研究課題/領域番号 |
21K19409
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研究種目 |
挑戦的研究(萌芽)
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
中区分50:腫瘍学およびその関連分野
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研究機関 | 岡山大学 |
研究代表者 |
鵜殿 平一郎 岡山大学, 医歯薬学域, 教授 (50260659)
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研究分担者 |
工藤 生 岡山大学, 医歯薬学域, 助教 (40830378)
西田 充香子 岡山大学, 医歯薬学域, 助教 (60844644)
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研究期間 (年度) |
2021-07-09 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
6,500千円 (直接経費: 5,000千円、間接経費: 1,500千円)
2023年度: 2,210千円 (直接経費: 1,700千円、間接経費: 510千円)
2022年度: 2,210千円 (直接経費: 1,700千円、間接経費: 510千円)
2021年度: 2,080千円 (直接経費: 1,600千円、間接経費: 480千円)
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キーワード | 腫瘍血管 / 代謝 / 一酸化窒素 / 腫瘍浸潤CD8T細胞 / インターフェロンγ / 低酸素 / 腫瘍浸潤T細胞 |
研究開始時の研究の概要 |
胃がん、肺がんなどの固形腫瘍の治療では、これまでに標準治療と呼ばれてきた手術療法、化学療法、放射線療法の3つに加えて新たに免疫治療が認められた。免疫治療では免疫チェックポイント阻害薬を中心に化学療法を組み合わせるなどの方法が現在行われており、相当の効果を見る場合もあることが確認されている。免疫療法ではがんを退縮に追い込むエフェクター細胞に加え、樹状細胞やNK細胞などの一連の細胞集団が腫瘍塊に多く入り込み、そこで長く生存することが必要である。そのためには腫瘍局所の低酸素、低グルコース、低pHを改善してやることが必要である。メトホルミンと間歇的な絶食法がこれを可能にできるかもしれない。
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研究実績の概要 |
本年度は腫瘍組織の免疫組織化学染色解析に注力した。具体的にはMeth A腫瘍の同系マウスへの移植後、7日目にメトホルミン投与開始及び36時間の絶食を行なった。10日目に固形腫瘍を回収し、腫瘍切片を作成してCD8, Foxp3に対する抗体を用いて染色、定量した。その結果、メトホルミン投与と絶食の併用はメトホルミン単独ないし絶食単独に比較して腫瘍浸潤CD8T細胞(CD8TIL)の数が増加していた。一方、Foxp3+細胞数はメトホルミン単独群で有意に減少したが、メトホルミンと絶食の併用群では減少幅が小さくなった。しかし、CD8TIL/Foxp3の比率で見るとメトホルミンと絶食の併用群で最も大きな値となった。次にHIF1αに対する抗体を用いて染色を行なった。その結果、メトホルミン単独ないし絶食単独群においてHIF1αの発現レベルは低下したが、メトホルミンと絶食の併用群で最も大きく減少することが判明した。この結果は、腫瘍組織の低酸素状態が改善されていることを示唆していると考えられた。低酸素状態の改善は腫瘍血管の正常化によってもたらされる可能性を視野に、血管内皮細胞とペリサイトの発現と共局在の定量を行なった。その結果、血管内皮細胞(CD31+)の数はやや減少傾向にあるものの、メトホルミンと絶食の併用により血管内皮細胞(CD31+)と ペリサイト(NG2+)の共局在比率が上昇することが明らかになった。即ち、構造的に腫瘍血管が正常化している可能性が示唆された。 また、腫瘍全体の遺伝子発現をqPCR法を用いて解析した。その結果、メトホルミンと絶食の併用群において、CD8α, Gzmb, IFNγ,CXCR3, CXCL10, Tbx21の発現上昇を見る一方で、IL-1b,IL-6の発現低下が観察された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究の進捗は概ね順調にきている。メトホルミンと絶食併用による腫瘍浸潤CD8T細胞の機能、増殖能は全てcharacterizeすることができた。また、腫瘍血管内皮細胞の分離、及びそのフローサイトメーターによる解析を自在にできるようになったことは大きな進捗であった。これにより血管内皮細胞の一酸化窒素産性能と代謝との関係性、腫瘍浸潤CD8T細胞の出すIFNγとの関係性を明らかにすることができた。本年度は、これらの内容に加えて腫瘍組織の免疫組織化学染色に取り組み、CD8TIL, Foxp3, HIF1α, CD31, NG2等を染色、定量することに成功し、とりわけ腫瘍血管の性状に関して解析できることが確認された点が大きな進捗があったと考えられる。本研究期間2年目の進捗としては特に問題ないと思われる。
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今後の研究の推進方策 |
腫瘍血管の解析:腫瘍血管の正常化をさらに解析するために、70kDaデキストランFITCを静脈内投与後の腫瘍血管外漏出を定量することにより腫瘍血管の正常化を判定する。メトホルミンと絶食併用時にも血管内皮細胞に代謝改変が起きている可能性がある。これを明らかにするために血管内皮細胞を回収し、グルコースアナログである2-NBDGの取り込み実験を行い、フローサイトメトリー解析にて解糖能の変化を定量する。また、固形腫瘍からCD31+細胞をFACS sorting にて回収しRNAseqにより解析する。さらに腫瘍組織の低酸素状態を観察するためにピモニダゾールを担がんマウスに投与し、各治療群における酸素化の有無を観察する。 腫瘍細胞の解析:腫瘍細胞の細胞死と増殖能、代謝状態に関する解析をおこなう。mTORC1活性化に加え、活性型カスパーゼ3、カルレチクリン、ミトコンドリア膜電位、PGC1alphaと活性酸素、リン酸化GSK3beta、ホスファターゼPP2Aの発現等をフローサイトメーターを用いて行い、immunogenic cell death(ICD)の有無を明らかにする。
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