研究課題/領域番号 |
21K19225
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研究種目 |
挑戦的研究(萌芽)
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
中区分43:分子レベルから細胞レベルの生物学およびその関連分野
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
永井 健治 大阪大学, 産業科学研究所, 教授 (20311350)
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研究期間 (年度) |
2021-07-09 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
6,370千円 (直接経費: 4,900千円、間接経費: 1,470千円)
2023年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2022年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2021年度: 3,770千円 (直接経費: 2,900千円、間接経費: 870千円)
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キーワード | 光照射分子不活性化技術 / 超解像イメージング / 蛍光タンパク質 / 試験管内分子進化 / 蛍光顕微鏡 / 活性酸素種 / フォトクロミズム / ミトコンドリア |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は、光の回折限界を超えた高い空間分解能を有する超解像光照射分子不活性化技術(SR-CALI)を開発することが目的である。特に、SR-CALIのための光スイッチング光増感性蛍光タンパク質の開発、SR-CALIのための超解像顕微鏡装置の開発、そしてSR-CALI技術のコンセプトの実証として細胞内小器官内のタンパク質機能解析へのSR-CALIの応用を行う。本研究により、従来実現していなかった、細胞内小器官やタンパク質複合体1個1個のスケールでのCALIを可能にする。
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研究実績の概要 |
本研究の目的は、光の回折限界よりも小さい微小領域においてタンパク質や生体分子複合体等の不活性化を行う超解像光照射分子不活性化技術(SR-CALI)を開発することである。具体的な研究実施項目は、励起光照射下の試料中の微小領域で活性酸素種を発生させるためのタンパク質(SR-CALIタンパク質)の開発、SR-CALIのための超解像顕微鏡装置の開発、そして細胞中の微小領域においてSR-CALIが起こることを確認してそのコンセプトを実証することである。 本研究で開発するSR-CALIタンパク質は、活性酸素種を発生可能なON状態と発生できないOFF状態の2状態をとり、これらの状態間の可逆的なスイッチングを光照射で制御(光スイッチング)可能なタンパク質である。今年度は、昨年度開発した光照射分子不活性化スクリーニング法を用いてSR-CALIタンパク質の開発を進めた。今年度試作したSR-CALIタンパク質の分子デザインは、(1)光スイッチング能の無い従来型の活性酸素種発生タンパク質(CALIタンパク質)にアミノ酸変異を導入することで光スイッチング能が付与されたSR-CALIタンパク質(1分子型SR-CALIタンパク質)、そして(2)従来の光スイッチング能を持たないCALIタンパク質に光スイッチング蛍光タンパク質を融合してフェルスター・エネルギー移動(FRET)を介して光スイッチング能が付与されたSR-CALIタンパク質(FRET型SR-CALIタンパク質)の2種類である。これらのうち1分子型SR-CALIタンパク質は作成が難しいことが分かったため、FRET型SR-CALIタンパク質の作成を進めた。FRET型SR-CALIタンパク質のFRETドナーとなる光スイッチング蛍光タンパク質の作成に成功したので、これとCALIタンパク質との融合タンパク質の試作を行っているところである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
今年度は、光スイッチング能を有する活性酸素種発生タンパク質(SR-CALIタンパク質)の開発を行った。SR-CALIタンパク質の分子デザインは、(1)光スイッチング能を持たない従来型の活性酸素種発生タンパク質(CALIタンパク質)にアミノ酸変異を導入することで光スイッチング能が付与されたSR-CALIタンパク質(1分子型SR-CALIタンパク質)、そして(2)光スイッチング能を持たない従来型CALIタンパク質と光スイッチング蛍光タンパク質との融合タンパク質であり、光スイッチング蛍光タンパク質からCALIタンパク質へのフェルスター・エネルギー移動(FRET)でCALIタンパク質が励起して活性酸素種を発生するもの(FRET型SR-CALIタンパク質)の2種類である。1分子型SR-CALIタンパク質は、光スイッチング能の無い従来型CALIタンパク質をテンプレートとして光スイッチングのためのアミノ酸変異を導入することで作成を試みた。しかし、この変異導入によって光スイッチング能を付与することに成功したが、活性酸素種発生能が消失したことより、1分子型SR-CALIタンパク質の作成は難しいことが分かった。ただし、この変異導入で得られたタンパク質は光スイッチング能と有用な吸光帯および蛍光帯を持つ光スイッチング蛍光タンパク質であることが分かったため、FRET型SR-CALIタンパク質のドナーとして用いることとした。そこで、ここで得られた光スイッチング蛍光タンパク質と従来型CALIタンパク質を融合することで、FRET型SR-CALIタンパク質の試作を進めているところである。
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今後の研究の推進方策 |
次年度は、SR-CALIのコンセプトの実証に向けて、SR-CALIタンパク質の作成、SR-CALI蛍光顕微鏡の製作、そしてSR-CALIの測定を行う。SR-CALIタンパク質は、光スイッチング蛍光タンパク質とCALIタンパク質との融合タンパク質となるFRET型の作成を進める。とくに、光スイッチング蛍光タンパク質とCALIタンパク質との間の相対的な配向やタンパク質ドメイン間のリンカーの最適化を行うことで、活性酸素種発生の活性とON/OFFスイッチングスピードおよびコントラストの良好なものを完成させる。SR-CALI蛍光顕微鏡は、超解像イメージング手法であるRESOLFT(reversible saturable optical fluorescence transitions)の照明法をSR-CALIタンパク質に適用した照明光学系を導入した蛍光顕微鏡である。この蛍光顕微鏡では、照明光学系に導入したVortex位相板を用いることでRESOLFT型の照明光を発生させる。SR-CALIの実証には、蛍光タンパク質または蛍光色素を固定化したガラス基板の系と、培養細胞の系を用いる。SR-CALIタンパク質を励起して発生した活性酸素種はその周囲の蛍光分子を破壊するため、SR-CALIタンパク質励起後に残存している蛍光分子の空間分布を測定することで、SR-CALIの空間分解能を解析する。さらに、SR-CALIタンパク質を発現させた培養細胞を調製し、SR-CALI蛍光顕微鏡下でSR-CALIを実施し、細胞内小器官やタンパク質複合体の光照射分子不活性化を検証する。
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