研究課題/領域番号 |
21K19343
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研究種目 |
挑戦的研究(萌芽)
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
中区分47:薬学およびその関連分野
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研究機関 | 名古屋市立大学 |
研究代表者 |
鈴木 良明 名古屋市立大学, 医薬学総合研究院(薬学), 講師 (80707555)
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研究期間 (年度) |
2021-07-09 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
6,370千円 (直接経費: 4,900千円、間接経費: 1,470千円)
2023年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
2022年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
2021年度: 2,990千円 (直接経費: 2,300千円、間接経費: 690千円)
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キーワード | カルシウムシグナリング / 血管平滑筋細胞 / 興奮転写連関 / 光遺伝学 / マクロファージ / 血管リモデリング / CaMKK2 / カルシウムシグナル / カルシウムマイクロドメイン |
研究開始時の研究の概要 |
ストレス負荷によるマクロファージ(MΦ)の動脈壁への集積と慢性炎症が、平滑筋細胞(SMC)の転換・増殖を誘発して血管リモデリングを引き起こす。この概念は炎症説と呼ばれ、MΦが上流因子、SMCが下流因子に位置付けられる。しかし、動脈が多様なストレスを感知してMΦを集積させる機構は不明である。これまでにSMCはストレスセンサーとして、MΦの集積と血管リモデリングに関わるという仮説に至った。本研究は、「SMCがMΦの下流因子」という既成概念を、「SMCはMΦの上流因子であり、血管リモデリングの発症と増悪に積極的に関与する」という新規概念へ転換させる。また、血管リモデリング疾患の新規治療法の創出を目指す。
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研究実績の概要 |
本研究では分子<オルガネラ<細胞<組織<個体の多階層検証により、血管平滑筋細胞(VSMC)を主軸とした代表者独自の血管リモデリング形成仮説を包括的に実証することを目指す。 これまでに、平滑筋特異的チャネロドプシン発現(SMC-ChR2-YFP)マウスを導入し、光遺伝学により生体内の血管平滑筋を特異的に刺激する系を確立した。光刺激により、細胞および組織レベルでL型電位依存性Ca2+チャネルが活性化し、細胞内Ca2+濃度が上昇した。さらに、持続的な光刺激により、ケモカインや接着分子などの炎症性遺伝子の発現が上昇することを見出した。この遺伝子誘導はL型電位依存性Ca2+チャネル阻害薬ニフェジピンの投与により抑制された。また、光刺激により、血管外膜へマクロファージが集積することも明らかになった。以上より、血管平滑筋細胞の持続的な脱分極は、興奮転写連関を介してケモカインや白血球接着分子などの炎症性遺伝子の発現を増大させて、血管炎症を引き起こすことが示唆された。 血管平滑筋細胞(VSMC)は種々の刺激に応じて部分的に脱分化し、増殖型VSMC(pVSMC)に変化する。pVSMCがCa2+シグナリングを介して増殖や遊走することで病変が成熟し、動脈硬化を基礎とする多様な疾患につながる。細胞膜-小胞体架橋分子ジャンクトフィリン(JP)-2が、Ca2+遊離活性化Ca2+(CRAC)チャネルを中心とするCa2+マイクロドメインを形成し、カルシニューリン・NFAT系を駆動することでVSMCの増殖に関与することを見出した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
光遺伝学を用いた平滑筋特異的刺激によるリモデリング誘導は、本研究で挑戦する主要な課題である。当該年度にはSMC-ChR2-YFPマウスと青色LEDを用いた光刺激により、血管組織内で興奮転写連関を誘導することに成功した。また、JP2がpVSMCにおいてCa2+マイクロドメインを形成して細胞増殖を促進することを明らかにした。
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今後の研究の推進方策 |
SMC-ChR2-YFPマウスに対してin vivo光刺激を与え、興奮転写連関がMΦの集積や血管平滑筋細胞の脱分化・増殖、血管リモデリングを誘発するか検証する。また、脱分極刺激から興奮転写連関に至る分子経路を同定する。 JP2がpVSMCの増殖に重要であることを見出した。現在、JP2-floxマウスの導入を計画している。このマウスと平滑筋特異的にCreを発現するマウスを交配し、平滑筋特異的JP2遺伝子欠損マウスを作出する。JP2のノックアウトにより、実際に血管リモデリング形成が減弱するか否か検証する。
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