研究課題
挑戦的研究(萌芽)
他個体の行動の観察し知識を獲得する「社会学習」は、ヒトや動物の生存に大きく寄与する。しかしそのニューロン機構はほとんど分かっていない。最近、ヒトの社会学習が、通常の連合学習と同様に、「報酬予測誤差」に基づいておこるという仮説が提案され、その実験的検証が切望されている。研究代表者は、コオロギの連合学習が、哺乳類の連合学習と同様、動物が予測する報酬や罰と実際に受け取る報酬や罰の差、すなわち「予測誤差」に基づいて起こることを発見した。またコオロギには社会学習の高い能力があることを発見した。本研究では、コオロギを研究材料として用い、その社会学習が予測誤差仮説で説明できるかの検証に挑戦する。
他個体の行動の観察し知識を獲得する「社会学習」は、動物界に広く見られる。本研究ではフタホシコオロギを用い、社会学習が「予測誤差仮説」によって説明できるかを検証した。コオロギが水場で他個体が水を飲むのを観察すると、水場の匂いを水と連合させて覚える嗜好性社会学習が起こる。薬理学的な解析の結果、この社会学習は「2次条件付け」により起こることが分かり、「予測誤差仮説」は棄却された。一方、2次条件付仮説は、オクトパミンニューロンが「ミラー様」の神経活動を示すことにより社会学習が起こることを示唆している。これは哺乳類の社会学習で「ミラー様神経活動」が果たす役割に類似することを示唆するもので興味深い。
多くの動物は他個体の行動から学ぶ社会学習を示すが、その仕組みはよく分かっていない。本研究での薬理的な解析の結果、フタホシコオロギの社会学習が「2次条件付け」によって起こることが示唆された。私達が提案する2次条件付けの神経回路モデルからは、オクトパミンニューロンは自身が水を飲む時に発火するが、他個体が水を飲むのを見た時にも発火すること、その様な「ミラー様の神経活動」が社会学習をもたらすことが予測される。昆虫のニューロンが哺乳類と同様に「ミラー様神経活動」を示し社会学習を実現するという本研究での提案は、大きな注目を集めると期待される。
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すべて 国際共同研究 (2件) 雑誌論文 (6件) (うち国際共著 2件、 査読あり 6件、 オープンアクセス 5件) 学会発表 (9件) (うち国際学会 3件) 備考 (2件)
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