研究課題/領域番号 |
21K19246
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研究種目 |
挑戦的研究(萌芽)
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
中区分44:細胞レベルから個体レベルの生物学およびその関連分野
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
中川 真一 北海道大学, 薬学研究院, 教授 (50324679)
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研究分担者 |
泊 幸秀 東京大学, 定量生命科学研究所, 教授 (90447368)
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研究期間 (年度) |
2021-07-09 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
6,500千円 (直接経費: 5,000千円、間接経費: 1,500千円)
2023年度: 1,950千円 (直接経費: 1,500千円、間接経費: 450千円)
2022年度: 1,950千円 (直接経費: 1,500千円、間接経費: 450千円)
2021年度: 2,600千円 (直接経費: 2,000千円、間接経費: 600千円)
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キーワード | 超天然変性タンパク質 / ゲノム編集 / 天然変性領域 / 相分離 |
研究開始時の研究の概要 |
これまでの分子生物学では、タンパク質の機能はアミノ酸の一次配列によって決められており、特定の配列を持つタンパク質は特定の立体構造へと折りたたまれ、その立体構造によって決められる特異的な相互作用がそれぞれの機能を決めていると考えられてきました。ところが最近になって、ゲノムの中には全長に渡って特定の立体構造をとりにくい配列を持つ「超天然変性タンパク質」が多数存在しており、それらは既知の機能ドメインを全く持たないにもかかわらず、重要な分子機能を持つことが明らかとなってきています。本研究では、これらの超天然変性タンパク質の変異マウスをゲノム編集の技術を用いて作製し、その生理機能を明らかにします。
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研究実績の概要 |
最近になって、高等真核生物のゲノムには全長に渡って特定の構造をとらないと予測される超天然変性タンパク質が多数コードされていること、それらの中には、各種タンパク質を熱変性や乾燥などのストレスから保護したり、病原性凝集体の形成を強力に阻害したりする活性を持つものがあることが明らかとなってきた。本研究においては、ゲノム中に少なくとも数百のオーダーで存在している超天然変性タンパク質の変異マウスを、F0でのホモ個体解析が可能な迅速変異マウス作製法であるiGONAD法を用いてシステマチックに作製し、その表現型解析を行うことを目的としている。 今年度はすでに胎生初期に致死になることが明らかとなっているHero11について、そのクライアントのタンパク質を同定するために近位ビオチンラベル法を用いた解析を行った。その結果、Hero11は核小体に局在する一連のタンパク質と相互作用していること、特に、DEADボックスを持つRNAヘリケースと強く相互作用していることが明らかとなった。 また、別の胎生致死を示すHero45のノックアウトマウスについて致死になるタイミングについて詳細な解析を行ったところ、胎生中期(妊娠13.5-14.5日)頃に、異常な個体が初めて観察されることが明らかとなった。それらの表現型としては、無眼、口蓋裂、手指形成異常など、個体によってばらつきがあり、特定のシグナル経路にかかわるというよりは、発生中に生じる確率的な異常・ストレスに対処するために必要であることが予想された。 さらに、新規の超天然変性タンパク質6種類についてiGONAD法を用いて新たに変異マウスを作製したところ、3種類の遺伝子についてF0ではホモ個体が得られず、これらが胎生致死にである可能性が示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
研究開始当初は生理的に重要な機能を持つ新たな超天然変性タンパク質を同定できるかどうかは全く道の状態であったが、Hero45を始めとして新たな必須遺伝子を同定することができた。これは、今後の超天然変性タンパク質研究において非常に重要なマイルストーンになることが期待される。また、予備的な研究では免疫沈降等の古典的な手法で相互作用を検出することができなかったHeroタンパク質とクライアントタンパク質との相互作用を近位ビオチンラベル方を用いることで同定するパイプラインを確立することができた。今後、一部のHeroタンパク質のようにクライアントタンパク質との強固な結合がみられない超天然変性タンパク質の相互作用因子の解析に、このようなアプローチが標準的な手法となることが期待される。
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今後の研究の推進方策 |
現在得られている複数の新規必須超天然変性タンパク質のそれぞれについて、相互作用因子を近位ビオチンラベル法を用いてシステマチックに同定し、どのような細胞内プロセスに関わっているかどうかを明らかにしてゆく。また、それらの相互作用因子についてどのような働きをしているのかを明らかにするために、相互作用因子にEGFPを融合したタンパク質を細胞に発現させ、それらの動態が変化しているかどうか、FRAP等のライブイメージング技術を用いて明らかにしてゆく。また、超天然変性タンパク質のクライアントのタンパク質には顕著な天然変性領域を持ち特定のin vitroの条件下で相分離する性質を持つものが多数知られており、それらのin vitroでの相分離現象に対して超天然変性タンパク質がどのような影響を与えるのかを解析してゆく。これらの研究を通して、超天然変性タンパク質がどのような分子機構で生理機能を発揮するのかを明らかにすることができると期待される。
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