研究課題/領域番号 |
21K19350
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研究種目 |
挑戦的研究(萌芽)
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
中区分48:生体の構造と機能およびその関連分野
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
岡村 康司 大阪大学, 大学院医学系研究科, 教授 (80201987)
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研究分担者 |
好岡 大輔 大阪大学, 大学院医学系研究科, 助教 (00883084)
大河内 善史 大阪大学, 大学院医学系研究科, 准教授 (90435818)
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研究期間 (年度) |
2021-07-09 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
6,370千円 (直接経費: 4,900千円、間接経費: 1,470千円)
2023年度: 2,340千円 (直接経費: 1,800千円、間接経費: 540千円)
2022年度: 2,210千円 (直接経費: 1,700千円、間接経費: 510千円)
2021年度: 1,820千円 (直接経費: 1,400千円、間接経費: 420千円)
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キーワード | イオンチャンネル / 一分子計測 / アンキリン / ホメオスタシス / ニューロン / 軸索 / エンドサイトーシス / イオンチャネル / 1分子計測 / 1分子計測 |
研究開始時の研究の概要 |
中枢神経系での電気的興奮と抑制のハブ構造である軸索初節Axon initial segment(AIS)は、錐体細胞などの中枢神経ニューロンでは抑制性ニューロンがAISに直接シナプスを形成し活動電位の発生を抑制する。生涯に亘り機能し続けるニューロンにおいてAISが調節される仕組み、特に成体での調節機構や疾患に繋がる仕組みは明らかでない。本研究では、Nav1.6-FLEXマウスを用いて、Dox依存的にCre-リコンビナーゼを介して蛍光タンパク質の種類を変化させ、新旧の分子を色で識別できるようにして単一ニューロンでAISのNav1.6が入れ替わる詳細な時空間様式をin vivoにおいて解明する。
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研究実績の概要 |
新潟大学で作製されたNav1.6-FLExマウスを用いて組み替えが確認できるか培養系とin vivoの両方で検証をおこなった。 (1)海馬ニューロンを培養し、AAV-creウィルスベクターの感染により遺伝子組み換えを誘導した結果、AISでのNav1.6の集積が経時的に、GFP融合タンパク質(組み換え前に発現していたタンパク質)がtdTomato融合タンパク質(組み換え後に発現したタンパク質)に変化することが確認できた。 (2)stereo taxicにAAV cre ウィルスベクターを海馬に注入し、灌流固定後切片を作成し蛍光顕微鏡観察を行ったところ、GFPからtdTomatoへの置き換わりが、AISにおいて確認できた。また網膜にもAAV creウィルスベクターを注入したところ、網膜神経節ニューロンのAISと視神経のnode of Ranvierの両方で、蛍光タンパク質の変換が確認できた。 以上から、本Nav1.6-FLExマウスが当初の計画通りに、組み換えが生じる系統になっていることを確認できた。 さらに、培養海馬ニューロンの系で、定量的解析を経時的に追跡しておこなった。まず共焦点蛍光顕微鏡を用いてGFPとtdTomatoの蛍光輝度の空間分布を定量的に解析し、組み換え前の古いNav1.6タンパク質がAIS遠位側で優先的に分解され、組み換え後の新たに合成されたNav1.6タンパク質はAIS近位側へ優先的に集積する可能性が示された。またAISでのGFPタンパク質からtdTomatoタンパク質への置き換わりは、AAV-cre感染後10日ほどでほぼ完全に生じることが示された。 Nav1.6-tdTomatoの分子特性の確認については、組み換えDNAの作製に難航してきた。全合成によるプラスミドの用意を行うとともに、ヒトNav1.6プラスミドをChahine博士から供与をうけて、positive controlの解析をおこないつつある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
Nav1.6-FLExマウスが当初の計画通り組み換えが誘導できる系統になっていることを確認でき、順調に実験が進んでいる。定位脳固定装置を導入したことで安定的に海馬での組み換えを誘導することが可能になったことから、さらに実験を繰り返すことで定量的解析が可能になると期待される。 Nav1.6-tdTomatoの融合分子が、内在性のNav1.6分子と、電気生理学的特性が同じであることを確認することは、本プロジェクトの前提となる要件であり、急務と考えている。当初recombinant DNAの作製が困難であったところ、全合成による発現実験が可能になった。human Nav1.5やhuman Nav1.6をpositive controlとしてHEK293細胞でパッチクランプ計測をおこなっている。
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今後の研究の推進方策 |
全合成によるNav1.6-tdTomatoのパッチクランプ解析による分子機能の解析は今後のマウスでの解析を軌道に乗せるための前提として重要であり、これまで以上にエフォートを割いて解析を行う予定である。ニューロンでの組み換えについては、海馬のAISが安定してAAV-creによる組み換えが誘導できるので、ageやニューロン活動依存的変化については、海馬のAISに着目して解析を進める。一方、AISとnodeとでの比較を行うには、網膜神経節細胞が形態学的には有利で海馬ニューロンは形態学的に困難であるが、眼球の硝子体へのAAV creウィルスの導入を行う通常の方法では、網膜神経節ニューロンへの感染まで数日程度もの遅延が生じるため、AISとnodeでタンパク質の入れ替わりの時間を比較することが困難であることが判明した。そこでTet-On, Tet-Offのシステムのマウスの掛け合わせを進め、ケミカルに遺伝子組み換え誘導をおこさせて、網膜神経節ニューロンなどでの解析を可能にする計画である。
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