研究課題
挑戦的研究(萌芽)
現在、ヒト性分化の分子機構は十分解明されていない。本研究の目的は、液-液相分離という新たな観点からこの問題にアプローチすることである。もし液-液相分離で生じる細胞内小器官が性分化因子の相互作用の場を提供しているということが明確になれば、この知見はヒト性分化研究を大きく変革させる。この成果は性分化を支配する新たな分子の発見につながり、性分化疾患や生殖機能障害の病態の理解に役立つ。また本研究によって、液-液相分離の新たな生体内機能が解明されると期待される。
本研究は、新たな観点から性分化疾患の発症メカニズム解明に挑むものである。下記の成果を挙げ、英文論文として発表した。(1)単一遺伝子変異に起因する性分化疾患の病態の解明:第一に、SRD5A2ホモ接合性性バリアントを有する性分化疾患患者の臨床解析から、5αレダクターゼ欠損症の新生児期の病態を明らかとした。第二に、DHX37のヘテロ接合性変異を有する患者の臨床解析を行い、DHX37異常症の本態が胎児期に一旦形成された精巣の退縮であることを明らかとした。(2)多因子疾患として生じる性分化疾患・生殖機能障害に関与する新規遺伝的因子の解明:第一に、多嚢胞性卵巣症候群患者のエクソーム解析の結果、患者群において有意にGSTO2遺伝子の希少タンパク障害性バリアントの頻度が高いことを見いだした。この成績は、GSTO2の希少病的バリアントが多嚢胞性卵巣症候群のリスクに関与することを示唆する。第二に、非閉塞性無精子症患者のエクソーム解析の結果、9例(7.8%)で既知疾患原因遺伝子もしくは候補遺伝子の病的バリアントが検出された。一方、SKAT-Oでは全ゲノムに有意の疾患関連遺伝子は同定されなかった。この成績は、非閉塞性無精子症発症における既知疾患原因遺伝子変異の重要性と、本症の遺伝的異質性を示唆する。(3)性分化疾患発症における液-液相分離(LLPS)や新規男性ホルモンの意義の解明:システマテックレビューによって性分化疾患の原因としてLLPSと11-oxygenated C19 steroidsの重要性について検証した。
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