研究課題
挑戦的研究(萌芽)
2種類のTCRをもつ「Dual-TCR T細胞」は、2種類の抗原に対する免疫応答(交叉反応)を示し、従来の免疫学の原則から逸脱する。生体内のDual-TCR T細胞の検出は容易ではないため、その意義については不明な点が多い。本研究では、独自に作製したレポーターマウスを用いて、Dual-TCR T細胞を検出・単離し、その生理的意義を解明することをめざす。本研究の成果により、T細胞による抗原認識の実態が明らかになり、ウイルス感染症やがんに対する新規の治療戦略が得られると期待される。
本研究では、2種類のTCRを同時に発現するT細胞「dual-TCR T細胞」の検出系の確立と生理的意義の解明を目的とした。TCRa遺伝子の定常領域に2Aペプチドを介してレポーター遺伝子を連結したマウスを作製し、dual-TCR T細胞を検出することに成功した。さらに、TCRa定常領域の細胞外部位にエピトープタグを挿入したマウスを作製し、2種類のTCRaを細胞表面に出す「ホロdual-TCR T細胞」と、片方のTCRaを細胞内にとどめる「ヘミdual-TCR T細胞」を検出する系を確立した。これらのマウスを用いて、dual-TCR T細胞の生体内分布や免疫応答における変化を明らかにした。
近年、二重特異性(bispecific)抗体やキメラ抗原受容体(CAR)を用いるがん免疫治療など、免疫系の抗原特異的作用を治療に応用する試みが注目を集めている。本研究の目標であるDual-TCR細胞の意義の解明は、T細胞の基礎的性状を理解するにとどまらず、2種類の抗原特異性を示すT細胞を医療に応用する可能性につながる。Dual-TCR T細胞は自己免疫疾患や移植片対宿主病(GVHD)に関与することが指摘されている。本研究で確立したモデル動物と、dual-TCR細胞に関する新知見は、それらの疾患に関するよりよい理解と新規の治療戦略に繋がると期待される。
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すべて 国際共同研究 (7件) 雑誌論文 (6件) (うち国際共著 3件、 査読あり 6件、 オープンアクセス 6件) 学会発表 (4件) (うち国際学会 1件、 招待講演 4件) 備考 (2件)
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