研究課題/領域番号 |
21K19158
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研究種目 |
挑戦的研究(萌芽)
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
中区分40:森林圏科学、水圏応用科学およびその関連分野
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研究機関 | 国立研究開発法人水産研究・教育機構 |
研究代表者 |
加藤 慶樹 国立研究開発法人水産研究・教育機構, 開発調査センター, 技術調査調整役 (20571582)
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研究分担者 |
広橋 教貴 島根大学, 学術研究院農生命科学系, 教授 (90376997)
佐藤 成祥 東海大学, 海洋学部, 講師 (40723854)
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研究期間 (年度) |
2021-07-09 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
6,240千円 (直接経費: 4,800千円、間接経費: 1,440千円)
2023年度: 390千円 (直接経費: 300千円、間接経費: 90千円)
2022年度: 2,210千円 (直接経費: 1,700千円、間接経費: 510千円)
2021年度: 3,640千円 (直接経費: 2,800千円、間接経費: 840千円)
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キーワード | アカイカ / 食性 / 共食い / マイクロサテライトマーカー / 頭足類 / 性的共食い / 生存戦略 / 外洋性頭足類 / 食性解析 / カニバリズム / 資源変動 |
研究開始時の研究の概要 |
アカイカの胃内容物からは、頭足類の肉片が多く認められ、本種が共喰い行動(カニバリズム)を持つ可能性が強く示唆されるが、そのカニバリズムに関する知見はほとんどない。ただ、カニバリズムの個体群動態への影響は小さくなく、個体群動態に基づく資源管理を行う上でも無視できない。そこで本研究では、食性情報からカニバリズムの発生メカニズムを統計的に分析するとともに、遺伝解析によりその発生頻度を明らかにする。
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研究実績の概要 |
今年度、イカの食性データベース(70000データ)を作成した。データベースは、スルメイカ、アカイカ、ニュージーランドスルメイカ、アメリカオオアカイカ、アルゼンチンマツイカの食性についてまとめたもので、食性だけでなく、雌雄、体長、体重および熟度についての情報も含まれており、今後の研究上重要な生物食性記録を作成することができた。今回は、このデータを使って、カニバリズムの出現頻度を分析したところ、アメリカオオアカイカやアカイカの外洋性のイカで、雌、交接痕のある個体の胃内容物からイカの肉片が出現する割合が高いことが分かった(加藤ら2022)。これは、本種らが背的カニバリズムを引き起こしている可能性を示唆するものである。 そこで、外洋性アカイカのサンプルを沖縄県のソデイカ漁業者に依頼して採集し、その食性を詳細に分析した。今回のサンプルからは胃内にあるイカ類の筋肉片や嘴などは約8㎜程度に粉砕されているものが多く、嘴の形態から種査定を行うことは困難であった。また、1個体の胃内から5㎜程度のかぎづめ及び種査定が可能なほど形が保持されている嘴が発見され、種査定の結果、テカギイカ科ホソタコイカである可能性が示唆された。これは、本種の生息水深を推定するうえで重要な情報である。一方で、形態目視だけで、アカイカの共食いを示すものは見つからなかった。 そこで、DNAによる個体識別により分析するために、マイクロサテライトマーカーの開発を行った。18 サンプルでDNA の増幅ができることを確認した後、残りのサンプルについてもPCR を実施し、その後のフラグメント解析の結果、4種類のマイクロサテライトマーカに絞られた。今後もマーカの開発を継続して行っていく。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
マイクロサテライトマーカの開発も順調に進んでおり、現在追加のサンプルの解析を実施して、その精度を検証している。今年度は、データ公表に向けて取りまとめるとともに、遺伝情報に基づく共食いの可能性を調べる。
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今後の研究の推進方策 |
メスの胃内容物から魚類の骨、イカ類の筋肉片や嘴が発見され、アカイカの食性が明らかになりつつある。 さらに、胃内容物でイカ類の筋肉片と推測されたものは、筋肉片に付いている皮膚が溶け残っていることからまだ消化が進んでおらず、DNA解析による種判別を行う際に用いることができる。仮に筋肉片のDNAが分解されていてDNA解析が困難である場合、嘴や角質環などの固い組織からのDNA抽出によるDNA解析によって種の査定を行うことができると考えられ、カニバリズムの出現の証拠を遺伝的に検証できるものと考えられる。
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