研究課題/領域番号 |
21K19467
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研究種目 |
挑戦的研究(萌芽)
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
中区分52:内科学一般およびその関連分野
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研究機関 | 地方独立行政法人大阪府立病院機構大阪母子医療センター(研究所) |
研究代表者 |
松尾 勲 地方独立行政法人大阪府立病院機構大阪母子医療センター(研究所), 病因病態部門, 部長 (10264285)
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研究期間 (年度) |
2021-07-09 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2021年度)
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配分額 *注記 |
6,370千円 (直接経費: 4,900千円、間接経費: 1,470千円)
2023年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
2022年度: 2,210千円 (直接経費: 1,700千円、間接経費: 510千円)
2021年度: 2,470千円 (直接経費: 1,900千円、間接経費: 570千円)
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キーワード | マウス / 子宮平滑筋収縮 / 着床 / 胚発生 / 周産期疾患 / 発生 / 不育症 |
研究開始時の研究の概要 |
生殖補助医療は、様々な技術の進歩によって広く日本社会で普及しているが、妊娠成功率は依然として低く、改善の余地がある。その要因として子宮への着床率が低い点があげられる。また、妊娠女性の5%が不育症になっているが、その原因は、完全には解明されていない。申請者等は、妊娠中は着床を維持するために抑制されていると考えられてきた子宮筋収縮が、マウスの妊娠初期に、出産時期と同程度の強さで起こっていること、この収縮を減弱させると胚の前後軸形成に異常を示すことを明らかにしてきた。そこで、本課題では妊娠初期の子宮筋収縮がどのような機構で発来するのか、更に、胚の着床不全やその他の発生異常にも関与しているか検討する。
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研究実績の概要 |
現在までの当研究室等による研究から、子宮平滑筋によって生まれる圧力が、胚の正常発生(近遠方向への伸長)と着床維持に必要であることを明らかにしてきた。まず、子宮筋収縮による圧力について子宮軸の方向性や場所によって圧力差があるかどうかについて検討することとした。まず、子宮内で生じる圧力に異方性があるかどうか検討した。具体的には、マイクロトランスデューサーを持つカテーテルを子宮軸に対して一定の方向性をもって子宮内に差し込んで、圧力計測を行った。その結果、子宮筋から胚側にかかる圧力は、子宮間膜・反子宮間膜軸方向と卵管・頸部軸方向との間で有意差はみられなかった。また、同一個体の中で、子宮頸部と卵管側での圧力も大きな差が見られなかった。つまり、子宮平滑筋はの収縮によって生じる圧力は等方的であった。その結果、胚が子宮間膜・反子宮間膜(胚の近遠)軸方向に細長く伸長する際に子宮筋から胚にかかる圧力が偏っているという可能性は、ほぼ排除されたと言える。また、着床した胚は、ライヘルト膜と呼ばれる基底膜に覆われることで、生じた子宮筋収縮による圧力から緩衝されて、着床が維持されることを明らかにしている。しかし、胚の近位(子宮の子宮間膜)側の方向にはライヘルト膜は存在していないにも関わらず、胚は、近位方向から子宮筋からの圧力で押しつぶされることがない。その理由として緩衝作用を持つ別な組織(外胎盤錐等)が、ライヘルト膜の代わりの機能を果たしていることが想定される。そこで、免疫組織染色法を用いてライヘルト膜の主要成分である細胞外マトリクス分子の発現を解析した。結果、ラミニンα1分子の発現が、胚の近位側の外胎盤錐とその周辺で、強く認められた。以上の結果から外胎盤錐周辺のラミニンが、ライヘルト膜と同等な機能(圧力に対する緩衝作用)を担うことで、着床が維持されている可能性を強く支持している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
現在までに、子宮筋収縮によって生じる圧力の等方性とライヘルト膜が存在しない方向からのある力の緩衝機構について解析することによって、子宮筋収縮機構と着床維持に関わるメカニズムの一端を明らかにすることができた。現在までに得られた研究成果の一部が、国際誌に公表された。
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今後の研究の推進方策 |
今後、子宮筋収縮によって生じる圧力が、どのように胚の着床維持(正常な胚発生)に関与しているのかより詳細に解析を進める。具体的には、子宮平滑筋収縮によって生じる圧力について、着床直後だけでなく、より発生後期においてもどの程度観察されるのか、またメスマウスの週齢による影響を受けるのかについても検討を進める。さらに脱落膜の形態と圧力との間に関連性があるかについても、解析を行う。以上の解析等から、子宮筋収縮機構の解明とその破綻による着床への影響を明らかにしたい。
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