研究課題/領域番号 |
21K19412
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研究種目 |
挑戦的研究(萌芽)
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
中区分50:腫瘍学およびその関連分野
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研究機関 | 長崎大学 |
研究代表者 |
山本 一男 長崎大学, 医歯薬学総合研究科(医学系), 准教授 (70255123)
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研究分担者 |
三馬 聡 長崎大学, 病院(医学系), 講師 (30437892)
宮田 康好 長崎大学, 医歯薬学総合研究科(医学系), 准教授 (60380888)
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研究期間 (年度) |
2021-07-09 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
6,500千円 (直接経費: 5,000千円、間接経費: 1,500千円)
2022年度: 3,250千円 (直接経費: 2,500千円、間接経費: 750千円)
2021年度: 3,250千円 (直接経費: 2,500千円、間接経費: 750千円)
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キーワード | 細胞サイズ / がん / 代謝 |
研究開始時の研究の概要 |
細胞サイズ調節遺伝子Largenの発現が肝癌と腎癌において真逆の方向に働くことに着目し、肝臓および腎臓でLargenを過剰発現するトランスジェニックマウスを準備し、それらから摘出した両組織の代謝を解析する。また、研究分担者により発癌モデルマウスとヒト病理検体におけるLargenの発現と病態との相関解析も進める。このようにして、Largenの作用の違いから両組織の代謝回路の根源的な違いをあぶり出し、癌における代謝の役割の理解を深める。
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研究実績の概要 |
細胞サイズ制御因子Largenは、細胞の「大きさ」の調節に関わる遺伝子を同定するためのスクリーニングを経て本研究代表者が同定したものである。これまでの研究により、肝臓ではがんの発生と進展に対して抑制的に、腎臓においてはがんの悪性度と予後不良との相関が見られるなど、見かけ上全く異なる効果を示すことが分かっている。そこで、各組織におけるLargenの発現と代謝への関わりを解析することで肝がんと腎がんの性質を見極め、その治療や予防への活路を見いだせるのではないかと考えた。Largenの発現を抑制したマウスの肝臓から肝細胞を回収し、細胞外フラックスアナライザーを用いてミトコンドリアの呼吸機能を解析したところ、コントロールの野生型から調製した肝細胞に比べてミトコンドリアの活性が上昇していた。一方で、Largenの発現を誘導した細胞においてはミトコンドリアの活性は抑制される傾向が見られ、実際に細胞内ATP濃度も低下していることが確認された。この細胞は野生型の細胞に比べて増殖速度も遅いことが分かった。以上の結果から、Largenの発現によりミトコンドリアの機能が調節され肝細胞の増殖に影響を与えることが示された。 腎臓における解析については、腎臓の近位尿細管特異的にLargenを過剰発現するマウスにおいて腎臓サイズが大きくなる傾向があることが示された。逆にLargenの発現を抑制すると腎臓サイズが小さくなることも認められた。このことは、腎臓における近位尿細管の存在の大きさを示しており、その調節にLargenが重要な役割を果たしていることを示唆する。多くの腎がんが近位尿細管に由来して発生することから勘案すれば、Largenを介してその制御機構を解明することは非常に重要であると考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
細胞外フラックスアナライザーによるミトコンドリア機能の測定は、組織から回収した初代肝細胞を用いる場合については試行錯誤を重ねて時間を要したが無事に軌道に乗せることができた。培養細胞を用いた実験も並行して進めたことにより、初代肝細胞を用いた実験結果を相補する成果も得られるようになった。腎臓における解析については、当初の計画で編成した研究組織から担当予定であった共同研究者が退職する事態に陥ったため、組織の改編と計画の割り振りをやり直す必要に見舞われた。現在では近位尿細管特異的にLargenの発現を調整できる系を樹立しているので、当初の予定より進行が遅れることとなりながらも先行する肝臓に続き腎臓についても鋭意研究を進めており、研究計画の遂行を目指している。
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今後の研究の推進方策 |
当初計画における研究組織から共同研究者が退職する事態が生じ、組織の改編と計画の割り振りをやり直す必要に見舞われたため、研究期間を延長することにした。これにより、腎臓におけるLargenの役割をさらに掘り下げることが可能になり、研究計画に沿った解析を進められると期待される。今後は、本研究課題において樹立した近位尿細管特異的にLargenの発現の調整をする系を用いて腎機能への影響を見る必要もあると考えられる。また、腎組織全体から近位尿細管のみを取り出して解析することは困難であるため、組織標本を標的とした空間オミックスのような解析が有効になるかもしれない。この方向性にはまた新たな試行錯誤を要するリスクを孕む一方、細胞死やDNA損傷を解析するなど既存の組織科学的手法による解析との相関も得られやすいため、複合的かつ統合的なデータの蓄積につながると考えられる。以上のような解析技法を確立し、本研究計画独自のマウス実験系によるin vivoで得られた成果と、培養細胞を用いたin vitro実験による知見を照らし合わせながら計画を推進していきたい。
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