研究課題/領域番号 |
21K19279
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研究種目 |
挑戦的研究(萌芽)
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
中区分44:細胞レベルから個体レベルの生物学およびその関連分野
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研究機関 | 甲南大学 |
研究代表者 |
久原 篤 甲南大学, 理工学部, 教授 (00402412)
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研究期間 (年度) |
2021-07-09 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
6,240千円 (直接経費: 4,800千円、間接経費: 1,440千円)
2023年度: 2,340千円 (直接経費: 1,800千円、間接経費: 540千円)
2022年度: 2,340千円 (直接経費: 1,800千円、間接経費: 540千円)
2021年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
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キーワード | 線虫C. eleagns / DEG/ENaC / 温度受容 / 低温耐性 / 温度順化 / C. elegans / 温度受容体 / メカノ受容体 / トランスクリプトーム解析 |
研究開始時の研究の概要 |
温度は生体の生存と繁栄に関わる重要な環境情報である。本研究では生命科学研究のモデル実験動物である線虫C. エレガンスが示す低温耐性を利用して、温度受容の分子機構に関わる新しい原理を見つけることを目的としている。接触刺激などのメカノ刺激を受け取るメカノ受容体であるDEG-1が温度受容に関わることを近年見つけたため、DEG-1以外のメカノ受容体やそれらの制御因子にも注目し、温度応答や低温耐性への関与を調べる。温度応答に影響を与えるDEG-1以外のDEG/ENaCが見つかってきた場合は、生理学的にDEG-1と共同して温度受容に関与するかを解析する。新規の温度受容体が見つかれば同時に解析を進める。
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研究実績の概要 |
温度は生体の生存と繁栄に関わる重要な環境情報のひとつである。本研究では、線虫C. elegansが示す温度応答のひとつである低温耐性・馴化 を実験系として、温度受容の分子機構に関わる新しい原理を解き明かすことを目的として解析を進めた。特に、メカノ受容体であるDEG/ENaCが温度受容 に関わることを近年見つけたため、メカノ受容体を介した温度受容に関して解析をすすめた。 これまでに、メカノ受容体であるDEG/ENaCの変異体であるdeg-1変異体が低温耐性に異常をもち、その原因はASG感覚ニューロンにおけるDEG-1を介した温度受容情報伝達の低下にあることが示唆されてきた。そこで、 メカノ受容体を介した温度受容に関して、その関連分子の同定やメカノ受容体による温度受容の生理的な解析をすすめた。前年度までに、温度刺激依存的に発現変動する遺伝子をトランスクリプトーム解析から同定し、その中からメカノチャネルおよびメカノチャネルの制御分子をコードする遺伝子を選別した。そのなかには、DEG-1以外のDEG/ENaCチャネルも含まれていたため、その遺伝子の変異体の低温耐性を測定したところ、ナル変異体では低温耐性異常が見られなかったため、その遺伝子の機能獲得型変異体を用いて、低温耐性の異常の有無を確認した。機能獲得型変異体において低温耐性の異常が確認されたため、DEG/ENaCチャネルのナル変異体にDEG/ENaCの機能獲得型遺伝子を外来遺伝子として導入し、それによって、低温耐性の異常が見られるようになるかを解析したところ、実際に異常が見られた。さらに、温度刺激依存的に発現変動する遺伝子のトランスクリプトーム解析から、DEG/ENaC以外の新規の温度受容体候補遺伝子として、3量体Gタンパク質に関連した遺伝子が見つかってきたため、その遺伝子の変異体の低温耐性を調べたところ、異常が観察された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
メカノ受容体を介した温度受容の分子機構に関わる新しい原理を解き明かすことを目的として、線虫C. elegansが示す低温耐性を実験系として解析を行い、これまでに、メカノ受容体であるDEG/ENaCであるDEG-1以外のDEG/ENaCチャネルがトランスクリプトーム解析から見つかってきた。前年度に単離されたDEG-1以外のDEG/ENaCチャネルの機能獲得型変異体において低温耐性の異常が確認されたため、DEG/ENaCチャネルのナル変異体にDEG/ENaCの機能獲得型遺伝子を外来遺伝子として導入し、それによって、低温耐性の異常が見られるようになるかを解析したところ、実際に異常が見られたため、予定通り達成されていると考えられる。さらに、温度刺激依存的に発現変動する遺伝子のトランスクリプトーム解析から、DEG/ENaC以外の新規の温度受容体候補遺伝子として、3量体Gタンパク質に関連した遺伝子が見つかってきたため、その遺伝子の変異体の低温耐性や温度応答性を調べたところ、異常が観察されたことから予定通り達成されていると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
次年度の課題としては、当該年度においてDEG-1以外のDEG/ENaCチャネルが温度に反応するチャネルであるかどうかを電気生理学的に解析する必要がある。そのため、アフリカツメガエルの卵母細胞に当該DEG/ENaCチャネルを発現させ、2本差しパッチクランプ法を用いて、温度刺激に対して細胞内ナトリウムイオン濃度の変化が生じるかを電気生理学的に測定することを考えている。またこれまでに、温度刺激依存的に発現変動する遺伝子のトランスクリプトーム解析から、DEG/ENaC以外の新規の温度受容体候補遺伝子として、3量体Gタンパク質に関連した遺伝子が見つかってきたため、その遺伝子の変異体の低温耐性や温度応答性を調べたところ、低温耐性の異常が観察された。そこで、それらの3量体Gタンパク質に関連した遺伝子の変異体において温度受容ニューロンの活動をカルシウムイメージングで測定する必要がある。
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