研究課題
挑戦的研究(萌芽)
胃がん、肺がんなどの固形腫瘍の治療では、これまでに標準治療と呼ばれてきた手術療法、化学療法、放射線療法の3つに加えて新たに免疫治療が認められた。免疫治療では免疫チェックポイント阻害薬を中心に化学療法を組み合わせるなどの方法が現在行われており、相当の効果を見る場合もあることが確認されている。免疫療法ではがんを退縮に追い込むエフェクター細胞に加え、樹状細胞やNK細胞などの一連の細胞集団が腫瘍塊に多く入り込み、そこで長く生存することが必要である。そのためには腫瘍局所の低酸素、低グルコース、低pHを改善してやることが必要である。メトホルミンと間歇的な絶食法がこれを可能にできるかもしれない。
癌患者が間歇的な絶食(ファスティング)を行うことで腫瘍が縮小する場合があることが報告されている。我々は、ファスティングとメトホルミンの併用が強力な抗腫瘍効果を発揮する可能性を新たに見出した。本研究では、その分子機構の一端を明らかにすることができた。メトホルミンとファスティング併用時に観察される優れた抗腫瘍効果は、腫瘍血管内皮細胞の解糖系抑制に伴う正常化、さらに血管正常化に伴う腫瘍微小環境の酸素化(HIF1α発現の減少)による腫瘍浸潤CD8T細胞(CD8TIL)の流入増加とインターフェロンγ産生の亢進、Foxp3+細胞数の減少がその主な原因である事が考えられた。
癌患者が間歇的絶食を行うことで腫瘍が縮小する場合があることが報告されている。癌細胞にグルコースをはじめとする栄養素を与えないとする兵糧攻めがそのメカニズムの一つだと考えられている。我々の今回の研究は、絶食にメトホルミン投与を併用することで、より強力な抗腫瘍効果を発揮する可能性を新たに見出した。その分子機構の一端として、腫瘍血管内皮細胞の正常化、それに伴う腫瘍微小環境の酸素化、さらには免疫CD8T細胞の腫瘍への流入増加とインターフェロンγ産生の亢進、制御性T細胞の減少が主な原因である事が示された。間歇的絶食による抗腫瘍効果メカニズムの理解を助けるに資するエビデンスを得ることができた。
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すべて 雑誌論文 (6件) (うち査読あり 6件、 オープンアクセス 6件) 学会発表 (4件) (うち招待講演 4件)
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