研究課題/領域番号 |
21K19266
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研究種目 |
挑戦的研究(萌芽)
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
中区分44:細胞レベルから個体レベルの生物学およびその関連分野
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研究機関 | 奈良先端科学技術大学院大学 |
研究代表者 |
伊藤 寿朗 奈良先端科学技術大学院大学, 先端科学技術研究科, 教授 (90517096)
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研究分担者 |
和田 七夕子 奈良先端科学技術大学院大学, 先端科学技術研究科, 助教 (50379541)
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研究期間 (年度) |
2021-07-09 – 2023-03-31
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研究課題ステータス |
完了 (2022年度)
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配分額 *注記 |
6,500千円 (直接経費: 5,000千円、間接経費: 1,500千円)
2022年度: 3,250千円 (直接経費: 2,500千円、間接経費: 750千円)
2021年度: 3,250千円 (直接経費: 2,500千円、間接経費: 750千円)
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キーワード | 植物幹細胞 / 一年草 / 老化 / 個体死 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は、植物においてあいまいな「個体死」を定義し、さらにそこにある制御系を理解する。植物は、動物と比べて強い幹細胞増殖能を持ち、環境ストレスに対して非常に強い回復力、再生能力を持つため、植物にとっての「個体死」は、はっきりと定義されていない。一年草では開花結実後に種子を除いた個体全体が枯死して個体死を迎える一方、多年草においては、地下部の根や地上部の腋芽分裂組織が維持されることで、同じ株から何年も枯れずに、続けて花を咲かせる。一年草と多年草の茎頂と腋芽分裂組織に着目することで、多年草の腋芽分裂組織が「死なない仕組み」とその他の分裂組織が開花結実後に「死ぬ仕組み」を明らかにする。
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研究成果の概要 |
一年草であるシロイヌナズナの茎頂において、時間軸に沿った形態観察およびトランスクリプトーム解析を行った。活性酸素種関連遺伝子の発現が茎頂幹細胞の加齢にともない変化し、プログラム細胞死関連遺伝子が誘導されることを見いだした。実際に活性酸素種である過酸化水素の量が茎頂部において加齢に伴い上昇した。さらに過酸化水素の外的な塗布により幹細胞の決定因子の発現が抑制され、早期加齢が観察された。また、幹細胞が異常増殖する突然変異体においては、幹細胞の加齢と死のプロセスが遅れていた。これらのデータに基づいて、一年草の茎頂における活性酸素シグナルが茎頂幹細胞のプログラム細胞死を制御しているモデルを提案した。
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研究成果の学術的意義や社会的意義 |
植物にとっての「個体死」は、はっきりと定義されておらず、実際に個体死に至るシグナル因子の実態や分子機構は未解明のままである。これまでの植物細胞の死に関する研究は、病原性微生物や環境ストレスによって引き起こされる現象として主に解析が行われてきた。そのため植物の寿命に伴う個体死の研究は、今後の進展が望まれる挑戦的かつ新規性の高い研究テーマである。本研究において植物個体死を幹細胞のプログラム細胞死の制御機構として捉えた成果は、植物のみならず、動物同分野にもインパクトをもつと期待される。さらに植物個体死は農作物の収量に直接影響するものであり、食料の安定的供給にとっての社会的意義も深い。
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