研究課題
挑戦的研究(萌芽)
本研究は、高次遺伝子発現システムの基盤となる核膜孔複合体(Nuclear Pore Complex; NPC)の作動原理の解明にむけて、NPCが確立する液-液相分離(Liquid-Liquid Phase Separation; LLPS)の状態・機能相関を明らかにする。LLPSとは2つの液体が混ざり合わずに、互いに排除しあうことにより2相に分離する現象のことである。細胞核の働きについて新しい概念を創出し、広範な生命機能現象と多くの疾病症メカニズムに対する根本的な理解を目指すものである。このように、本研究課題は、新規NPC-LLPS研究領域の展開に挑戦するものである。
本研究では、HS-AFMを使用し、核膜孔複合体(NPC)の内部構造バイオフィラメントのLLPSナノ動態を追跡することに成功しました。大腸がん細胞では、正常細胞と異なり、単一バイオフィラメントの厚みが不均一になり、バイオフィラメントの回転や動きが活発化し、がん細胞に特有のプラグ構造を積極的に形成することを発見しました。また、遺伝子干渉実験により、大腸がん細胞で過剰発現する特定のFG-NUPがバイオフィラメントの動態変化に影響していることを明らかにしました。これにより、NPC内部のLLPS環境の形成から消失までのバイオフィラメントの時空間的な振る舞いを初めて可視化することに成功しました。
この研究は、数十年にわたって信じられてきた逆の結果を示し、NPC内のバイオフィラメントを追跡・操作することが可能になりました。この結果、がん細胞固有のバイオフィラメントの異常な動態と機能の相関を明らかにしました。これらの知見は、細胞内で様々な分子反応が起こるLLPS環境の物理的特性解析におけるHS-AFMの有用性を示すだけでなく、分子レベルでの核膜ダイナミクスの理解と制御に基づく新たながんの診断と治療法の開発に期待が持てます。
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すべて 雑誌論文 (13件) (うち査読あり 13件、 オープンアクセス 13件) 学会発表 (31件) (うち国際学会 1件、 招待講演 7件) 備考 (5件) 産業財産権 (2件)
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