研究課題/領域番号 |
21K19031
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研究種目 |
挑戦的研究(萌芽)
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
中区分36:無機材料化学、エネルギー関連化学およびその関連分野
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研究機関 | 帝京科学大学 |
研究代表者 |
石井 あゆみ 帝京科学大学, 生命環境学部, 准教授 (70406833)
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研究期間 (年度) |
2021-07-09 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
6,500千円 (直接経費: 5,000千円、間接経費: 1,500千円)
2023年度: 1,950千円 (直接経費: 1,500千円、間接経費: 450千円)
2022年度: 2,210千円 (直接経費: 1,700千円、間接経費: 510千円)
2021年度: 2,340千円 (直接経費: 1,800千円、間接経費: 540千円)
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キーワード | 光増幅 / 太陽光 / 希土類 / 励起エネルギー移動 / ペロブスカイト |
研究開始時の研究の概要 |
光ファイバ増幅やレーザー発振には希土類イオン(エルビウム(Er)など)を添加した固体媒体が多く用いられており、これらは外部から光を照射し希土類イオンのエネルギー状態に反転分布を形成させることで光を増幅させる。一方、希土類イオンの電子遷移は禁制遷移であり、その吸収強度は非常に弱い。そのため、高い励起状態密度(反転分布形成)を得るにはレーザーなどのハイパワーな励起光源が必要となる。希土類イオンの反転分布形成を太陽光のような微弱な励起光源で促すことが可能となれば、簡便かつ環境負荷の少ない光増幅での長距離光通信やレーザー発振が実現できる。
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研究実績の概要 |
本研究では、光ファイバ通信やレーザー発振時に不可欠な光増幅を、レーザーのようなハイパワー励起ではなく、太陽光励起により実現する革新的な光増幅システムの創出を目的とし、色素(ドナー)からの高効率エネルギー移動を利用した微弱な光で希土類イオンの反転分布形成を促す新しい光増幅手法の確立を目指す。 一般に光増幅には、希土類イオンを光ファイバのコアであるシリカ等に添加し増幅媒体とした光ファイバ増幅器が用いられている。各種の光通信波長帯を増幅するため、エルビウムイオン(Er3+)などが利用されているが、反転分布形成には半導体レーザーを用いた光励起が必要となる。本研究では、光吸収能の非常に高いペロブスカイト系化合物や有機分子などの色素と希土類イオンを融合し、それらの間で生じる励起エネルギー移動を利用することで、太陽光よりも微弱な光による希土類イオンの反転分布状態の形成と光増幅を実現する革新的な手法を構築する。 2022年度はペロブスカイト結晶をエネルギードナーとした光増幅系の構築と自然放射増幅光の発現を目指し研究を行った。希土類イオンのエネルギードナーとして、高い光吸収能を持つハロゲン化鉛ペロブスカイト化合物(以下、PB)を用いた。PBの基本構造は、熱安定性の高いABX3(A = Cs+; B = Pb2+ or Sn2+; X = Cl- or Br-)とし、その格子内あるいは層間に希土類イオン(Er3+, Pr3+, Nd3+, Tm3+, Yb3+)を配列させた。2021年度までに、PBの強い光吸収とPB-希土類イオン間で生じるquantum-cutting機構を利用することで、太陽光レベルの光照射により近赤外発光を100%以上の効率で促すことに成功している。2022年度はこれらの材料を高分子材料に分散させたフィルムを構築し、レーザー照射による自然放射増幅光の検出に成功した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
二年目において、光増幅系の基本となる構造は確立でき、自然放射増幅光の発現にも成功した。現在のところ、研究課題はおおむね順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、これまで得られた結晶構造を最適化し、太陽光下で希土類イオンの励起状態および反転分布状態の更なる超高効率形成を促す。最終的には、希土類イオンを含むペロブスカイトあるいは錯体からなる結晶をコア、石英ガラスをクラッド(シェル)とした簡易的な光ファイバ構造を構築し、太陽光照射下における光増幅能を評価する。
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