研究課題
挑戦的研究(萌芽)
骨髄異形成症候群(MDS)は、造血幹細胞より発生する予後不良ながんである。MDSにおいて、トリソミー8などの数的染色体異常は、その予後と密接に関連しており、診断・治療法選択のための重要な判断基準でもある。しかし、その病態基盤は8番染色体上の責任領域・遺伝子を含めて、MDS細胞のゲノム変異・遺伝子発現変動のみの解析では、MDS幹細胞の不均一性もあり明白ではなかった。代表研究者は、人工染色体技術によりヒト8番染色体をマウスES細胞に新たに導入し、+8キメラマウスの作製に成功した。この世界にも類を見ないトリソミー8生体モデルを用いて、トリソミー8による造血幹細胞制御とMDS発症の機序を解明する。
骨髄異形成症候群(MDS)は、造血幹細胞より発生して造血不全となり、一部が急性骨髄性白血病に移行する高齢者に好発する予後不良ながんである。数的染色体異常が、MDS発症に関与することは古くから知られていたが、その病態基盤は不明のままである。本研究では、世界にも類を見ないトリソミー8キメラマウスを作成して、クロマチン制御破綻の観点から、MDS発症の病態基盤を解析した。トリソミー8幹細胞の自己複製能は野生型と比較して低下しており、その分化能は障害されたが、MDS発症に十分ではなかった。RUNX1遺伝子の変異を導入することで、トリソミー8との協調によるMDS発症が確認できた。
トリソミー8に限らず、ダウン症を含めたトリソミーによって、年齢依存的にMDSや急性白血病が発症するが、余剰染色体の遺伝子発現だけから、がん化と白血病幹細胞発生の機序や、MDSで観察される全身性炎症の原因は説明できていない。本研究において、トリソミー8造血幹細胞のオミックス解析を実施したところ、トリソミー以外の染色体上の遺伝子発現異常、炎症応答の亢進やクロマチン構造制御の異常が確認できた。今後の解析によって、MDSの病態基盤の理解が進むとともに、新たな標的治療法の開発への進展が期待できる。
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すべて 国際共同研究 (2件) 雑誌論文 (4件) (うち国際共著 4件、 査読あり 4件、 オープンアクセス 3件) 学会発表 (3件) (うち招待講演 2件)
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