研究課題/領域番号 |
21K19174
|
研究種目 |
挑戦的研究(萌芽)
|
配分区分 | 基金 |
審査区分 |
中区分42:獣医学、畜産学およびその関連分野
|
研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
小林 謙 北海道大学, 農学研究院, 准教授 (30449003)
|
研究期間 (年度) |
2021-07-09 – 2023-03-31
|
研究課題ステータス |
完了 (2022年度)
|
配分額 *注記 |
6,500千円 (直接経費: 5,000千円、間接経費: 1,500千円)
2022年度: 3,120千円 (直接経費: 2,400千円、間接経費: 720千円)
2021年度: 3,380千円 (直接経費: 2,600千円、間接経費: 780千円)
|
キーワード | 乳腺上皮細胞 / 細胞内寄生 / 黄色ブドウ球菌 / 乳産生 / タイトジャンクション / ライブイメージング / 乳房炎 |
研究開始時の研究の概要 |
【研究目的】黄色ブドウ球菌は難治性乳房炎を引き起こす。しかし、その感染戦略の全容は未だ把握されていない。本研究では、『黄色ブドウ球菌は乳腺上皮細胞に寄生し、その感染防御バリアを細胞内から崩壊させ、難治性乳房炎を引き起こす』と仮説を立て、細胞生理学的な方法で実証する。【研究方法】黄色ブドウ球菌と乳腺上皮細胞の共培養を用いて、乳房炎発症を再現した実験モデルを作製し、蛍光標識した黄色ブドウ球菌の寄生する過程をライブイメージングする。続いて、宿主細胞の細胞骨格を蛍光標識し、その構造が変化する過程を動的に捉える。最後に、寄生された宿主細胞のバリア機能低下を精査する。
|
研究成果の概要 |
泌乳期の乳腺上皮細胞は抗菌成分の分泌とタイトジャンクション(TJ)の形成を行い、微生物感染を防いている。しかし、黄色ブドウ球菌は細胞内寄生菌であり、その乳房炎は難治性である。本研究では、乳腺上皮細胞の細胞膜とアクチン線維、および細胞内寄生菌を蛍光標識し、細胞内寄生菌が乳腺上皮細胞に寄生する様子を観察した。その結果、細胞内寄生菌は細胞膜に包まれた状態で細胞内に侵入すること、細胞内寄生菌は細胞接着機構が不十分な乳腺上皮細胞に対して選択的に寄生することが示唆された。また、黄色ブドウ球菌由来のリポタイコ酸が細胞外から乳腺上皮細胞のTJバリアの脆弱化と乳成分産生能力の変化を引き起こすこともわかった。
|
研究成果の学術的意義や社会的意義 |
乳牛の乳生産は乳房炎の発症によって著しく低下する。黄色ブドウ球菌は乳房炎起炎菌の一つであり、細胞内寄生菌でもある。また、黄色ブドウ球菌による乳房炎は難治性であることが知られている。従来、黄色ブドウ球菌の乳房炎治療に関する研究は細菌レベル、ウシ個体レベルで抗生物質を中心に行われてきた。しかし、本研究の結果、黄色ブドウ球菌などの細胞内寄生菌は細胞内と細胞外の両面から乳腺上皮細胞に作用し、感染拡大を進めている可能性が示された。今後、本研究の成果から得られた知見に基づき、黄色ブドウ球菌の感染拡大過程を明らかにすることによって、その過程を防ぐことによる効果的な治療法が導き出されると判断される。
|