研究課題
挑戦的研究(萌芽)
次世代シーケンサーを用いた網羅的核酸検出手法(メタゲノム解析)の普及に伴い、多様な新規ウイルスの検出が相次いでいる。新規ウイルスを対象とした研究の多くはウイルスゲノム塩基配列解析にとどまり、感染性ウイルスの分離を経て、その病原性や宿主域、自然界における存続様式といった解析まで至るものは少ない。本研究では、研究代表者が樹立した宿主プロテアーゼ強制発現細胞へ野生動物サンプルを接種し、公衆衛生上重要なウイルスを多く含むプロテアーゼ依存性ウイルスの分離を試みる。分離したウイルスの細胞指向性や病原性を解析し、ウイルスの自然界における存続様式や公衆衛生学的リスクを考察する。
新規ウイルスを対象とした研究はウイルスゲノム塩基配列解析が主流であり、感染性ウイルスの分離を経て、その細胞指向性や宿主域、病原性といった性状解析まで至るものは少ない。本研究では、呼吸器ウイルスや消化管ウイルスの感染を促進する膜貫通型セリンプロテアーゼ遺伝子を恒常発現させた培養細胞を用いて、ザンビアに生息する齧歯類動物マストミスとフルーツコウモリからロタウイルスを分離した。また、インドネシアに生息するフルーツコウモリからは、ネルソンベイオルソレオウイルスと哺乳類オルソレオウイルスを分離した。分離したウイルスのフルゲノム塩基配列を決定するとともに、細胞指向性、病原性などの性状解析を実施した。
研究代表者が作出したプロテアーゼ恒常発現細胞を用いて、ザンビアに生息する野生動物からロタウイルス分離に成功し、本細胞がロタウイルスの分離に有用であることが示された。コウモリの糞便から分離したロタウイルスが別種の動物(実験用マウス)に下痢症を引き起こすこと、ヒト小腸上皮細胞に感染、増殖することを明らかにし、ロタウイルスの種間伝播に関して重要な知見が得られた。また、これまで哺乳類オルソレオウイルスが東南アジアで検出されたことはなく、インドネシアに生息するコウモリから哺乳類オルソレオウイルスを分離した本研究は、東南アジアにおける哺乳類オルソレオウイルスの初検出報告となる。
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すべて 国際共同研究 (7件) 雑誌論文 (2件) (うち国際共著 2件、 査読あり 2件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (6件) (うち国際学会 1件)
Journal of Virology
巻: 97 号: 1
10.1128/jvi.01455-22
Virology
巻: 575 ページ: 10-19
10.1016/j.virol.2022.08.003