研究課題/領域番号 |
21K19033
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研究種目 |
挑戦的研究(萌芽)
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
中区分36:無機材料化学、エネルギー関連化学およびその関連分野
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研究機関 | 甲南大学 |
研究代表者 |
池田 茂 甲南大学, 理工学部, 教授 (40312417)
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研究分担者 |
野瀬 嘉太郎 京都大学, 工学研究科, 准教授 (00375106)
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研究期間 (年度) |
2021-07-09 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
6,370千円 (直接経費: 4,900千円、間接経費: 1,470千円)
2023年度: 1,820千円 (直接経費: 1,400千円、間接経費: 420千円)
2022年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2021年度: 3,120千円 (直接経費: 2,400千円、間接経費: 720千円)
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キーワード | 昇華性半導体 / ナノ構造形成 / 光電極 / 水分解材料 / 化合物半導体 / ナノ構造 / 昇華 |
研究開始時の研究の概要 |
毛細管凝縮は、毛細管内の液体の表面張力から導かれる気相-液相間の平衡に適用される一方、気相-固相間の平衡においても、毛細管内で昇華曲線の低圧側シフトが予測される。本研究では、この昇華点降下現象を実証・適用し、近接昇華によるp型半導体ナノロッドの自立配向基板を作製する。また、p型-n型無機半導体界面(ミクロpn接合)を形成させ、これを利用する高機能水分解水素発生電極の実現を目指す。
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研究実績の概要 |
ケルビン式で表される毛細管内での気体の沸点が細孔外の沸点よりも低下することで生じる毛細管凝縮は、毛細管内の液体の表面張力から導かれる気相-液相間の平衡に適用される。一方、気相-固相間の平衡においても、毛細管内で昇華曲線の低圧側へのシフトは理論的に予測されている。本研究では、この昇華点降下現象を実験的に実証するとともに、この現象を活用することでナノ構造が制御された機能性材料・デバイスを開発することを目指す。ここでは、昇華性を有する化合物半導体である硫化スズ(II)(SnS)を、陽極酸化ポーラスアルミナ膜(APAM)のシリンダー型の規則性細孔内に選択充填させることで昇華点降下現象の原理を実証することを第一の研究目的とする。また、ほかの昇華性半導体(CdTeおよびZnTe)にも本手法を応用し、p型化合物半導体のナノ構造形成の新しい手法として確立する。さらに、得られるナノ構造を高機能水分解光カソードとして利用することを第二の目的とする。今年度は、第一の目的については均一に孔サイズが制御されたAPAMの形成を重点的に行った。その中で、細孔サイズ(直径)をサブミクロンサイズでサイズ均一に再現よく作製できるための実験条件を確立した。また、研究を実施している中で見出したフラックス処理によって単結晶化された酸化物半導体光触媒の高機能化(昨年度成果)についても研究を進め、ドーパント添加による表面形状の制御(表面にナノメートルサイズのステップが形成されること)とそれに起因して高効率な水分解反応が進行することを見出した。また、第二の目的の実証のため進めてきたp型化合物半導体薄膜による水分解水素発生について表面n型層の制御(ホモ接合形成、ドーパント添加等)による高効率化を達成した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では、気相-液相間の平衡に適用される毛細管凝縮が、気相-固相間の平衡においても昇華点降下現象として起こり得ることを、硫化スズ(II)(SnS)を、陽極酸化ポーラスアルミナ膜(APAM)の細孔内に選択充填させることで実証することを第一の研究目的としている。また、ほかの昇華性半導体(CdTeおよびZnTe)にも本手法が適用できれば、p型化合物半導体のナノ構造形成の新しい手法として利用でき、さらに、得られるナノ構造を高機能水分解光カソードとして利用できることを示すことを第二の目的とする。昇華性半導体の細孔充填現象の観察については、鋳型となる陽極酸化ポーラスアルミナ膜(APAM)のサイズ均一性制御に一定の目処がたち、また細孔充填の実験系の設計もほぼ完成していること、光カソードの実証研究については、p型半導体からなる光電極を高効率化するための効果的な表面修飾方法についてのユニークな成果が得られ、それが昇華性半導体からなるナノ構造光電極についても十分に適用できると考えられること、予測していなかった単結晶光触媒の高機能化に関する知見が得られたこと、これらの進捗と成果を総合的に見て、研究はおおむね順調に進んでいると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
これまでの検討によって、陽極酸化ポーラスアルミナ膜(APAM)の細孔サイズを制御する手法が確立された一方で、SnSの成膜(昇華)実験についてはいくつかの条件を試みたが、期待された細孔充填構造は今のところ得られていない。昇華実験系の設計と作製は完成していることから、今後は、昇華原料の温度と基板(APAM)温度を制御することによって、細孔内への選択充填の実証を目指す。また、研究の途上発見した単結晶光触媒についてはドーピング効果を検証することで光活性化と可視光機能性を付与を達成することを目指す。p型化合物半導体の水素発生光電極への利用については、その一般的な課題として電極の安定性の解決が求められることから、そのための表面修飾手法の検討を進める。
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