研究課題/領域番号 |
21K19136
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研究種目 |
挑戦的研究(萌芽)
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
中区分40:森林圏科学、水圏応用科学およびその関連分野
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
伊藤 直樹 東京大学, 大学院農学生命科学研究科(農学部), 教授 (30502736)
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研究分担者 |
長澤 一衛 東北大学, 農学研究科, 助教 (50794236)
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研究期間 (年度) |
2021-07-09 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
6,240千円 (直接経費: 4,800千円、間接経費: 1,440千円)
2023年度: 1,950千円 (直接経費: 1,500千円、間接経費: 450千円)
2022年度: 2,210千円 (直接経費: 1,700千円、間接経費: 510千円)
2021年度: 2,080千円 (直接経費: 1,600千円、間接経費: 480千円)
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キーワード | マガキ / 性決定 / 卵巣肥大症 / オス化 / 養殖 / 餌条件 / 性成熟 / 中間育成 / 種苗生産 |
研究開始時の研究の概要 |
マガキ生産において大きな問題となる卵巣肥大症への対策として、卵巣となる卵巣を有さないオス個体だけを生産することが有効と考えられる。しかし生息環境と遺伝が性決定に影響を与え、さらには成熟期ごとに性転換するなど極めて複雑な生殖機構を有するマガキではオス個体の選択的な生産は達成されていない。本研究では、マガキの生殖腺形成遺伝子を用いた生殖遺伝子型判別を開発し、オス個体が多く得られる交配技術を確立する。またオスの比率が増加する貧栄養条件を取り入れた飼育法を開発する。その上で、両者を組み合わせ、マガキのオス個体選択的生産技術の開発を試みる。
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研究実績の概要 |
昨年度実施した調査では、2022年4月から養殖場に移入した宮城産マガキ個体では、7月からメスに性分化する個体が出現し、10月にはほぼ全ての個体で性成熟が確認された。そのうち、メスになった個体ではMarteilioides chungmuensisの寄生が組織観察で認められ、卵巣肥大症も発症していた。一方、6月まで貧栄養の室内で飼育していた北海道産マガキ個体では、8月に一部の個体がオスとなったのみでメス個体は現れず、年間を通して寄生虫の寄生も発症も認められなかった。 そこで、これらの個体をもう1年、同じ養殖海域に垂下して飼育を続け、2023年の10月に成熟状態を調べた。その結果、宮城産マガキの場合、20個体中、2個体がメス、4個体がオスであり、残りの個体は成熟時期が終わたっため生殖腺が完全に縮退している状態にあると判断された。一方、北海道産マガキの場合、32個体中、17個体がオス、6個体がメス、9個体で生殖腺が完全に縮退していると判断された。以上の結果から、宮城産個体と北海道産個体では、同一飼育環境にあっても、宮城産個体の方がより早く成熟期を終えてしまうという性成熟に関する性質に違いがあることが示唆された。また、1年目にはメスの個体が認められなかった北海道産個体であったが、2年目にはメスに性分化している個体が確認できた。そのため、給餌条件による性成熟の影響は1年目の初回成熟にのみ影響を及ぼし、2年目以降にはその効果は失われる可能性が考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2023年度は、実際にマガキの種苗生産を行なっている施設にて、飼育時の給餌量が性成熟に及ぼす試験を実施する予定であった。しかし、当該施設において、長期の準備期間を要する優先的な別事業が発生し、試験の準備を進めていたものの、2023年度には当該試験を取りやめざるを得なくなった。そのため、進捗状況はやや遅れていると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
昨年度の結果から、宮城産マガキと北海道産マガキでは性成熟に関する性質に違いが存在する可能性がある。そこで、最終年度の本年は、昨年度実施できなかった給餌量が性決定と性成熟に及ぼす影響の評価を、両方の個体群を対象として実施する。4月より両方の個体群を、餌を豊富に含む海水で飼育する通常給餌区と、餌プランクトンの少ない条件で飼育する餌制限区に分けて飼育、2ヶ月おきに採取し、性成熟の様子をモニタリングする。飼育中、常時計測している両区のクロロフィル量、成長と成熟の関係について検討を行う。また、成熟関連遺伝子の発現量についても検討する。
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