研究課題/領域番号 |
21K19147
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研究種目 |
挑戦的研究(萌芽)
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
中区分40:森林圏科学、水圏応用科学およびその関連分野
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
黒田 慶子 神戸大学, 農学研究科, 非常勤講師 (20353675)
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研究分担者 |
東 若菜 神戸大学, 農学研究科, 助教 (20780761)
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研究期間 (年度) |
2021-07-09 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
6,370千円 (直接経費: 4,900千円、間接経費: 1,470千円)
2023年度: 1,950千円 (直接経費: 1,500千円、間接経費: 450千円)
2022年度: 2,600千円 (直接経費: 2,000千円、間接経費: 600千円)
2021年度: 1,820千円 (直接経費: 1,400千円、間接経費: 420千円)
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キーワード | エンボリズム / アコースティックエミッション / AE / 熱流束 / シマトネリコ / 通水阻害 / 樹木生理 / 樹液流 / 水分通導 / キャビテーション / 熱流束計 / 広葉樹 / 樹液流動 / 水輸送 / 細胞機能 / 濡れ性 / Cohesion-tension theory |
研究開始時の研究の概要 |
長寿の樹木では、樹幹内の水分流動が安定して続く必要がある。樹木の水流動および通水停止からの回復の仕組みを解明するには、通水を「毛細管内の物理現象」と考えるのではなく、セルロースが主体の細胞壁の物理特性や,通水組織に接する生細胞の機能を考慮する必要がある。本研究は以下の3課題、1)通水の回復に関する解剖学・生理学的研究、2)細胞壁の濡れ性と通水の持続性に関する研究、3)通水の仕組みの解明とバイオミメティクスへの発展で構成し、従来の説を補完する新たな説を確立する。1980年代に提案されたCohesion-tension theoryで説明できていない「通水の仕組み」を解明する。
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研究実績の概要 |
樹木は日常的に通水組織内で気泡(キャビテーション)を生じ、通水阻害(エンボリズム)が起きることが知られている。通水阻害は気泡の発生に応じて生じる弾性波(アコースティックエミッション、AE)の検出によって評価できるが、発生要因や発生パターンを把握するために長期的かつ連続的に計測された事例は少ない。通水阻害は樹体内の栄養塩や植物ホルモンの輸送を制限するため、その変動についての議論は、樹木の生理学的な生存戦略を理解する上で根幹となる。 本研究では、通水機能の変動を通水阻害の観点から評価することを目的とし、オリーブ苗木の鉢植えおよびシマトネリコ植栽木を用いて、神戸大学構内で2021年5月から12月まで実験を実施した。①AEセンサーを用いて幹の通水阻害を経時的・非破壊的に定量した。②通水阻害の評価は、AEのイベント数を10分間の積算値として記録し、樹液流速度は熱流束計を用いて、ともに非破壊で経時的計測を行った。 継続的な計測の結果、オリーブでは、潅水直後から葉の褐変が確認されるまでのAEの発生頻度と熱流束の変動を捉えることができた。シマトネリコでは、AEと熱流束に加え、気象データ(日射量・気温・湿度・風速・大気飽差・先行降雨指数)を説明変数とした一般化線形モデルにあてはめ、AEに関係する環境要因の影響を検討し、通水機能の日的な変化、およびフェノロジーとの関係を記録した。5 月~11 月においては湿度の低下や風速の増大が AE の発生数を増大させた。また、気温が急激に低下した10 月以降には、 AE の発生数が急増した。10月以降を除いた期間では日射量と風速が正の効果量を示した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究成果として、通水停止のタイミングや気象データとの関連で、実験データがかなり蓄積できてきた。その結果をまとめて学会誌に投稿できる段階になり、現在は投稿論文が査読中である。
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今後の研究の推進方策 |
課題2)濡れ性と通水特性に関する研究:疎水性のリグニンが親水性のセルロース・ヘミセルロースと混在することによって、細胞壁の水との親和性が異なるはずである。1)壁組成の割合と保水・通水特性との関係について、既存情報と通水回復実験により追求する。2)樹種による細胞種(生細胞、小道管)の構成割合と配置、通水回復機能の高低との関係を明らかにする。既往の研究報告から細胞壁組成の情報を収集し、通水機能(実験による比較)と組織構造との関係性を解明する。 課題3)通水の仕組みを利用したバイオミメティクスへの発展:樹木の「省エネ水運搬システム」を生活に利用できるように、材料を検討する。新たな水運搬システムの解明を経て、機能の応用開発に取り組む。
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