研究課題/領域番号 |
21K19614
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研究種目 |
挑戦的研究(萌芽)
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
中区分57:口腔科学およびその関連分野
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研究機関 | 昭和大学 |
研究代表者 |
井上 富雄 昭和大学, 歯学部, 教授 (70184760)
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研究分担者 |
中村 史朗 昭和大学, 歯学部, 准教授 (60384187)
中山 希世美 昭和大学, 歯学部, 講師 (00433798)
望月 文子 昭和大学, 歯学部, 講師 (10453648)
壇辻 昌典 昭和大学, 歯学部, 助教 (60826634)
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研究期間 (年度) |
2021-07-09 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
6,370千円 (直接経費: 4,900千円、間接経費: 1,470千円)
2022年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2021年度: 4,940千円 (直接経費: 3,800千円、間接経費: 1,140千円)
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キーワード | 唾液分泌 / Phox2b遺伝子 / 上唾液核 / 咀嚼 / チャネルロドプシン / ケージドグルタミン酸 |
研究開始時の研究の概要 |
唾液の分泌低下で口腔乾燥が起こると、栄養摂取の減少や誤嚥性肺炎のリスクが高まる。唾液は咀嚼時に最も多く分泌され、このメカニズムを利用すれば唾液分泌低下を治療できる可能性があるが、唾液分泌の中枢神経メカニズムは、ほとんど分かっていない。申請者の先行研究で、自律神経中枢の発生に関わる転写調節因子のPhox2b遺伝子が、咀嚼に伴う唾液分泌に関わる可能性が分かった。そこで光遺伝学を応用して咀嚼に伴って唾液を分泌させる中枢ニューロンを同定し、同ニューロンの活動特性と遺伝子発現様式を調べる。本研究で唾液分泌の中枢神経メカニズムの解析が初めて進み、口腔乾燥症の治療薬の開発につながる可能性が期待される。
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研究実績の概要 |
2021年度に続いて、Phox2b陽性ニューロンに光感受性タンパク質のChRFR(光照射で活性化しニューロンを興奮させる)が発現する遺伝子改変ラットの脳幹スライス標本を用い、Phox2b陽性ニューロンが顎下腺あるいは舌下腺を支配する副交感神経の節前ニューロンである上唾液核ニューロンを興奮させるかどうかを調べた。あらかじめ上唾液核ニューロンの軸索が走行する舌神経に蛍光標識物質のテトラメチルローダミンを注入して上唾液核ニューロンを標識した。矢状断の脳幹スライス標本を作製し、標識された上唾液核ニューロンからパッチクランプ記録を行った。2021年度の実験で明らかになった延髄小細胞性網様体の部位に光照射を行い、上唾液核ニューロンに興奮性のシナプス応答が誘発されることを確認した。以上の結果から、上唾液核背側の延髄小細胞性網様体Phox2b陽性ニューロンは、興奮性の出力を上唾液核ニューロンに送り、唾液の分泌に関わる可能性が明らかとなった。 さらに麻酔下の同遺伝子改変ラットを用いて、顎下腺の排出導管にポリエチレンチューブを挿入し、反対側のチューブを圧力トランスデューサーに接続し唾液の排出の有無の測定を試みた。予備実験として、Wistar系ラット(200-250 g) 3匹を用い、ウレタン(500 mg/kg)とペントバルビタール(33 mg/kg)で麻酔し、塩酸キニーネ (10 mM)またはクエン酸(0.3 M)を舌背中央部に0.1ml滴下したところ、3匹中2匹で唾液分泌圧の増加がみられた。延髄小細胞性網様体Phox2b陽性ニューロンの光照射による活性化で唾液分泌が起きるかどうかについてはまだ確認できていない。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
2022年度は、延髄小細胞性網様体のPhox2b陽性ニューロンの活性化で実際に唾液分泌が起きるかどうかを麻酔下の動物で明らかにしようとしたが、唾液分泌は麻酔薬と麻酔深度が深くなると唾液分泌が無くなった。また圧力センサーにて顎下腺排出導管の排出圧を測定して唾液分泌のモニターとすることを試みたが、適切な機材選定や測定条件を探るのに時間がかかった。ようやく大量の唾液分泌を起こす塩酸キニーネ (10 mM)またはクエン酸(0.3 M)による味覚刺激で唾液の排出圧が確認できた。そこで研究期間を1年延長して令和5年度に、麻酔薬の選択と唾液分泌圧測定の適切な実験条件を探ったうえで、上唾液核背側の延髄小細胞性網様体Phox2b陽性ニューロンの活性化で実際に唾液分泌が起こるかどうかについて検索することとした。
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今後の研究の推進方策 |
2022年度に実施予定であった上唾液核ニューロンに興奮性のシナプス応答を誘発するPhox2b陽性ニューロンの検索について、以下の方法で行う。 1) Phox2b陽性ニューロンに光感受性タンパク質のチャネルロドプシンが発現する遺伝子改変ラットを用いて矢状断脳幹スライス標本を作成し、上唾液核ニューロンからパッチクランプ記録を行う。 2) 現有設備の2光子顕微鏡を用いて、Phox2b陽性ニューロンに限局的な光照射を行い、上唾液核ニューロンに興奮性のシナプス応答を誘発するPhox2b陽性ニューロンを探す。応答を起こすPhox2b陽性ニューロンが見つかれば、パッチクランプ記録を行って電気生理学的な性質を探るとともに、バイオサイチン等を細胞内に注入し、樹状突起や軸索の形態を解析する。 さらに、Phox2b陽性ニューロンに光感受性タンパク質のチャネルロドプシンが発現する遺伝子改変ラットの小細胞性網様体に光刺激プローブを挿入し、麻酔下にて光照射を行い、実際に顎下腺の排出導管から唾液が分泌されるかを排出導管の分泌圧でモニターし確かめる。その際、【現在までの進捗状況】で記載したように、麻酔薬の選択や唾液分泌圧測定の適切な実験条件に留意して検索を行う。
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