研究課題/領域番号 |
21K19108
|
研究種目 |
挑戦的研究(萌芽)
|
配分区分 | 基金 |
審査区分 |
中区分39:生産環境農学およびその関連分野
|
研究機関 | 東京農工大学 |
研究代表者 |
横山 岳 東京農工大学, (連合)農学研究科(研究院), 教授 (20210635)
|
研究分担者 |
末次 健司 神戸大学, 理学研究科, 教授 (70748839)
伊藤 克彦 東京農工大学, (連合)農学研究科(研究院), 准教授 (80725812)
|
研究期間 (年度) |
2021-07-09 – 2024-03-31
|
研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
|
配分額 *注記 |
5,850千円 (直接経費: 4,500千円、間接経費: 1,350千円)
2023年度: 2,080千円 (直接経費: 1,600千円、間接経費: 480千円)
2022年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
2021年度: 2,080千円 (直接経費: 1,600千円、間接経費: 480千円)
|
キーワード | カイコガ科 / 未受精卵 / 単為発生 / ヤママユガ科 / 単為生殖 / 卵巣卵 / カイコガ / 染色体構成 / 昆虫の生息域拡大 / 鳥による捕食 / カイコ / ナナフシモドキ |
研究開始時の研究の概要 |
本研究課題では、カイコとナナフシモドキを中心に、鳥に捕食・排泄された卵の発生率やその卵から発生した個体の遺伝形質から、どのようなメカニズムで次世代が生じたのかを解析する。さらに野外での鳥の移動距離情報や昆虫の系統地理情報から、鳥類の捕食を介した次世代の誘導とそれに伴う分布拡大が自然界でどの程度起こっているのかを推定する。本研究は、昆虫の新たな生存戦略を提示するとともに、分散能力の低い昆虫では鳥類の捕食こそが、分布拡大や異なる個体群間での遺伝子交流を促進する要因となるという新しい視点を提供するものである。
|
研究実績の概要 |
本研究の目的は、未受精卵を体内に持つ昆虫が鳥に捕食され、排泄された未消化の卵の単為発生率やその単為発生卵から孵化した個体の遺伝形質から、どのようなメカニズムで次世代が生じたのかを解析することである。 鳥類に昆虫の未受精卵が食下された場合、鳥の体温および消化液の酸により未授精卵の単為発生が誘発されると考えられ、ヤママユガ科、カイコガ科の卵巣卵(未受精卵)に高温(温湯)処理を施すことによって誘発される単為発生個体について、その発生機構について検討を行った。 カイコガ科のカイコガ(Bombyx mori)の未受精卵に温湯処理(46℃、18分)を施すと80%以上の単為発生が誘発された。同じカイコガ科のクワコ(Bombyx mandarina)では、30%の卵で漿液膜細胞の形成が確認され、単為発生したことが確認された。一方、ヤママユガ科のエリサン、サクサン、テンサンの未受精卵に温湯処理を施し、卵を解剖したが、若干の卵黄細胞が形成された卵があったものの、ほぼすべての卵で胚子が形成されておらず、単為発生が誘発されなかった。鳥体内でヤママユガ科の卵巣卵は単為発生する可能性が低いが、カイコガ科のクワコの卵巣卵は単為発生する可能性が高いことが示唆された。 ヒヨドリにクワコ、エリサン、サクサン、テンサン、クスサンの卵巣卵を摂食させ、糞中から未消化の卵巣卵を回収した。その結果、どの区も90%以上の卵が回収された。回収されたエリサンとサクサンの卵を解剖したが、温湯処理と同様に若干の卵黄細胞が生じていた卵があったものの胚子は全く形成されていなかった。一方、クワコの卵巣卵の80%以上が単為発生していた。クワコの雌蛾が鳥類に摂食された場合、未消化で排泄された卵巣卵の多くが単為発生している可能性が示された。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の目的は、未受精卵を体内に持つ昆虫が鳥に捕食され、排泄された未消化の卵の単為発生率やその単為発生卵から孵化した個体の遺伝形質から、どのようなメカニズムで次世代が生じたのかを解析することである。 鳥類が昆虫を捕食した場合、ヤママユガ科、カイコガ科の蛾の体内の未受精卵が消化されずに排泄されることが明らかになった。特にカイコガ科クワコでは未消化の卵巣卵の80%以上が単為発生しており、野外でも単為生殖している可能性が示唆された。
|
今後の研究の推進方策 |
昨年度、鳥に摂食させ、糞中より回収したクワコ卵、テンサン卵を低温による休眠打破処理を行っている。2023年度に孵化させ、次代の形質・性状を調査する予定である。特にクワコでは80%以上の卵が単為発生しており、遺伝的解析も期待できる。
|