であるオレフィンの付加体の構造決定を実現する。さらに、DFT 計算を取り入れて、反応機構を理論的にもサポートして、炭素-炭素結合切断反応の学理を深化させる。それらの知見を触媒反応の効率化や新反応の開発検討にフィードバックすることで、研究課題の一層の進展を図る。
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