研究課題/領域番号 |
21K19121
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研究種目 |
挑戦的研究(萌芽)
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
中区分39:生産環境農学およびその関連分野
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
日下部 宜宏 九州大学, 農学研究院, 教授 (30253595)
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研究分担者 |
門 宏明 九州大学, 農学研究院, 准教授 (30616412)
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研究期間 (年度) |
2021-07-09 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
6,500千円 (直接経費: 5,000千円、間接経費: 1,500千円)
2023年度: 1,950千円 (直接経費: 1,500千円、間接経費: 450千円)
2022年度: 1,950千円 (直接経費: 1,500千円、間接経費: 450千円)
2021年度: 2,600千円 (直接経費: 2,000千円、間接経費: 600千円)
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キーワード | 絹糸腺 / カイコ-バキュロウイルス発現系 / ゲノム編集 / 組換えタンパク質生産 / 組換えタンパク質 / 昆虫工場 / カイコ絹糸線 |
研究開始時の研究の概要 |
近年、カイコは医療薬品などの組換えタンパク質発現系として着目されているが、発現量を十分確保できないタンパク質もあり、本発現系の効率上昇が強く望まれている。本研究では、絹糸腺を欠失させた無絹糸腺カイコを作り、絹糸腺のために消費されるエネルギーとアミノ酸を外来タンパク質の生産に転用し、その生産効率を高めることを目指す。無絹糸腺カイコを作る方法としては、1細胞トランスクリプトーム解析を用いて、カイコ胚を構成する個々の細胞の遺伝子発現情報を網羅的に取得し、絹糸腺細胞の分化を制御する最上位の転写因子であるマスター遺伝子を同定する。その後、ゲノム編集による遺伝子の機能破壊を行い、無絹糸腺カイコを作出する。
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研究実績の概要 |
本年度は、無絹糸腺カイコ作製のためのマスター候補遺伝子ノックアウトカイコの内、胚性致死となった遺伝子を除く2遺伝子(KWMTBOMO06272とKWMTBOMO15340:BmSage)について、ノックアウトホモのG1世代を育成した。KWMTBOMO06272ノックアウトカイコについては、T7ヌクレアーゼ解析により変異アレルをホモに持つことを確認した全個体で正常な吐糸が観察されたため、同遺伝子をノックアウトしても無絹糸腺カイコにはならないことが明らかとなった。一方、BmSageについては、G0作製に用いたp50系統をバックグラウンドに持つ個体で、GFPをレポーター遺伝子としてウイルス感受性を調査したが、顕著なタンパク質発現の向上は認められなかった。そこで、タンパク質高生産性系統であるf38系統への導入を試み、T7ヌクレアーゼ解析により変異アレルを持つG0個体をf38と交配し、そのF2を観察したが、無絹糸腺カイコが分離しなかった、この交配を4区繰り返したが、やはり無絹糸腺カイコが分離しなかったため、p50系統においてホモ化し無絹糸腺カイコをf38と交配し、そのF2において分離した無絹糸腺カイコにレポーター遺伝子を発現する組換えウイルスを感染させたが、明瞭なタンパク質高発現は確認されていない。また、当初は、組換えタンパク質生産に絹糸腺や絹タンパク質は不必要であり、これらに消費されるエネルギーやタンパク質の原料となるアミノ酸を外来有組換えタンパク質生産に提供できれば、より効率のよいタンパク質生産が達成できると考えていたが、絹糸腺欠失カイコにおいても顕著な体重等の増加は認められず、外見からホモ個体を判別することはできなかった。また、絹糸腺で高発言しているLong non-coding RNAを対象としたゲノム編集のためのgRNAの設計を行い、in vitroでの切断効率を確認した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
無絹糸腺カイコ作製の作製については、計画を若干前倒しで進め、ゲノム編集による当該遺伝子のノックアウトホモ系統の樹立と無絹糸腺カイコにレポーター遺伝子を発現する組換えウイルスを感染させた場合の効果についても検証を行った。残念ながら、絹糸腺が無いことによる組換えタンパク質発現の向上や、特にサナギの体重増加は認められなかったが、その原因、すなわち、本来絹糸腺の構築と絹タンパク質の合成に用いられるリソースがどこに行ったのか?については、興味深い課題として顕在化した。また、タンパク質高生産性系統であるf38系統との交配実験に思いのほか時間と手間がかかり、異なる系統をバックグラウンドに持つ戻し交配系統の育成についても同様の課題が想定される。 一方、カイコ胚における1細胞トランスクリプトーム解析については、サンプル調整法の検討を継続し、なんとかサンプルを調整できる目処がたった。
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今後の研究の推進方策 |
無絹糸腺カイコ作製の作製については、f38系統との交配を進め、複数種のレポーター遺伝子を用いたカイコ-バキュロウイルス発現系における組換えタンパク質発現への影響を解析する予定である。 一方、BmSageノックアウトホモ個体においては、無絹糸腺カイコとなり、5齢幼虫までは順調に生育するものの蛹化不全に陥る個体が半数以上を占めること、また、本年度の結果より、タンパク質高生産性系統であるf38系統を無絹糸腺化しても発現量の向上や蛹体重の増加に顕著な効果が認められない可能性が高いと考えていることから、絹糸腺を積極的に利用することも考えている。本構想の出発点は、バキュロウイルスが感染しにくい絹糸腺で大量の絹タンパク質が合成されることを回避すれば、そのリソースを脂肪体などのバキュロウイルスが感染しやすい組織に回せるのではないかという点にある。そこで、バキュロウイルス発現系を絹糸腺でも利用するという方向性についても検討する。 1つ目は、絹糸腺におけるウイルス感染を抑制している可能性がある2つのLong non-coding RNAについてゲノム編集カイコを行い、絹糸腺への組換えウイルス感染を解析する。 2つ目は、バキュロウイルスへの変異導入と選抜を繰り返すことにより、絹糸腺に感染しやすいバキュロウイルスを育成する。 また、カイコ胚における1細胞トランスクリプトーム解析についても解析を進める。
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