研究課題/領域番号 |
21K19215
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研究種目 |
挑戦的研究(萌芽)
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
中区分43:分子レベルから細胞レベルの生物学およびその関連分野
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
大嶋 篤典 名古屋大学, 細胞生理学研究センター, 教授 (80456847)
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研究期間 (年度) |
2021-07-09 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
6,370千円 (直接経費: 4,900千円、間接経費: 1,470千円)
2022年度: 3,120千円 (直接経費: 2,400千円、間接経費: 720千円)
2021年度: 3,250千円 (直接経費: 2,500千円、間接経費: 750千円)
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キーワード | large pore channel / クライオ電子顕微鏡 / 脂質膜再構成 / リポソーム / Large Pore Channel / ゲーティングモデル / ナノディスク再構成 / 高分解能構造解析 / ギャップ結合関連タンパク質 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究はlarge pore channelとして知られるヒトパネキシン1(Panx1)の脂質二重膜内における高分解能構造解析をクライオ電子顕微鏡単粒子解析法で行い、新しいチャネル開閉機構の提唱を目指す。具体的にはPanx1チャネルの開状態と閉状態の原子構造を得ることを目的とし、Panx1の野生型、変異体などの複数の高分解能構造を脂質ナノディスクに再構成した状態で解析する。本研究によって、large pore channelがどのように完全な閉状態を実現するのかという問題に対し、Panx1では脂質が関与するという新規開閉モデルの提示を目指す。
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研究実績の概要 |
膜タンパク質チャネルを生体内に近い環境で構造解析することを目指して、ナノディスクやリポソームを用いた膜タンパク質の再構成技術を適用している。具体的にはLarge pore channelの一つとして知られるヒトpannexin-1(Panx1)のクライオ電子顕微鏡構造解析を行っている。これまでに野生型PANX1チャネルのオープン状態とクローズ状態の構造解析、および、N末端欠失変異体とC末端欠失変異体の構造解析をいずれもナノディスク再構成状態で成功している。野生型の閉塞構造とN末端欠失変異体の構造はチャネル通路の内側に通路を塞ぐ密度が現れて、脂質のアシル鎖の特徴を示す密度が確認され、脂質がチャネルの内側に入り込むことを示唆するものであった。Panx1チャネルの機能解析とMDシミュレーションを用いた脂質の流動性の解析を共同研究にて行い、これらを総合して、脂質がPANX1と相互作用しながらチャネル通路内へ移動する「脂質ゲーティングモデル」を提示した。また、ナノディスクよりもネイティブ環境に近い状態で構造解析を行うため、Panx1のリポソーム膜再構成にも取り組んでいる。精製したPanx1チャネルと可溶化した脂質の混合液から界面活性剤を除去することで、再現性良くリポソーム膜が作製できていることを負染色電子顕微鏡観察とクライオ電子顕微鏡観察で確認した。データ収集に適したクライオグリッドを作製するため、リポソーム作製条件の改善や、グリッド凍結条件検討を行い、クライオ電子顕微鏡による高分解能構造解析を目指している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度はLarge pore channelのヒトパネキシン1(Panx1)のリポソーム再構成を行った。Panx1を哺乳動物細胞にて発現し、精製した後に、Panx1の再構成した脂質リポソーム膜を効率よく作製することができた。脂質はSoy bean extractまたはPOPCを用いて試験管内にてフィルム状にし、界面活性剤を含まないバッファを添加して、チップソニケーションでリポソーム膜を作製した。作製したリポソームを一度界面活性剤のdodecylmaltosideで可溶化し、精製したPanx1を混合した後にバイオビーズを添加して界面活性剤を除去することで、リポソームへPanx1を再構成した。この試料をiodixanolの密度濃度勾配遠心法にかけ、凝集物はペレットに、空リポソームは上層にfloatationさせて分離し、中間層からPanx1再構成リポソームの画分のみを回収した。Panx1リポソームを負染色法で電子顕微鏡観察したところ明確に再構成粒子を確認することはできなかったが、クライオ電子顕微鏡観察ではPanx1粒子と思われるコントラストを確認した。また、Panx1リポソームを再度界面活性剤で可溶化し、蛍光ゲル濾過法で粒子のピークを確認できたことから、Panx1チャネルがオリゴマーを保った状態で再構成している可能性が高いと判断した。これらは他の膜タンパク質にも応用が可能な技術である。
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今後の研究の推進方策 |
Panx1についてはクライオ電子顕微鏡の構造解析に持ち込みたい。そのためにリポソーム再構成の効率の向上と、単一膜リポソームに再構成されたチャネルを含むクライオグリッドを作製する必要があり、凍結条件の最適化を行う。特にクライオグリッド上でリポソームが重ならない試料を調製することが難しく、サイズが小さいリポソーム再構成膜の作製を目指す。そのためにリポソーム濃度と試料凍結条件を探索するほか、リポソーム作製条件の検討も行う。リポソーム再構成をする際にGFP融合型を用いて、作製したリポソームをアフィニティー精製する。この場合、細胞内表面が外側に向いたinside-outのチャネルのみ選択することができるため、その後の解析にも有利に働くと予想される。現在複数のギャップ結合ファミリータンパク質の発現にも成功しており、リポソーム再構成を適用していく。
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