研究課題/領域番号 |
21K19035
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研究種目 |
挑戦的研究(萌芽)
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
中区分36:無機材料化学、エネルギー関連化学およびその関連分野
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研究機関 | 国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構 |
研究代表者 |
石井 賢司 国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構, 量子ビーム科学部門, 研究統括 (40343933)
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研究期間 (年度) |
2021-07-09 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
6,500千円 (直接経費: 5,000千円、間接経費: 1,500千円)
2022年度: 1,950千円 (直接経費: 1,500千円、間接経費: 450千円)
2021年度: 4,550千円 (直接経費: 3,500千円、間接経費: 1,050千円)
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キーワード | X線吸収分光 / X線発光分光 / 放射光X線分光 / X線分光 / 量子ビーム |
研究開始時の研究の概要 |
本研究では、化学結合した隣接元素を選択して電子状態を観測することができる、新しい原理に基づく放射光硬X線分光法の開発を目指す。具体的には、金属酸化物において酸素1s/2s軌道にある電子が隣接金属の1s軌道のホールを埋める際の交差遷移による発光を分光することで酸素吸収端の吸収スペクトルと同等の情報を硬X線で取得し、さらに、それが酸素の価数変化に対しどこまで敏感かを定量的に明らかにする。
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研究実績の概要 |
本研究は、硬X線の持つ高透過能の特長を残し、かつ、化学結合した隣接元素を選択して電子状態を観測することができる、新しい原理に基づく放射光硬X線分光法の開発を目的とする。遷移金属酸化物を測定対象とし、硬X線領域にある遷移金属K吸収端近くのX線を入射し、遷移金属1s軌道にある電子を非占有反結合性軌道へ遷移させる。そのような中間状態から、酸素1s(2s)電子が遷移金属1s軌道の内殻正孔を埋める原子をまたいだ遷移(交差遷移)で発光される硬X線を検出する。選択則は異なるが、終状態で電子とホールが同じ軌道を占有するという意味で酸素吸収端の軟X線・真空紫外線吸収と同等のスペクトルが得られる。この過程が観測できることが実証されれば、酸素が複数の金属と結合いている場合でも、金属の吸収端を選ぶことで、観測したい酸素が結合した隣接元素の区別が可能となる。 開発を目指す分光法は、非弾性散乱散乱で浅い内殻電子の励起を観測することでその内殻に正孔を残す吸収と同等のスペクトルを得るX線ラマン散乱を金属元素の吸収端で行うものである。従って、非共鳴条件でのX線ラマン散乱の測定と比較しつつ開発を進めることとなる。2022年度にニッケル酸化物を用いた原理検証実験を行ったが、高いバックグラウンドが問題となり、現時点では目的とする交差遷移による発光の観測には至っていない。今後は、可能な限りバックグラウンドを下げる努力を行い、目的とするシグナルの検出を試みる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
現在までにニッケル酸化物(NiO)を用いた原理検証実験をSPring-8のBL11XUで試みるところまで進捗している。しかしながら、Niの吸収端に入射X線のエネルギーを合わせ、酸素K吸収端(~530 eV)分だけ低いエネルギーの近くをスキャンしたが、バックグラウンドが非常に高く、酸素1s軌道からの交差遷移による強度は見出せなかった。一方、NiのK吸収端より十分低いエネルギーを入射した非共鳴条件ではバックグラウンドが下がり、入射X線のエネルギーよりも酸素K吸収端分だけ低いエネルギーのところにX線ラマン散乱によるピークが観測された。また、Niの吸収端の入射X線を使用して行ったサファイア(Al2O3)を測定したところ、酸素K吸収端に相当するX線ラマンが観測された。従って、目的達成に向けての現時点での課題は、吸収端近傍で高くなるバックグラウンドにいかに対応するかということになる。
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今後の研究の推進方策 |
バックグラウンドを下げS/N比をあげることが課題となることが明確になった。認められた延長期間の一年で、考え得る限りのバックグラウンドを下げる努力、ヘリウムパスの改良やより反射率の高いアナライザーの作成などを行い、再度、ニッケル酸化物での原理検証実験に挑戦する。
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