研究課題
挑戦的研究(萌芽)
皮膚などの一般的な上皮組織では、上皮と間葉を隔てる基底膜側に基底側が形成されることから、基底膜が基底側を決定している可能性が考えられるが、歯原性上皮細胞においては、基底膜消失後、頂端側が基底膜側に形成されるという逆転現象が認められる。この結果は、基底膜が消えるという刺激が頂底極性決定に寄与している可能性を示す。本研究では、歯をモデルとした頂底極性決定機構の解析を通して、上皮細胞の極性化機構の解明および極性化因子の同定を図る。
歯は上皮-間葉相互作用により形態形成が行われる器官であり、器官の形態形成機構を解析する上で、重要なツールであると考えられる。歯原性上皮細胞はエナメル芽細胞へ分化する過程で、その形態を大きく変化させる細胞であり、細胞の形態変化が分化に影響を与えている可能性が考えられる。これまでの研究で、歯原性上皮細胞の極性決定に重要と思われる候補因子の同定に成功した。本年度は昨年度に引き続き、候補因子による極性決定機構の解明を目指し、研究を行った。CRISPR/Cas9システムを用いて候補遺伝子欠損細胞株を作成し、3次元培養を行ったところ、極性の乱れが生じ、細胞形態が丸みを帯びた細胞へと変化した。一方、極性化因子として知られるZo-1遺伝子欠損細胞株を用いて、本因子の局在を検討したところ、従来は細胞膜へ局在するが、Zo-1遺伝子欠損により極性に乱れが生じている状態では、本因子は核内へと移行していた。以上の結果から、本因子は核内移行シグナルを有している可能性が考えられる。そこで、本因子の様々な部位を欠失させた遺伝子コンストラクトを作製し、検討を行った。その結果、いくつかの核内移行シグナルの同定に成功した。以上の結果から、本因子は、細胞膜において細胞極性の制御に関与しているのみではなく、核内に移行することで、遺伝子制御を介した細胞形態制御を行っている可能性が示唆された。本研究成果は、これまで明らかにされていなかった、細胞極性における制御機構の解明の一助になると考えられる。
2: おおむね順調に進展している
本年度は主に、極性化制御因子の同定に成功した。さらにいくつかの機能解析を行った。
これまでに作製した、遺伝子欠損細胞株、候補遺伝子可視化細胞株を用いて、さらなる機能解析をすすめる。また、候補因子の核内での遺伝子制御機構の解明を目指す。
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すべて 雑誌論文 (12件) (うち国際共著 7件、 査読あり 12件、 オープンアクセス 11件) 学会発表 (20件) (うち国際学会 5件、 招待講演 3件)
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