研究課題
挑戦的研究(萌芽)
晩婚化や初産の高齢化により、生殖補助医療(ART)を選択する患者数は、年々増加傾向にある。しかし、その成功率は改善の余地があり、着床不全の課題がクローズアップされている。我々が独自に樹立に成功したヒト胎盤幹(TS)細胞は、免疫不全マウスに移植すると、着床時にみられる細胞が出現する。そのため、TS細胞は、着床の分子メカニズムの解明だけでなく、着床不全に対する細胞治療として、有用な細胞と期待できる。本研究では、ヒト胚着床オルガノイドモデルを作製し、着床期の分子機構について理解を深めると共に、着床率向上に向けた世界初の細胞療法の有効性について検討する。
ART不成功例の主要因は着床不全が指摘されている。現状では有効な治療法は存在していない。本研究では、ヒト胎盤幹(TS)細胞の着床不全に対する有効性を、in vitroにて検証するため、ヒト胚盤胞様構造物(ブラストイド)と子宮内膜細胞の共存した胚着床オルガノイドモデルを作製し、このモデルを基に、ヒトTS細胞の付加による着床率の向上(1.8倍)を明らかにした。
近年、ES細胞に対して自己組織化を促すことで、原腸形成や三胚葉分化などの胚発生過程を模倣するモデルが報告されている。しかしながら、これらのモデルには胎盤系譜の細胞群が欠落しているため、着床後の発生における胎盤発生のモデルにはならない。本研究の最大の特色は、独自に開発したヒトTS細胞の培養技術と遺伝子情報を活用し、世界初の胚着床オルガノイドモデルを作製する点である。またヒトTS細胞は、着床不全に対する革新的な細胞療法として新規性が高く、その期待度も高い。またこのTS療法は、妊娠成功率の飛躍的な向上を図るための先進医療として、少子化対策に貢献するイノベーションになると期待できる。
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