研究課題/領域番号 |
21K19141
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研究種目 |
挑戦的研究(萌芽)
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
中区分40:森林圏科学、水圏応用科学およびその関連分野
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研究機関 | 静岡大学 |
研究代表者 |
飯尾 淳弘 静岡大学, 農学部, 准教授 (90422740)
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研究期間 (年度) |
2021-07-09 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
完了 (2023年度)
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配分額 *注記 |
6,240千円 (直接経費: 4,800千円、間接経費: 1,440千円)
2023年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2022年度: 1,950千円 (直接経費: 1,500千円、間接経費: 450千円)
2021年度: 2,860千円 (直接経費: 2,200千円、間接経費: 660千円)
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キーワード | 陽樹と陰樹 / 光合成の温度応答 / ガス交換モデル / 樹冠構造 / 光合成 / 気孔コンダクタンス / 温度応答と順化 / 葉のガス交換モデル / 光合成の最適温度 / ブナ / 陽樹 / 陰樹 / 呼吸 / 温度応答 / 葉の分布様式 / 種多様性 |
研究開始時の研究の概要 |
葉の光合成の温度応答は一般的に、暗い環境のほうが明るい環境と比べて温度上昇に対する光合成の低下幅が大きくなる。そのため葉が多く樹木内の暗い種ほど温暖化に対して脆弱な可能性がある。葉量の多い種には成熟林の主役である遷移後期種が多い。温暖化でそれらの光合成量が低下すれば森林の構成種が変わり、生物多様性や生態系機能が大きく変化する可能性があるため、早急に上述の仮説「葉の多い樹木は温暖化に脆弱」を検証する必要がある。そこで、葉量の多い遷移後期種と少ない遷移前期種の葉の光合成機能と分布構造を調べ、それらを考慮した光合成予測モデルを構築して温暖化シミュレーションを行い、この仮説の検証に挑戦する。
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研究実績の概要 |
葉の光合成速度の最適温度は暗い環境ほど低下するため、葉が多く樹木内部の暗い陰樹は、葉量が少なく内部の明るい陽樹よりも温暖化に対して脆弱である可能性がある。この仮説を検証するために、アカメガシワ、ダケカンバ、ミズメ(陽樹)とブナ(陰樹)の陽葉と陰葉について、葉のガス交換速度の環境応答を詳しく調べ、光合成速度の温度応答を再現する生化学モデルを構築した。また、葉面積の空間分布を調べ、個体光合成の温度応答に与える影響について考察した。光合成と蒸散、呼吸は、陽葉、陰葉に関わらず、陽樹のほうが陰樹よりも高い能力を示した。また、陽葉と陰葉の生理特性の差について、陽樹は陰樹よりも小さく、光環境に対する可塑性が小さいことがわかった。温度応答についても、陰樹では陽葉と陰葉で光合成能力の最適温度が大きく異なったのに対して、陽樹ではほとんど違いがなかった。葉面積については、レーザースキャナーを用いて3次元的空間分布を再現した。陽樹では葉が上部に集中して葉層が薄いのに対して、陰樹は、葉が暗い下層にまで分布する厚い樹冠を形成しており、これまでの報告と一致した。以上の結果より、生化学モデルのパラメータを決定し、光合成速度の光と温度に対する応答を再現した。予想に反して、ブナ陰葉の光合成最適温度は陽葉と同程度であり、暗い条件では、陽葉よりもむしろ高い値を示した。これは、陽葉と陰葉の呼吸能力の違いが、光合成能力の違いよりも大きいためで、ブナは陰葉の呼吸能力と温度依存性を小さくすることで、陽葉と同程度の光合成最適温度を維持している可能性がある。よって当初の仮説は棄却され、陰樹であるブナは陽樹と比べて多くの陰葉を有するが、呼吸能力が低いため、高温における生産量の低下には必ずしも起こらないことが明らかになった。
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