研究課題
挑戦的研究(萌芽)
本研究では腎糸球体ポドサイトにおける微小管の制御と微小管束形成の分子機構、微小管束の構造と細胞機能を解明するとともに、スリット膜分子の構成性分泌やグルタミン酸分泌による細胞間シグナル伝達など、微小管依存性の機構を解明する。さらに、微小管束に特異的に結合する分子群を網羅的探索・解析することにより、ポドサイトの分化、構造と機能の維持に必要な分子を同定する。ポドサイトの分化と生理機能の分子基盤を構築するとともに、慢性腎臓病(CDK)におけるポドサイトの萎縮、脱落の分子病態の解明や、CDKの新規の診断、治療につながる新規ターゲット分子の発見をめざす。
ダイナミン1による微小管の束化がポドサイトの一次突起形成に寄与することを見出した。ダイナミンのPHドメインに存在する微小管との結合部位を特定するとともに、微小管周囲にダイナミンがらせん状に重合した超複合体の立体構造を決定した。さらに、ダイナミン2によるアクチン制御機構を明らかにした。ポドサイトを分化させるとアクチン再編により細胞が伸展するが、その際、ダイナミン2に富む液滴が形成された。液滴はアクチン線維安定化により減少し、線維束崩壊により増加した。慢性腎臓病マウスの変性ポドサイトにも液滴が出現した。以上より、ダイナミン2の液滴はアクチン線維束の制御に関わることが強く示唆された。
ポドサイトは腎臓のろ過フィルターとして働く細胞であり、変性により慢性腎臓病(CKD)をきたす。ポドサイトがフィルターとして機能するためには、細胞骨格が正常に制御され、特異的形態が維持されなければならないが、その機構は不明であった。本研究ではダイナミン1が微小管束化によりポドサイトの一次突起形成を支持し、ダイナミン2がアクチン細胞骨格の再編を担うことを明らかにした。近年CKD患者は急増しており国内で1300万人を超える国民病であるが、腎移植以外の根治療法が存在せず、末期CKDでは人工透析が必要となる。本研究成果はCKD克服につながる分子基盤の一端を明らかにした点で、学術的、社会的意義がある。
すべて 2022 2021 その他
すべて 国際共同研究 (3件) 雑誌論文 (5件) (うち国際共著 2件、 査読あり 5件、 オープンアクセス 5件) 学会発表 (8件)
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