研究課題/領域番号 |
21K19120
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研究種目 |
挑戦的研究(萌芽)
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
中区分39:生産環境農学およびその関連分野
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
東江 栄 九州大学, 農学研究院, 教授 (50304879)
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研究期間 (年度) |
2021-07-09 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2023年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2022年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2021年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
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キーワード | CAM / 概日リズム / ゲノム編集 / 光合成 / C3 / シスエレメント / DMS-seq / アイスプラント / 遺伝子組み換え / CAM型光合成 / C3型光合成 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は,作物の光合成をCAM(Crassulacean Acid Metabolism)型に改変して,耐乾性及び耐塩性を持たせることを目的とする。CAMはサボテンなどが行う光合成の一様式で,夜に気孔を開き昼は気孔が閉じる。そのため,耐乾性及び耐塩性が他の光合成型の植物より著しく高い。作物(C3植物)にCAMを駆動させるために,C3植物にCAM関連遺伝子を導入する従来法に加え,C3植物が本来持っているCAM遺伝子の発現調節部位を編集して,発現する時間を変化させる。これまでのCAM遺伝子の転写調節機構に関する知見を用い,最新のゲノム機能解析やゲノム編集技術をあわせ,炭酸固定機能の改変を試みる。
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研究実績の概要 |
本研究は,C3植物の光合成をCAM(ベンケイソウ型有機酸代謝)型に改変して耐乾性及び耐塩性を持たせるために,C3植物がもつCAM関連遺伝子のシスエレメントを特定し,ゲノム編集技術を用いて関連遺伝子を時計遺伝子の制御下におき,光合成の鍵酵素が,他の光合成型とは逆に夜に発現させることを最終目標とする。ゲノム編集によって改変する部位を特定するために、C3植物はシロイヌナズナとイネ、CAM植物としてアイスプラントを用い、それぞれのCAM関連遺伝子PEPCキナーゼの転写開始点上流約2000 bpを対象に、DMS-PCR法とPlantDHSによってシス因子を推定し、転写調節因子の結合コンセンサス配列データベースJASPARの情報を基にトランス因子を推定した。シロイヌナズナでは,DMS法により、転写開始点上流-761 bp~-1002 bpに発現調節部位があり、この領域には光誘導に関するシス因子SORLIPやG-boxが多数存在することが明らかになった。 さらに,欠失プロモーターとGUS融合遺伝子を用いた一過的発現解析により, 発現制御部位の存在を追認した。イネでは、DMS法により,イネPEPCキナーゼ遺伝子(OsPPCK3)の転写調節因子結合部位の範囲を絞り込み,TCPファミリーがOsPPCK3 の転写因子として有力であることを明らかにした。アイスプラントでは、RNA-seqの結果から,PEPCキナーゼの発現に関与している転写因子がCOL1である可能性が高いこと,近縁種4種とのモチーフ解析からGATA,MYB、ATHOOK, NF-YA等の転写因子ファミリーが関与する可能性を明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度はシロイヌナズナについては新たにピルビン酸・リン酸ジキナーゼ(AtPPDK)も対象とし,-1190 bp~-1376 bpプロモーター領域にAGL42,NAC025,MYB92の結合配列が本遺伝子の発現制御シス因子であることを明らかにした。また,PEPCキナーゼについては,AtPPCKの欠失プロモーターとGUS遺伝子を連結させた融合遺伝子を作成し,アグロインフィルトレーションによって一過的発現解析を行った。その結果,転写開始点上流-656 bp~-899 bpの領域が発現制御に関与すること,またこの領域には光誘導性シス因子SORLIP, G-boxが存在することを明らかにした。 イネについては,イネPEPCキナーゼ(OsPPCK3)の転写開始点上流2000 bpからシスエレメント配列の範囲を約20~40 bpの7か所に絞り込んだ。転写調節因子結合配列データベースPlantPan,イネ遺伝子発現データベースRiceXproを用いた発現位相と転写因子をコードする遺伝子の発現位相の比較により,TCPファミリーがOsPPCK3 の転写因子である可能性が高いことを明らかにした。 アイスプラントでは、RNA-seqの結果から、アイスプラントPEPCキナーゼ(Mcppck1)と同様に発現量の変化が大きかった転写因子はCOL1であること,アイスプラント及び近縁種4種のppck1転写開始点上流約250bpに,3つの共通モチーフがあることが明らかになった。このモチーフに結合する転写因子は、GATA,MYB,ATHOOK,NF-YAであった。他種による既報の結果及びCOLがNF-Yと複合体を形成し,CCAAAに結合するという特性を考慮すると,これらの因子がppck1の発現を制御していると考えられた。
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今後の研究の推進方策 |
シロイヌナズナのPEPCキナーゼ(AtPPCK)のプロモーターとGUS遺伝子を連結させた融合遺伝子を作成し,アグロインフィルトレーションによって一過的発現解析を行った。その結果,転写開始点上流-656 bp~-899 bpの領域が発現制御に関与すること,またこの領域には光誘導性シス因子SORLIP, G-boxが存在することを明らかにした。この結果の確証を得るために,プロモーター領域の範囲を絞り込む実験を行う。また,特定した部位がシスエレメントとして機能することを確認するために,核タンパク質を単離し,シスエレメント配列を含むDNAとの結合を確認する。 イネについては,イネPEPCキナーゼ(OsPPCK3)のシスエレメント配列として絞り込んだ7か所について,アグロインフィルトレーションあるいはプロトプラストへの導入による一過的発現解析を行い,シスエレメント配列を特定する。OsPPCK3の発現量を改変したい時間帯に発現量が最大となるカーボニックアンヒドラーゼ(OsβCA)の転写開始点上流1000 bpを単離しゲノム編集によってOsPPCK3のプロモーター領域と置換する。ゲノム編集の一つであるプライム編集を行うためのベクターを構築し,イネに導入する。 アイスプラントでは、PEPC(Mcppc1)及びPECキナーゼ(McPpck1)のシス因子及び候補転写調節因子を推定した。イネ及びシロイヌナズナと同様にアグロインフィルトレーション及びゲルシフト法によるシスエレメント配列の同定及び核タンパク質の結合の確認を行う。また,次世代シーケンサーを用いたDMS-seq法を適用し、網羅的に転写因子結合部位を特定する。また、ゲノムのメチル化を検出するバイサルファイト法を用いて、転写因子の発現制御機構を調査する。シロイヌナズナ,イネ及びアイスプラントについて得られた成果を論文としてまとめ公表する。
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