研究課題/領域番号 |
21K19236
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研究種目 |
挑戦的研究(萌芽)
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
中区分43:分子レベルから細胞レベルの生物学およびその関連分野
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研究機関 | 横浜市立大学 |
研究代表者 |
明石 知子 横浜市立大学, 生命医科学研究科, 教授 (10280728)
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研究期間 (年度) |
2021-07-09 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
6,370千円 (直接経費: 4,900千円、間接経費: 1,470千円)
2023年度: 1,950千円 (直接経費: 1,500千円、間接経費: 450千円)
2022年度: 2,210千円 (直接経費: 1,700千円、間接経費: 510千円)
2021年度: 2,210千円 (直接経費: 1,700千円、間接経費: 510千円)
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キーワード | 膜タンパク質 / ネイティブ質量分析 / タンパク質複合体 |
研究開始時の研究の概要 |
現在利用されている低分子の薬剤のおよそ3割が、膜タンパク質であるG-protein coupled receptor(GPCR)をターゲットとしていると言われている。そのためGPCRと薬物複合体の構造解析や結合親和性の解析は、創薬を進めるにおいて重要な位置づけにある。本研究では、膜タンパク質の中でも不安定なGPCRに対して、特異的に結合する薬剤候補化合物を迅速に見出すための手法としてネイティブ質量分析を用いた実験手法を構築することを目指す。精製されミセル化されたGPCRでの実験系を構築した後、膜画分でミセル化していない未精製GPCRでの実験系の構築を試みる。
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研究実績の概要 |
本課題では、膜タンパク質を大量発現系で調製後、精製せずに膜に結合したままの状態で取り上げ、候補化合物との結合の解析を行うための高スループットな実験系の構築を目指す。そのためには、精製した膜タンパク質が特異的に結合するリガンドや情報伝達に関わる分子と形成する複合体を、ネイティブ質量分析で確かに観測できることを、予め確認しておく必要がある。昨年度、大腸菌および海洋性細菌由来の2種類の膜内プロテアーゼRsePについて、その阻害剤との複合体の状態でネイティブ質量分析で観測することに成功している。この際のデータを参考に、ヒトGPCRの一つβ2型アドレナリン受容体(β2AR)のネイティブ質量分析を試みた。その結果、薬剤との複合体の観測は難易度が高くS/Nの低いデータしか得られなかったが、受容体をはっきりとしたシグナルで観測することには成功した。これらの実験では、試料精製に用いる界面活性剤には膜タンパク質をより安定に保つことができるものを使用し、質量分析時に用いる界面活性剤はより剥がしやすい界面活性剤を用いることで、ネイティブ質量分析での観測が可能となった。このように、国内初のGPCRのネイティブ質量分析に成功した。 β2ARでは細胞内の情報伝達に対する薬剤(アゴニスト、アンタゴニスト)の薬効を評価するシステムを構築することを目指して、細胞質側の情報伝達に関わるGタンパク質との複合体として安定化させ、薬剤との複合体をネイティブ質量分析で観測することを検討した。その結果、Gタンパク質を模した低分子化タンパク質miniGsおよびnanobodyと複合体を形成させることで、アゴニストやアンタゴニストの薬効の違いをネイティブ質量分析で見極められる手法を構築することができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
GPCRはその安定性が低いため、人工的なミニGタンパク質との複合体とすることで、薬剤との複合体の観測を試みたがこれまでに成功していない。これは世界的に見ても誰も成功していない。この検討に予想以上の時間を要してしまい、生体膜に近い環境で膜タンパク質をネイティブ質量分析で観測する検討に着手できておらず、計画からやや遅れてしまったため。
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今後の研究の推進方策 |
これまで扱った膜タンパク質の中でもより安定なRsePについて、未精製の状態で取り上げてネイティブ質量分析を行うことを試みる。一方で、精製したRsePやβ2ARについて、リポソームやナノディスクなど脂質二重膜環境で再構成して、機能している状態を観測することを試みる。
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