研究課題/領域番号 |
21K19318
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研究種目 |
挑戦的研究(萌芽)
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
中区分47:薬学およびその関連分野
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
南 雅文 北海道大学, 薬学研究院, 教授 (20243040)
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研究期間 (年度) |
2021-07-09 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
6,500千円 (直接経費: 5,000千円、間接経費: 1,500千円)
2023年度: 2,210千円 (直接経費: 1,700千円、間接経費: 510千円)
2022年度: 2,080千円 (直接経費: 1,600千円、間接経費: 480千円)
2021年度: 2,210千円 (直接経費: 1,700千円、間接経費: 510千円)
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キーワード | 行動薬理学 / ディープラーニング / 慢性痛 / 不安障害 / うつ病 / 薬物依存 / 行動嗜癖 / 行動薬理 / AI / インビボ神経活動計測 / 不安・抑うつ / 疼痛 |
研究開始時の研究の概要 |
行動薬理学は、精神疾患・疼痛研究において疾患メカニズムや治療薬作用機序の研究に中心的役割を果たしてきたが、動物の行動特性やヒトからの外挿により研究者が予め設定した限られた数の観察・評価項目によるため、重要な行動変化を見落としていた可能性も考えられ、より優れた行動評価系の開発が希求されている。本研究では、実験動物の行動画像情報とインビボ神経活動計測情報を、マルチモーダル学習を導入したディープラーニングにより、予断を排除して統合的に解析することで、精神疾患・疼痛などの、中核症状が主観的であるが故に評価系構築が十分ではなかった疾患研究領域にブレークスルーをもたらす新しい行動薬理学を創成する。
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研究実績の概要 |
本研究では、AI技術を駆使した最先端の画像解析により自由行動下の病態モデル動物から仮説フリーに行動情報の収集・解析を行うことで、これまで研究者が気づき得なかった評価項目を抽出しうる新しい行動薬理試験を構築する。さらに、近年進歩が著しい、蛍光イメージングを用いたインビボ神経活動計測と組み合わせることにより、行動情報と脳内神経活動の相関を明らかにすることで、精神変容・疼痛や薬物作用を鋭敏かつ詳細に解析できる新しい行動薬理学を創成する。世界保健機関(WHO)の国際疾病分類第11回改訂版(ICD-11)に、ゲーム障害(gaming disorder)の定義が収載されるなど、精神変容の中でもゲームやWEBに対する行動嗜癖が今後益々問題になっていくことが考えられるため、2021年度は行動嗜癖の神経機構解析や治療薬・治療法開発に役立つ新しい行動試験系を開発することを目指し、マウスが好んで行う輪回し行動に対する行動嗜癖形成について検討を行った。2022年度は、輪回し行動に対する行動嗜癖形成後のマウスに、新規物体、他個体マウス、エサを提示した際の行動について、対照群と比較解析を行った。輪回しに対する行動嗜癖形成後では、新規物体、他個体マウス、エサに対する接近行動が減少することを明らかにした。この結果は、健康や社会生活の障害となるにもかかわらず対象となる行動を止めることができないというヒトでの行動嗜癖を模倣していると考えられ、マウス輪回し行動が行動嗜癖のモデルとして有用であることを示唆している。また、蛍光イメージングを用いたインビボでのドパミン遊離計測により輪回し行動時の側坐核内ドパミン遊離を計測する実験系を立ち上げ、輪回し行動中に側坐核内ドパミン遊離が上昇することを明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
行動薬理学的解析については、マウスが好んで行う輪回し行動について、行動嗜癖形成後のマウスに、新規物体、他個体マウス、エサを提示した際の行動について、対照群と比較解析を行ったところ、輪回しに対する行動嗜癖形成後では、新規物体、他個体マウス、エサに対する接近行動が減少することを明らかにした。この結果は、健康や社会生活の障害となるにもかかわらず対象となる行動を止めることができないというヒトでの行動嗜癖を模倣していると考えられ、マウス輪回し行動が行動嗜癖のモデルとして有用であることを示唆している。また、報酬行動や依存に重要な役割を果たす側坐核内ドパミン遊離との関連を検討するため、蛍光イメージングを用いたインビボでのドパミン遊離計測により輪回し行動時の側坐核内ドパミン遊離を計測する実験系を立ち上げ、輪回し行動中に側坐核内ドパミン遊離が上昇することを明らかにした。一方で、輪回し行動が行動嗜癖のモデルとして有用であるか否かを検討する実験を優先したため、情報科学分野の研究者との連携によるAI技術を駆使した画像解析による仮説フリー行動解析システム構築については予定より遅れている。そのため、現在までの進捗状況を、「おおむね順調に進展している」とする。
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今後の研究の推進方策 |
これまでの研究により、マウス輪回し行動が行動嗜癖のモデルとして有用である可能性が示されたことから、2023年度は、輪回し行動に対する行動嗜癖形成後のマウスの行動を、例えば、輪回し装置を撤去した場合などの、様々なシチュエーション下で記録し、AI技術を駆使した画像解析により行動嗜癖を形成していないマウスとの行動の違いを明らかにすることで、行動嗜癖を評価するための行動試験系を確立する。また、行動解析と並行して、ドパミンをはじめとする脳内神経伝達物質の遊離を、先端的な蛍光イメージングを駆使したファイバーフォトメトリーを用いて高時間分解能で計測し、マウスの行動との相関関係を解析し、行動嗜癖の神経機構解明のための手がかりを得る。
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