研究課題/領域番号 |
21K19116
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研究種目 |
挑戦的研究(萌芽)
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
中区分39:生産環境農学およびその関連分野
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研究機関 | 岡山大学 |
研究代表者 |
宮竹 貴久 岡山大学, 環境生命自然科学学域, 教授 (80332790)
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研究分担者 |
安井 行雄 香川大学, 農学部, 准教授 (30325328)
日室 千尋 琉球大学, 農学部, 協力研究員 (60726016)
矢嶋 俊介 東京農業大学, 生命科学部, 教授 (90301548)
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研究期間 (年度) |
2021-07-09 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
完了 (2023年度)
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配分額 *注記 |
6,240千円 (直接経費: 4,800千円、間接経費: 1,440千円)
2023年度: 2,080千円 (直接経費: 1,600千円、間接経費: 480千円)
2022年度: 2,210千円 (直接経費: 1,700千円、間接経費: 510千円)
2021年度: 1,950千円 (直接経費: 1,500千円、間接経費: 450千円)
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キーワード | 抵抗性メス / 不妊虫放飼法 / 外来生物 / 抵抗性 / 乱婚性 / モデル検証 / コクヌストモドキ / アリモドキゾウムシ / 対抗進化 |
研究開始時の研究の概要 |
近年の外来侵入種の現状を考えると、環境に優しい害虫根絶法の開発とその問題点の解明は必須である。農薬に抵抗性があるように、不妊オスを野外に放飼して害虫個体群を根絶させる手法(以後、不妊化法と呼ぶ)にも抵抗性が生じる可能性が指摘されている。しかし、そのメカニズムの解明は世界のだれも行ってこなかった。本研究課題では、累代飼育が容易でゲノムもすべて解読されているモデル甲虫であるコクヌストモドキを材料として、不妊オスにさらされた害虫のメスでは、①不妊オスを識別する抵抗性メスが進化する可能性と、②不妊オスを識別しないかわりに乱婚性の多オス交尾メスが出現する可能性を検証する。
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研究実績の概要 |
モデルとしてコクヌストモドキを用いて不妊オス5匹と正常オス5匹を正常メス10匹に選ばせて、それらのメスから子を取って世代を重ねた実験区と、正常オス10匹と正常メス10匹を継代で交尾させた対象区を作成した。①実験区と対象区のメスが不妊オスとの交尾を避けるか行動実験アッセイを行ったところ、不妊オスを避けるメスの出現は見られなかった。②実験区と対象区のメスでは、交尾回数に有意な違いが見られ、実験区のメスは対象区のメスに比べて、多数回交尾が進化していることが示された。③さらに予備的な実験で、実験区のメスでは不妊オスの精子を避ける性質が進化していることも推察された。次の課題として実験区のメスは対象区のメスに比べて多雄交尾が進化しているのかについて確かめる必要性のあることがわかった。これらの事実は、不妊化法による害虫の根絶を目指す際に、継続的な不妊オス放飼によって野外のメスに進化的変化の生じる可能性が示唆されたことになる。そこで実際に野外で不妊化法が実施されている喜界島のアリモドキゾウムシと、不妊化法が実施されていない那覇のアリモドキゾウムシを採集して、メスが不妊オスと野生オスの識別を行っているか観察したところ、観察の範囲内では不妊オスを選別するメスの進化が生じていないことがわかった。具体的には喜界島で不妊オスの精子をCFCで見分けている確たる証拠はなく、むしろ喜界島系統は産卵するメスの割合が与那国島個体群よりもそもそも低いという新たな興味深い結果が得られた。さらに根絶事業におけるアリモドキゾウムシにおいて、不妊虫の効果は、産卵する雌の割合に影響することも明らかとなった。喜界島個体群は不妊虫の精子を受け取らない可能性があり、その理由はよくわからないが、解明すべき新しい課題が見つかった。
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