研究課題/領域番号 |
21K19074
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研究種目 |
挑戦的研究(萌芽)
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
中区分38:農芸化学およびその関連分野
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
田畑 亮 名古屋大学, 生命農学研究科, 特任講師 (30712294)
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研究期間 (年度) |
2021-07-09 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2021年度)
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配分額 *注記 |
6,500千円 (直接経費: 5,000千円、間接経費: 1,500千円)
2023年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2022年度: 2,470千円 (直接経費: 1,900千円、間接経費: 570千円)
2021年度: 2,600千円 (直接経費: 2,000千円、間接経費: 600千円)
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キーワード | 植物 / ペプチド / 器官間シグナル / 環境ストレス応答 / 短鎖翻訳後修飾型ペプチド / 分泌型ペプチド |
研究開始時の研究の概要 |
脳や神経系に相当する器官を持たない植物は、維管束を介して「根と葉」の間の器官間コミュニケーションの仕組みを発達させ、個体を統御するシステムを進化させてきた。近年、植物はペプチド分子による器官間シグナル伝達機構を介して個体のホメオスタシスを維持している事が明らかになってきたが、植物のゲノムには約1000 個の分泌型ペプチド遺伝子が存在しており、機能解明された因子は限られている。そこで本研究では、環境ストレスに応答した器官間シグナル伝達機構を支える器官間移動性のペプチド分子に着目して、化学的・ゲノム科学の研究アプローチによってストレス応答に必須の新規ペプチドシグナリングを探索する。
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研究実績の概要 |
近年植物は、低分子化合物(オーキシンやサイトカイニン等)のみならず、ペプチド分子による器官間シグナル伝達機構を介して個体のホメオスタシスを維持している事が明らかになってきた。しかしながら、ゲノム情報より、植物は約1000 個の分泌型ペプチド遺伝子を保持している事が予想されているが、機能解明された因子は全体のわずか数%にも満たない。植物が持つ機能未知の分泌型ペプチドの中には、環境ストレス応答における器官間シグナル伝達に必須の因子が、さらに多数存在しているのではないかと期待されている。そこで本研究では、環境ストレスに応答した器官間シグナル伝達機構と、それを支える器官間移動性のペプチド分子に着目して、化学的・ゲノム科学の研究アプローチによって、ストレス応答に必須の新規ペプチド分子探索に挑戦する。 これまで、トマトより採集した維管束液からタンパク質抽出を行い、nano LC-MS によるペプチドミクス解析を行うことで、複数のトマト硫酸化ペプチドを同定した。また、シロイヌナズナを用いたDNA修復因子の変異体背景でCRISPR/Cas9のゲノム編集技術を用いる手法(Tandem cluster破壊法)によって、ゲノムに大きな欠失を引き起こすことで、鉄欠乏によって誘導されるCysteine-rich peptideを見出した。このCRP tandem破壊株は、野生型と比較して生育が阻害されてたため、発生や環境ストレス応答などのペプチドシグナリングに重要な役割を持っていることが推測された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
これまで、トマトより採集した維管束液からタンパク質抽出を行い、nano LC-MS によるペプチドミクス解析を行うことで、複数のトマト硫酸化ペプチドを同定した。また、シロイヌナズナを用いたDNA修復因子の変異体背景でCRISPR/Cas9のゲノム編集技術を用いる手法(Tandem cluster破壊法)によって、ゲノムに大きな欠失を引き起こすことで、鉄欠乏によって誘導されるCysteine-rich peptide(CRP)を見出した。このCRP tandem破壊株は、野生型と比較して生育が阻害されてたため、発生や環境ストレス応答などのペプチドシグナリングに重要な役割を持っていることが推測される。このように、複数のペプチドを見出しており、研究は順調に進んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
引き続き、維管束液を用いたペプチドミクス解析や、ペプチド候補因子の多重破壊株作成によって、植物の環境ストレス応答に必須のペプチドの探索を行う。今年度同定したペプチド分子を含め、新たなペプチド分子が同定された際には、その成熟型構造を元に、ペプチドを化学合成していく。合成ペプチド処理実験を、Split-root培養条件下で実施することで、ペプチド処理した器官のみならず、他方の器官において、ストレス耐性が付与されるか検証して、器官間シグナルへの寄与を明らかにする。また、Micro-Graftingデバイスによる接ぎ木実験によって候補ペプチド因子の器官間移動性を検証する。これらの解析から、植物ペプチドシグナリングの発見を目指す。
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