研究課題/領域番号 |
21K19295
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研究種目 |
挑戦的研究(萌芽)
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
中区分45:個体レベルから集団レベルの生物学と人類学およびその関連分野
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研究機関 | 大阪公立大学 (2022) 名古屋大学 (2021) |
研究代表者 |
鈴木 孝幸 大阪公立大学, 大学院理学研究科, 教授 (40451629)
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研究期間 (年度) |
2021-07-09 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
6,500千円 (直接経費: 5,000千円、間接経費: 1,500千円)
2023年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2022年度: 2,600千円 (直接経費: 2,000千円、間接経費: 600千円)
2021年度: 2,600千円 (直接経費: 2,000千円、間接経費: 600千円)
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キーワード | ヘビ / 脊椎骨 / 進化 / パターン / 遺伝子発現 / 発生 / 初期胚 / 骨格 / 体軸 / 進化発生 |
研究開始時の研究の概要 |
ヘビは非常に多くの脊椎骨を持つなど、特異な形態的特徴を持つ。近年我々はシマヘビ胚において、体軸の後端に位置する中軸幹細胞の数が他の脊椎動物胚と比べて異常なほど多く、組織が肥厚している現象を発見した。中軸幹細胞は、初期胚の体軸の後端に存在する原腸から、細胞が腹側に陥入した部分に存在し、細胞が分裂を繰り返しながら体節の元となる中軸中胚葉の細胞を生み出す。そこで、本研究では、次世代シークエンサーを用いてシマヘビ胚の中軸幹細胞で特異的に発現が増加もしくは減少している遺伝子を同定し、その遺伝子の発現調節機構を明らかにすることにより、ヘビの体が長い謎を分子機構のレベルで明らかにすることを目指す。
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研究実績の概要 |
ヘビは手足の退化や非常に多くの脊椎骨を持つなど、他の脊椎動物とは異なる特異な形態的特徴を持つ。ヘビの細くて長いと言われる体の形は、胸腰椎の脊椎数が多いことに起因する。そこで本研究では、ヘビの体が長い謎を解明するために、発生期にヘビ特異的に脊椎骨の原器である体節が多く作られるメカニズムの解明を目指している。これまでに我々は日本固有種であるシマヘビの親個体から胚の採取を行い、これまで原腸陥入期から産卵直前までのシマヘビ胚の発生ステージ表を作成した。その中で、ヘビ胚の発生中では中軸幹細胞の数が異常に増大していることを発見した。そこで次に、この中軸幹細胞の分子生物学的特性を解明すること により、ヘビ特有の体軸の伸長を誘導する進化的に獲得された分子機構を解明したいと考えた。本研究を開始してからシマヘビ初期胚において体節が10-200個形成された胚の中軸幹細胞を単離し、そこからRNAを抽出した。比較対象として我々のこれまでの実験から明らかになっている、中軸幹細胞数が少ないスッポン胚、ニワトリ胚、マウス胚において 同様のステージの中軸幹細胞を単離した。初年度に全ての動物胚の中軸中胚葉の単離とRNAの採取を予定通り行うことが出来た。今年度にRNA-seq を行うためのライブラリーを作成し、4種の動物胚由来のサンプルのRNA-seqを行った。得られたデータからシマヘビでどのような特異的な遺伝子の発現が増加、もしくは減少しているのかをオントロジー解析により調べた。現在様々なパラメーターを改変させて遺伝子の比較解析を行っている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ヘビ特有の体軸の伸長を誘導する進化的に獲得された分子機構を解明するために、シマヘビ初期胚において体節が10-200個形成された胚の中軸幹細胞を単離し、 そこからRNAを抽出した。比較対象として我々のこれまでの実験から明らかになっている、中軸幹細胞数が少ないスッポン胚、ニワトリ胚、マウス胚において同様のステージの中軸幹細胞を単離した。初年度に全ての動物胚の中軸中胚葉の単離とRNAの採取を予定通り行うことが出来た。今年度にRNA-seq を行うためのライブラリーを作成し、4種の動物胚由来のサンプルのRNA-seqを行った。得られたデータからシマヘビでどのような特異的な遺伝子の発現が増加、もしくは減少しているのかをオントロジー解析により調べた。現在様々なパラメーターを改変させて遺伝子の比較解析を行っている。シマヘビの全ゲノム解析のデータから遺伝子領域を推定し、現在その遺伝子領域に対して正確にマッピングを行う作業を向上させる手法も同時に行なっている。4種類の生物種で同一遺伝子を抽出し、それに対する遺伝子発現量の比較ができるようにin silico解析の改善を行なっている。
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今後の研究の推進方策 |
今年度にRNA-seq を行うためのライブラリーを作成し、4種の動物胚由来のサンプルのRNA-seqを行った。得られたデータからシマヘビでどのような特異的な遺伝子の発現が増加、もしくは減少しているのかをオントロジー解析により調べた。この結果、現在のまでの解析でヘビ特異的にシグラル伝達経路が異常活性化、もしくはシグナル伝達経路が減少しているものは発見されていない。そこで次年度は個々の遺伝子レベルでどの遺伝子がヘビの中軸幹細胞で他の種と比べて発現量が増加、もしくは減少しているのかを調べる必要がある。現在様々なパラメーターを改変させて遺伝子の比較解析を行っている。このためにはシマヘビの全ゲノム解析のデータから遺伝子領域を推定する必要があり、複数の推定手法を用いて遺伝子領域の推定を行い、cDNAの情報を取得する。これによりマッピングの精度の向上を行う。得られたRNA-seqのリードカウントから種間で遺伝子の発現量の比較を行うために補正をするためのハウスキーピング遺伝子の探索を行う。GAPDHはステージが異なると発現量自体も変化することからすでに適切ではないないことが判明している。補正遺伝子を4種類の生物種で同一遺伝子として抽出し、それに対する遺伝子発現量の補正を行い、シマヘビの中軸幹細胞でのみ発現量が異なるものを探索する。
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