研究課題/領域番号 |
21K19291
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研究種目 |
挑戦的研究(萌芽)
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
中区分45:個体レベルから集団レベルの生物学と人類学およびその関連分野
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
小薮 大輔 筑波大学, プレシジョン・メディスン開発研究センター, 准教授 (60712510)
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研究分担者 |
武智 正樹 順天堂大学, 医学部, 准教授 (10455355)
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研究期間 (年度) |
2021-07-09 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
6,370千円 (直接経費: 4,900千円、間接経費: 1,470千円)
2023年度: 2,210千円 (直接経費: 1,700千円、間接経費: 510千円)
2022年度: 3,120千円 (直接経費: 2,400千円、間接経費: 720千円)
2021年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
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キーワード | 出産 / 進化 / 骨盤 |
研究開始時の研究の概要 |
応募者はコウモリ類をモデルとして哺乳類における安産を可能にする形態学的基盤を明らかにし,本課題を端緒として「出産の進化形態学」を起創したい.これまでコウモリ類は翼やエコーロケーションの進化ばかりが注目され,コウモリ類の骨盤に関する研究は皆無に近い.四足動物の骨盤形態の規定因子は主に歩行様式と出産様式だが,体重支持機能を失ったコウモリ類のメスの骨盤はほぼ出産機能に特化していると想定でき,コウモリ類から安産を可能にする形態学的基盤(安産形質)を限りなく純粋な形で抽出できると期待される.
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研究実績の概要 |
アジア産コウモリ類について8 科28種のデータのCT撮影を行い,骨盤,骨盤筋群,靭帯,生殖器を含む腰帯形態の三次元画像化を行なった.さらに,アメリカ自然史博物館,ウィーン大,オーストラリア国立大,カリフォルニア大学ロサンゼルス校,ストーニーブルック大学の協力によりアジア地域外産の標本を撮像し,現生の科をほぼ網羅するCT画像データベースを構築した.これらを用い,コンピューター上で骨盤,筋,靭帯,生殖器を再構築し,種間比較と雌雄の性差比較を行ってコウモリ類のメスに共通する質的・量的・幾何的形質を抽出した.加えて,分娩時の骨盤近傍の靭帯・筋における遺伝子発現の解析を行うため,国内およびベトナムで周産期および非周産期のコウモリの捕獲を実施し,ヒナコウモリ,キクガシラコウモリ,オオコウモリを入手した.妊娠ステージの異なる妊娠個体を捕獲して安楽殺後,腰帯を剖出した.哺乳類では一般的に分娩にむけ出産直前に子宮頸管が軟化・拡張することが知られるが,靭帯伸長のスイッチイングと子宮頸管の軟化・拡張に関与する遺伝子発現動態を明らかにするため,RLN1 ,MMP,FIB5,LOXL1をリア ルタイムPCRに供し,非妊娠時~各妊娠ステージにかけてRLN1 ,MMP,FIB5,LOXL1の発現量がどの部位で変動するのか,定量的な動態解析を進めた.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
課題期間中,新型コロナウイルスの感染拡大継続により特に野外でのサンプル収集を進められない状況も続いたが,この間はCT撮像と三次元形態解析を中心に研究を進める事ができた.ようやく収集が再開できるようになった2022年は国内において重要な繁殖時期に捕獲を実施することができ,収集サンプルの状態もよく,支障なく遺伝学的解析を進めることができた.
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今後の研究の推進方策 |
国内における標本収集は順調に進んでおり,恐らく2023年度中には研究課題の達成に必要なキクガシラコウモリとヒナコウモリの標本の入手が済むと想定される.一方で,繁殖時期の特定が他群に比べ困難であること,新型コロナウイルスの感染拡大に伴い,ベトナムでの捕獲調査を複数回は行えなかったことにより,重要な対象群であるオオコウモリ類の妊娠個体標本は不足気味となっている.2023年度はベトナムも調査受け入れがコロナ禍以前に戻りつつあるため,できるだけ調査を実施し,オオコウモリ類の妊娠個体標本の収集に注力する.遺伝学的解析については若干マンパワーに不足があるが,実験補佐員を雇用し,効果的に実験を推進する.
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