研究課題/領域番号 |
21K19091
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研究種目 |
挑戦的研究(萌芽)
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
中区分38:農芸化学およびその関連分野
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研究機関 | 宮崎大学 |
研究代表者 |
黒木 勝久 宮崎大学, 農学部, 准教授 (20647036)
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研究分担者 |
榊原 陽一 宮崎大学, 農学部, 教授 (90295197)
永濱 清子 宮崎大学, 農学部, 特任助教 (10510456)
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研究期間 (年度) |
2021-07-09 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
6,500千円 (直接経費: 5,000千円、間接経費: 1,500千円)
2023年度: 1,950千円 (直接経費: 1,500千円、間接経費: 450千円)
2022年度: 2,600千円 (直接経費: 2,000千円、間接経費: 600千円)
2021年度: 1,950千円 (直接経費: 1,500千円、間接経費: 450千円)
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キーワード | チロシン硫酸化 / 大腸菌 / ブレビバチルス / LC-MS |
研究開始時の研究の概要 |
本研究はチロシン硫酸化の定量解析を目指した硫酸化ペプチドの新たな合成法確立を目指す。硫酸化ペプチドを定量できる有効な手法がないため、チロシン硫酸化ペプチドの生理機能は不明である。定量質量分析技術は硫酸化ペプチドの理想的な定量技術となり得るが、内部標準となる硫酸化ペプチドの合成法が確立されていないため、実現できていない。本研究では、簡便・高効率・低コストを実現する硫酸化ペプチド分泌微生物による合成法の開発を試みる。本研究で確立する硫酸化ペプチド合成法は、定量・定性分析、ウイルス感染阻害剤、生理活性ペプチドとしての医薬品開発など、多岐に応用できる革新的な技術となる。
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研究実績の概要 |
翻訳後修飾の一つチロシン硫酸化の機能解析手段として重要な硫酸化ペプチドの新たな合成法の確立を目指し、本年度はブレビバチルスおよび大腸菌を用いたTPSTと基質の同時発現系の作成および硫酸化ペプチドのLC-MSを用いた条件検討を行った。当初の計画通り、ブレビバチルス菌体内での硫酸化ペプチド合成を目指し、ブレビバチルス菌体内発現用プラスミド(pNI/pNI-His)を用いた酵素の発現と精製に成功したが、酵素活性を得ることが出来なかった。次に、分泌発現用ベクターであるpNCMO2やpNY326でも発現させたが、活性型を得ることが出来なかった。そのため、次に活性型の酵素を得られる大腸菌(Origami)内での共発現系(pETDuet)の作製を行った。現在、基質ペプチドと酵素の発現解析を行っている。次に、硫酸化ペプチドの質量分析を用いた分析条件の検討をコレシストケニン硫酸体(CCK-S)を用いて行った。その結果、LC-MS(QTrap5500)を用いた検出に成功した。さらに、将来的なMRM法を用いた定量解析に求められる最適なtransitionを選択するために必要な溶媒と検出モードの最適化に成功した。そこで、昨年度に硫酸化を見出した新型コロナの受容体ACEIIのペプチドを大腸菌で発現精製し、酵素的に硫酸化反応を行い、ペプチドの脱塩処理を行ったのちに、最適化した条件下で、LC-MSにより分析を行い、検出に成功することが出来た。MRM法を用いた定量解析法の条件を見出すことが出来たことから、今後の翻訳後修飾の硫酸化の定量解析につながる萌芽的な結果が得られたと考えている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
ブレビバチルスを用いた硫酸化ペプチド合成法確立の準備として、GSTタグ付き基質ペプチド(C4およびPSGL1)がブレビバチルスでも用いるリコンビナントTPST酵素によって硫酸化を受けることと、硫酸化ペプチドが陰イオン交換型の固相抽出で非硫酸体と単離することが技術的に可能であることを確認できたため、今後の研究遂行を円滑に行える下準備が出来た。また、ブレビバチルス菌体内での硫酸化ペプチド合成に必要な基質ペプチド発現プラスミド(pNC-HisT)にC4やPSGL1、CCR5など、計7種類の基質発現プラスミドの作製に成功し、発現精製ができる事を確認している。さらに、pNC-HisTでは形質転換体が得られなかったペプチドがあったため、低発現系のpNY326にて作製した。次に、TPST酵素の遺伝子を組込んだ発現系を2種類構築し、発現・精製に成功したが、酵素の活性が確認できなかった。そこで、分泌発現系を追加で作成し、発現に成功したが、はやり酵素活性の確認ができなかった。そこで、ブレビバチルスでの共発現系作成の計画を一旦、変更し、活性型の酵素が得られる大腸菌体内での共発現系の構築を行った。現在は、共発現の確認を行っている。一方、硫酸化ペプチドのLC-MSを用いた定量発現に向けた実験では、最適な条件を見つけることが出来た。以上のことを踏まえ、ブレビバチルスでの活性型酵素の発現が成功しておらず、手法の変更が求められるため、進捗状況・達成度はやや遅れていると評価した。
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今後の研究の推進方策 |
ブレビバチルスをホストに用いて発現させたTPST酵素の活性が確認できなかったことから、発現誘導の条件(時間や温度)や分子シャペロンを活用した活性型酵素の産生を検討する。同時に、活性型の酵素を産生することが出来る大腸菌を用いた硫酸化ペプチドの調製法を検討すべく、共発現系のベクターであるpETDuetの作成を進めると共に、その共発現の条件をする。さらに、試験管での硫酸化ペプチド合成の検討も行う。LC-MSを用いた定量質量分析技術であるMRMでの特異的な定量解析に必要な諸条件(カラム・流速・移動相・イオン化・トランジッション)をモデル硫酸化ペプチドであるCCK硫酸体で決めることが出来たことから、その他の硫酸化ペプチドを試験管での酵素反応で調整し、その応用性を確認する。また、細胞タンパク溶液から、硫酸化ペプチドの分析なども試みる予定である。大量合成に成功した硫酸化ペプチドから、順に機能解析を進めていく。受容体との相互作用解析や細胞機能への作用などを解析する。さらに、新たに硫酸化を見出すことが出来た新型コロナの受容体であるACEIIの硫酸化チロシン残基の特定や細胞レベルでの硫酸化なども検討し、ACEIIの硫酸化ペプチドをブレビバチルス発現系で作成し、ウイルス感染阻害薬としての可能性なども新たに検討する予定である。
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