研究課題/領域番号 |
21K19016
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研究種目 |
挑戦的研究(萌芽)
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
中区分36:無機材料化学、エネルギー関連化学およびその関連分野
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
小野 円佳 北海道大学, 電子科学研究所, 准教授 (20865224)
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研究分担者 |
JEEM MELBERT 北海道大学, 工学研究院, 特任助教 (00815805)
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研究期間 (年度) |
2021-07-09 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
6,240千円 (直接経費: 4,800千円、間接経費: 1,440千円)
2023年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2022年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2021年度: 4,030千円 (直接経費: 3,100千円、間接経費: 930千円)
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キーワード | トポロジー / ガラス / 薄膜 / 結晶基板 / 熱伝導率 / 薄膜アモルファス / トポロジー制御 / 結晶基板表面 / 結晶界面 |
研究開始時の研究の概要 |
ガラスは通常その原子構造がランダムなため、エネルギーの伝搬特性を向上することは難しい。これに対して、代表者は高圧高温状態でシリカガラスの構造を凍結すると、ネットワークの結合の剪定が起き究極の透明度を持つガラスが得られることを示した。このガラスは構造のゆらぎが少なく秩序性が高いことから、高いフォノン伝導性が期待される。制御に高温高圧処理が必要だと応用の幅が狭まる。そこで従来、超高圧超高温を使わなければできないガラスのトポロジー制御を、結晶表面特有の活性な境界条件、具体的には、格子定数がガラスの空隙サイズに近い結晶の界面を利用して、より常温常圧に近い条件で実現し、革新的ガラス薄膜合成法を構築する。
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研究実績の概要 |
本研究は、結晶基板とのトポケミカルな相互作用を利用して、ランダムな原子構造をとるガラスの構造を制御しようというものである。 当該年度は、Si基板,Ge基板,LSAT基板,LiNbO3基板,LaAlO3基板を用いて、これらにSiO2をALD(原子堆積法)やプラズマアシストALD、CVD、熱酸化といった異なる種々の方法を用いて薄膜堆積した。そしてこれらの薄膜の ①熱伝導率 ②FSDPと呼ばれるガラスに特徴的な中長距離オーダーを示すXRDピーク、③ラマン分光、FTIR分光など、そのほかの方法で構造を観測できないかをそれぞれ調査した。 結果として、①や②の測定結果は同じSiO2であっても、基板や成膜手法によって大きく変化することがわかった。また、これらの変化は基板の共有結合性に大きく依存することも見えてきた。基板の影響が大きいものの場合は、膜厚依存性も大きく現れることも突き止めた。しかしながら、③のラマン分光やFTIR分光による観測ではアモルファス薄膜による信号が結晶に対して小さすぎるか、角度などにより観測結果が大きく変化し、評価が難しいとわかった。②に関しては、放射光施設の強いX線解析が必須であったことから、SPring-8に測定を申請し、6シフトのビームタイムが受理されて測定を行った。このようなアモルファス薄膜の低角度XRDパターンの測定自体に前例がほとんどなく、チャレンジングであり、条件の最適化も必要で困難な部分が多々あったが、測定が成功し、物性と、XRDパターンの相関が明確にみられることがわかってきた。 さらに、本研究費を用いて計算を主に行う米国の留学生を受け入れ、薄膜合成やその評価を行いながら、2次元ガラスの構造や特性のコンピュータシミュレーションによるモデル化を開始した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
研究実績で述べたように、当該年度は実験も順調に進み、もともと目標においていたアモルファス薄膜の種々の方法を用いた構造制御ができるとわかってきた。影響の有無を決める基板の特徴や、薄膜生成方法の特徴も明確になってきた。 これに加えて、SiO2のみならず、AlOや誘電体薄膜、その他のバルクガラスでは生じないアモルファス薄膜を合成できるのではないかと考え、実験をすでに進めている。これらのことから、本研究は、当初の計画以上に進展をしていると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
本研究の当初の計画は順調に進められているが、高エネルギー加速器を用いた測定が必須であることや、ビームラインが非常に混雑していることなどが影響し、決定的なデータを得ることに苦労している。また、当初の計画ではTEMを利用することでアモルファス構造が明瞭に観察できると考えていたが、思いのほか薄い膜を作ることや剥離転写するのが困難で、他の方法をとるべきであると考えるに至っている。このため、構造測定に関してはSPring8の申請を毎期行いつつ、(薄い膜の作成にチャレンジは続けるが)NMRなどのほかの構造決定方法を試行し、今後の展開につなげていきたいと考えている。 トポケミカルな効果で例えばAlO膜の機械的挙動についても試しに調べており、変化が見える可能性が示唆されていることから、評価対象の物性の幅を広げたい。 また、最終年度であることから、これまで得られた実験結果を論文にまとめるとともに、さらなる発展の方向性を材料、物性の両面において模索する。
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