研究課題/領域番号 |
21K19629
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研究種目 |
挑戦的研究(萌芽)
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
中区分58:社会医学、看護学およびその関連分野
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研究機関 | 千葉大学 |
研究代表者 |
佐藤 大介 千葉大学, 医学部附属病院, 特任准教授 (10646996)
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研究分担者 |
中岡 慎治 北海道大学, 先端生命科学研究院, 准教授 (30512040)
川上 英良 千葉大学, 大学院医学研究院, 教授 (30725338)
吉村 健佑 千葉大学, 医学部附属病院, 特任教授 (60801735)
藤田 卓仙 慶應義塾大学, 医学部(信濃町), 特任准教授 (80627646)
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研究期間 (年度) |
2021-07-09 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
5,980千円 (直接経費: 4,600千円、間接経費: 1,380千円)
2023年度: 1,820千円 (直接経費: 1,400千円、間接経費: 420千円)
2022年度: 1,820千円 (直接経費: 1,400千円、間接経費: 420千円)
2021年度: 2,340千円 (直接経費: 1,800千円、間接経費: 540千円)
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キーワード | 新型コロナウイルス感染症 / 感染症疫学モデル / 医療経済評価 / 数理科学 / ELSI / 医療管理学 / 費用対効果分析 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は数理科学に基づくモデルを用いて新型コロナウイルス感染症の陽性患者数を推計し、感染拡大防止政策や治療内容等が、どの対象や範囲に介入すれば最も感染拡大防止に効果的かつ最適な病床数や医療機器等の医療資源を配分できるかを解析する手法を開発する。本研究の特長は数理科学モデルを医療管理学の領域へ応用し、【課題1】COVID-19患者の必要病床数推計モデルを作成、【課題2】数理科学と費用対効果分析を統合した評価方法を開発する点にある。研究方法は数理科学モデルとして、1) 感染症流行モデル、2) Agent-Based Model、医療政策評価モデル、3) 費用対効果分析モデルを用いる。
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研究実績の概要 |
本研究は数理科学に基づくモデルを用いて新型コロナウイルス感染症の陽性者数および入院患者数等を推計し、公衆衛生学的介入やワクチン等による感染拡大防止政策が、どの対象や範囲に介入すれば最も効果的かつ医療需要に対する最適な医療資源を配置可能かを推計する数理モデルに基づく医療経済評価の手法を開発することである。 新型コロナウイルス感染症の陽性者数および入院患者数の把握は、感染拡大による急激な感染者増と都道府県および保健所設置市の人員不足や検査体制、情報収集方法の技術的課題等に加え、保健所が入力したデータは国の管理下に置かれ、入力した自治体が使用することが出来ず、研究利用として個票単位でのデータ収集が困難であった。そのため本研究では特定の都道府県に限定し、報道発表を通じて公表されている個票データを日別に集計することで、モデル分析に必要なデータを収集した。第6波以降はさらなる感染者数の増加により、公表資料においても集計値のみとされ個票でのデータ収集が不可能となった。これらの代替手法により、本年度においては第1波から第5波までの個票データをデータセットとして整理した。 いっぽうで、新型コロナウイルス感染症の陽性者等に関する情報の取り扱いに関する法的・倫理的課題(ELSI)については、特にIT技術を利用した感染症対策のELSI上の問題点についての課題を整理した。特にワクチン及び治療薬が存在しない段階の非製薬的介入(Nonpharmaceutical Interventions; NPIs)にIT技術を利活用する分類について、①隔離(措置入院、自宅療養、隔離)、②検疫(待機要請、停留)、③行動制限(緊急事態宣言、蔓延防止重点措置)、④リスク広報(政府公報)、⑤個人的防御(うがい、手洗い、マスク)の5類型を列挙し、公衆衛生上必要な個人情報を収集する場合の法的・倫理的課題を整理した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究は新型コロナウイルス感染症の陽性者数および入院患者数等を推計し、公衆衛生学的介入やワクチン等による感染拡大防止政策が、どの対象や範囲に介入すれば最も効果的かつ医療需要に対する最適な医療資源を配置可能かを推計する手法を開発することである。 しかしながら研究実施当初の想定以上に感染者数が増加したことにより都道府県および保健所機能がひっ迫し、保健所が入力したデータは国の管理下に置かれ、研究利用として個票単位でのデータ収集が困難となった。さらには入院患者数が確保病床数を超過し、自宅療養患者が急増した。これにより潜在的に存在する入院需要を把握することが困難となった。 2022年度においては感染者数よりも医療需要や社会経済活動に重点が置かれる等、感染症疫学モデルの役割は変化しつつある。そこで、研究計画を修正し、本研究では報道発表を通じて公表されている個票データを日別に集計することで、モデル分析に必要なデータを収集した。また、COCOAの不具合を契機に、公衆衛生上必要な個人情報の収集に伴う法的・倫理的課題を研究した。 このような社会背景に伴う研究計画の修正はありながら、研究は進展している。
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今後の研究の推進方策 |
IT技術を利用した感染症対策のELSI上の問題点については、情報収集手段ごとに技術的論点、法制面での論点、倫理に関わる論点を整理する。たとえば技術的論 点では、位置情報の粒度、提供形式、費用負担、保健所側との接続方法、法制面での論点では、位置情報収集の法的位置づけ、患者位置情報の受け渡し手順、国 民の理解を得る方策、倫理に関わる論点では、接触可能性通知サービスの倫理的許容等について検討を進める。2023年度は標準化された請求情報および診療情報等による新興感染症と一般診療の状況を定点的に把握する方法と、既存の方法による分析の精度を比較する。比較にあたっては、確率モデルや機械学習等の学習アルゴリズムを用いて予測モデルを構築し、公的に標準化された請求情報および診療情報等や、データ入力から分析までデジタルで完結するための医療データを相互運用できるHL7 FHIR等のデジタルトランスフォーメーションに係る制度動向を踏まえた分析体制や仕組みに関する検討を行う。また、急性期病院の標準化された請求情報および診療情報等であるDPCデータを用いて、新型コロナウイルス感染症と一般診療の状況を分析し、G-MISやNESID(感染症サーベイランス)データ等の既存データによる分析結果との比較・精度評価を行う。
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