研究課題/領域番号 |
21K19078
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研究種目 |
挑戦的研究(萌芽)
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
中区分38:農芸化学およびその関連分野
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研究機関 | 近畿大学 |
研究代表者 |
増田 誠司 近畿大学, 農学部, 教授 (20260614)
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研究分担者 |
後藤 剛 京都大学, 農学研究科, 准教授 (10550311)
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研究期間 (年度) |
2021-07-09 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
6,500千円 (直接経費: 5,000千円、間接経費: 1,500千円)
2023年度: 1,950千円 (直接経費: 1,500千円、間接経費: 450千円)
2022年度: 2,600千円 (直接経費: 2,000千円、間接経費: 600千円)
2021年度: 1,950千円 (直接経費: 1,500千円、間接経費: 450千円)
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キーワード | mRNAスプライシング / 構造活性相関 / 食品化合物 / RNAスプライシング |
研究開始時の研究の概要 |
超高齢社会を迎えた日本では食品成分に高い機能性を求める社会状況が定着しており、これまでにない機能性を持つ食品が期待されている。ただ食品成分からの機能性の研究は、時間のかかる古典的な手法が今でも主流であり、迅速な解析手法の開発が望まれている。本研究は、食品中の活性化合物をリード化合物として構造活性相関を用いて活性化合物を迅速に探索する試みである。このような試みは食品分野では広がっておらず、本研究は食品分野に新たな概念を導入することが期待される。
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研究実績の概要 |
食品の機能性に関する研究は年々盛んになっており、特定保健用食品(トクホ)や機能性表示食品が登場している。このように超高齢社会を迎えた日本では食品成分に高い機能性を求める社会状況が定着しており、今後これまでにない機能性を持つ食品が期待されている。ただ食品成分からの機能性の研究は、時間のかかる古典的な手法が今でも主流であり、迅速な解析手法の開発が望まれている。本研究は、食品中の活性化合物をリード化合物として活性化合物を迅速に探索する試みである。そのために幅広い強さの活性化合物について構造と活性に関する情報ライブラリを整備する。その情報に基づき候補化合物を推定する。最後に候補化合物の機能性を評価するリバーススクリーニング手法を用いて探索を効率化する。食品分野において、構造活性相関を用いて効果的な活性化合物を系統的に類縁体から探索する試みは広がっておらず、本研究は食品分野に新たな概念を導入することが期待できる。 これまでに見出した活性化合物から共通構造としてカテコール構造に着目した。カテコール構造をもつ複数の化合物が弱いながらも活性を持つことは、この構造を持つ化合物を含む食品にはmRNA代謝を変化させる可能性が浮かび上がった。またその中でスプライシングにどのような影響があるかについて観察したところ、さまざまな選択的スプライシングが影響を受けていた。さらにカテコール構造を持つ化合物に共通して影響を受けるmRNA種を同定した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
近年、抗ガン剤の創薬ターゲットとしてmRNAのスプライシング過程が注目されている。ガン細胞の一部ではスプライシング因子に変異がみられ、スプライシング阻害剤に対して高い感受性を示す。このため抗ガン剤の創薬ターゲットとしてmRNAのスプライシング過程が注目されている。これまでのスクリーニングは強い阻害活性を持つ化合物に特化したもので、食品成分に多い低程度から中程度の活性については見過ごされてきている。そこで、スクリーニング系としてmRNAスプライシングを取り上げ、幅広い強度のスプライシング阻害活性を検出できる評価系を構築した。食品抽出物より活性化合物を探索し、いくつかの化合物を発見した。ついでこれら化合物の共通構造を解析し、カテコール構造に着目した。そこでカテコール構造を持ついくつかの類縁体で解析すると、比較的弱いながらもいずれの化合物も活性が存在していた。この結果から既知の食品成分由来活性化合物をリード化合物とし、活性発現に必要な構造を推定し、実際の活性評価とを繰り返す手法の有効性を示すことができた。 加えて、これらの化合物がどのようにmRNA代謝を変化させているかについて次世代シーケンス解析を行った。その結果、カテコール構造を持ついくつかの化合物に共通して変化するmRNA種が存在することを示した。しかし共通して変化する部分に存在するmRNA種の割合は当初期待していたほど高くなく、活性の弱さが原因である可能性が考えられた。
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今後の研究の推進方策 |
カテコール構造を持ついくつかの化合物に共通して変化するmRNA種が存在することを示したものの、共通して変化する部分に存在するmRNA種の割合は当初期待していたほど高くなかった。これは化合物の活性の弱さが原因である可能性が考えられたため、判定の閾値を低く設定して再解析を行う。これにより共通部分に存在するmRNA種の割合が増加する場合は、活性の弱さが原因である可能性が強く示唆されることになる。一方であまり変わらない場合には、共通構造以外にもmRNAスプライシングに影響を及ぼしている構造の存在が示唆される。 次に共通構造をもつ化合物について、さらに検索する範囲を食品成分だけでなく一般の化合物にも広げる。候補化合物は東大、阪大、北大、理研等の化合物ライブラリ拠点より供与を受けられる場合には供与を受ける。ない場合には市販品を購入する。それぞれの化合物について活性を評価し、構造と活性の相関関係をさらに検証する。加えて、阻害を受けるイントロンの特徴について、長さ・GC含量・スプライシング配列などにわけて詳細に解析する。これらについて化合物間で比較し、構造の類似性と活性の相関についてさらに評価を進めていく。
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