研究課題/領域番号 |
21K19079
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研究種目 |
挑戦的研究(萌芽)
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
中区分38:農芸化学およびその関連分野
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
井上 善晴 京都大学, 農学研究科, 教授 (70203263)
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研究期間 (年度) |
2021-07-09 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
6,500千円 (直接経費: 5,000千円、間接経費: 1,500千円)
2022年度: 2,080千円 (直接経費: 1,600千円、間接経費: 480千円)
2021年度: 4,420千円 (直接経費: 3,400千円、間接経費: 1,020千円)
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キーワード | 酵母 / 核分裂 / 核形態 / Cdc28 / DNA損傷チェックポイント / メチルグリオキサール |
研究開始時の研究の概要 |
生物の形と機能は相関する。つまり、「形」には生物学的な合目的性(必然性)が必ず存在する。細胞にも「形」があり、さらに細胞の中にあるオルガネラも特有の形状をしている。オルガネラの中でも、「核」には遺伝物質であるDNAが格納されていることから、極めて重要なオルガネラである。その核の形は、ほぼ球形で一定である。形と機能が相関することを考え合わせると、『核は球形でなくてはいけない生物学的な必然性が存在するはず』である。本研究では、ある一定の条件下で核形態の変化が起こることを発見したので、それに関わる因子の探索と、核形態が変化することによって発せられるシグナルとその生理機能を探索することを目的とする。
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研究実績の概要 |
本研究では、解糖系の過程で生じる代謝物メチルグリオキサール(MG)により酵母の核形態がジェリービーンズのように変形するメカニズムと、核分裂阻害に関わるメカニズムを明らかにすることを目的とする。 これまでの解析から、MG処理により液胞が肥大化し、核形態がジェリービーンズ型に変化するとともに核分配が阻害されることを見出している。また、液胞の融合ができないvps41やvam3欠損株ではMG処理による液胞の融合・肥大化が起こらず、ジェリービーンズ型の核形態を示さず、さらに核分裂阻害も起こらなかった。MGはDNAのグアニン残基と結合してadductを形成することが知られている。そこで、DNAダメージがシグナルとなって液胞の肥大化が起こるのかどうかを検討するため、DNAのアルキル化剤であるメタンスフホン酸メチル(MMS)で処理した際の変化を検討した。その結果、MMS処理では液胞の肥大化は起こらなかった。 MG処理で核分配が阻害されることから、G2/M期で細胞周期のアレストが起こると考えられる。そこで、Cdc28のTyr19のリン酸化を検討したところ、MG処理でもMMS処理でもCdc28-Tyr19のリン酸化が起こった。また、そのリン酸化はvps41やvam3欠損株でも同様に観察された。一方、DNA損傷チェックポイントのセンサータンパク質であるMec1の欠損株におけるCdc28-Tyr19のリン酸化を検討した。その結果、MMS処理ではCdc28のTyr19のリン酸化は見られなかったのに対し、MG処理では依然としてリン酸化が観察された。このことから、MGによる液胞の肥大化とCdc28-Tyr19のリン酸化は独立して起こっており、後者はMec1に依存していないと考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
昨年度の研究から、MGによる核形態の変化と核分裂阻害との関連性において、液胞の肥大化とPtdIns(3,5)P2レベルの上昇の2つが必要な条件であることを明らかにすることができた。今年度は、DNA損傷と細胞周期の観点から検討を行い、MGはDNA損傷チェックポイントのセンサータンパク質であるMec1非依存的にCdc28-Tyr19のリン酸化を引き起こすこと、また液胞の肥大化の有無はCdc28-Tyr19のリン酸化に関与しないことを明らかにできた。一方、DNA損傷を引き起こすMMSは液胞の肥大化は引き起こさなかったが、Mec1依存的にCdc28-Tyr19のリン酸化を引き起こした。これらのことから、MGとDNA損傷チェックポイントの活性化の有無が核形態の異常や核分配阻害と関連するかどうかが問題であるが、その解明には至らなかった。
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今後の研究の推進方策 |
MGによる核形態の異常や核分配阻害がDNA損傷チェックポイントに依存しているかどうかをATMやATRに着目して、Rad53やChk1のリン酸化などの検を指標に検討を行う。また、紡錘体形成チェックポイントに及ぼす影響について、Mad2の欠損株を用いた解析を進める。
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