研究課題
挑戦的研究(萌芽)
リン脂質に限らず新規生体分子の発見は、将来的に一つの研究分野の展開の“扇の要”となりうる。今回探索する脂質のヘッドグループをなす水溶性代謝産物はいずれも生理的に重要な機能分子で、その代謝動態異常は様々な疾患の病態にも関わっており、それらの研究に新しい視座を与えることが期待される。よって、本研究は様々な研究分野の体系や考え方の方向を転換する潜在性を有する挑戦的研究であると考えている。
リン脂質は細胞膜の構成など、水溶性物質では代替できない機能を発揮する分子群であり、親水性の頭部構造によって分類される。現在、約10種類の親水性頭部について研究が進んでいるが、生体には未知の脂質がまだ豊富に眠っていると考えられている。本研究でヘッドグループにアミノ酸派生体を有する新規リン脂質を同定することができた。そのノックダウンで細胞内新規脂質レベルが顕著に低下する合成酵素を探索し、見出した。この酵素のノックアウトマウスを得て、解析を進めつつあるが、これまでのところ、生後間もなく死亡する顕著な異常が認められている。
本研究の企図は、新種リン脂質の発見が幅広い生命科学分野で未解明な生命現象の理解を導く新しい切り口となり、研究のブレイクスルーをもたらす可能性にあった。本研究の成果は、新しい生体分子の発見であり、その神経系における重要な生理機能を示す知見が得られた。さらに、生成に関わる新規の酵素をさらに見出した。いくつかの新規脂質候補を見出しているが、学術的意義を明確にするにはインパクトのあるジャーナルで公表する必要がある。このために生理活性物質の化学合成が必須であり、現在進めている。新しい研究の糸口がつかめたので、医薬応用も見据えた基礎研究を今後さらに展開したい。
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すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (5件) (うち国際共著 2件、 査読あり 5件、 オープンアクセス 4件) 学会発表 (4件) 備考 (1件)
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