研究課題/領域番号 |
21K19391
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研究種目 |
挑戦的研究(萌芽)
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
中区分49:病理病態学、感染・免疫学およびその関連分野
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研究機関 | 国立研究開発法人理化学研究所 |
研究代表者 |
秋山 泰身 国立研究開発法人理化学研究所, 生命医科学研究センター, チームリーダー (50327665)
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研究期間 (年度) |
2021-07-09 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
6,500千円 (直接経費: 5,000千円、間接経費: 1,500千円)
2023年度: 1,950千円 (直接経費: 1,500千円、間接経費: 450千円)
2022年度: 2,990千円 (直接経費: 2,300千円、間接経費: 690千円)
2021年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
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キーワード | 自己免疫 / 胸腺 / 樹状細胞 / 腸管 / 免疫寛容 / アレルギー / 細胞移動 |
研究開始時の研究の概要 |
通常、食物や常在細菌などの無害な抗原に対し、免疫系は応答しない(免疫寛容)。この機構が破綻すると、食物アレルギーや炎症性疾患の原因になると考えられており、その治療法や予防法の開発は急務の課題である。本研究は、無害な外来抗原を取り込んだ樹状細胞がリンパ組織胸腺に移動して免疫寛容に機能すること、さらにその破綻は炎症性疾患の原因になり得るとの概念創出に挑む。本課題の成果に基づき、胸腺移動性の樹状細胞を利用して、任意の抗原に対する免疫寛容を誘導することが可能となり、アレルギーなどの疾患を抑制する、新たな治療法の開発が期待できる。
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研究実績の概要 |
本研究は、胸腺外の様々な組織に局在する樹状細胞(cDC2)は、各組織で自己抗原や無害な外来抗原を定常的に貪食して胸腺に移動し、胸腺内でT細胞に抗原提示することで、食物や常在細菌などの無害な抗原に対する免疫寛容を誘導するとの仮説を検証することを目的としている。本年度は、胸腺内のcDC2が、どの組織から流入するのか検討するため光変換可能な蛍光タンパク質(カエデタンパク質)を用い、腸管あるいは皮膚に照射した後、光変換されたcDC2の移動を検証した。皮膚の照射後、近接したリンパ節にはcDC2が移動していたが、胸腺への移動は極めて効率が悪いことが判明した。一方、腸管に照射した場合には、胸腺へ移動したcDC2の検出が認められなかった。また昨年度実施した胸腺内樹状細胞(cDC)のシングルセル遺伝子発現解析とシングルセルATAC解析データに加えて、他のグループで取得されていた、腸管粘膜固有層のcDCのシングルセル遺伝子発現データを統合し、胸腺と腸管で共通して存在するcDC2サブセットと、そのサブセットで特異的に発現する遺伝子を決定した。また当該cDC2のサブセットで特異的に発現する遺伝子の中で、その遺伝子産物が細胞表面に発現する因子を選び、細胞表面マーカー候補とした。一部の細胞表面マーカーの発現は、胸腺樹状細胞の一部で確認できた。これらの結果は、胸腺内cDC2は複数のサブセットに分かれ、その中には腸管と胸腺で共通したcDC2が存在することを示唆している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
胸腺内に存在するcDC2の細胞表面マーカーの特定など、その遺伝子発現特性の解析については順調に進んでいる。一方、末梢組織での樹状細胞の存在比率の低さや開腹したマウスへの照射時間の制限により、カエデタンパク質を発現する遺伝子組換えマウスによる樹状細胞移動の実験条件検討に予想以上の時間を要し、解析に遅れを生じている。
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今後の研究の推進方策 |
現在使用している、光変換蛍光タンパク質を全身で発現するカエデマウスから、樹状細胞で特異的に光変換蛍光タンパク質を発現するマウスに変更することで、バックグラウンドの低減を試み、胸腺に移動した樹状細胞の検出を目指す。またカエデマウスによる検出が困難であるとの結論に至った場合は、末梢組織よりcDC2を回収して、他のマウスへ移入する実験により、cDC2の移動能を検討する。さらに腸管から樹状細胞への抗原取り込みを利用した、腸管樹状細胞のラベルとその移動の検証を行う。
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