研究課題/領域番号 |
21K19638
|
研究種目 |
挑戦的研究(萌芽)
|
配分区分 | 基金 |
審査区分 |
中区分58:社会医学、看護学およびその関連分野
|
研究機関 | 岐阜大学 |
研究代表者 |
下澤 伸行 岐阜大学, 高等研究院, 特任教授 (00240797)
|
研究期間 (年度) |
2021-07-09 – 2024-03-31
|
研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
|
配分額 *注記 |
6,500千円 (直接経費: 5,000千円、間接経費: 1,500千円)
2023年度: 2,080千円 (直接経費: 1,600千円、間接経費: 480千円)
2022年度: 1,950千円 (直接経費: 1,500千円、間接経費: 450千円)
2021年度: 2,470千円 (直接経費: 1,900千円、間接経費: 570千円)
|
キーワード | 新生児スクリーニング / 難病診断支援 / 予防医学 / 副腎白質ジストロフィー / 早期診断 / 難病克服支援 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究では根治的な治療法が開発され、早期の治療開始が予後改善に直結する遺伝性難病に対して、新生児スクリーニングの対象疾患を拡大するために必要な実践的診療支援モデルを確立して全国に普及し、公的支援による新生児スクリーニング対象疾患を全国に拡大して、全ての患者の発症前診断から発症予防、難病克服に繋げる。さらに研究室を衛生検査所登録し、研究開発した診断法を精度管理して保険診療にて臨床実装し、社会貢献に繋げる戦略を試みており、この実装モデルを全国に広く発信する。将来的には発症後治療を新生児スクリーニングによる発症予防にパラダイムシフトする必要性を社会に提唱し、予防医学による難病克服を目指す。
|
研究実績の概要 |
本研究では根治的な治療法が開発され、早期の治療開始が予後改善に直結する遺伝性難病に対して、①特定の地域において新生児スクリーニングの対象疾患を拡大するために必要な実践的診療支援モデルを確立して、その地域における全ての患者の発症前診断から発症予防、難病克服に繋げる。さらに②特定の希少疾患に対して、開発した診断システムを精度管理して施設を衛生検査所に登録して全国の新生児スクリーニング陽性者の精密診断を保険診療で提供して臨床実装を図る。この2つのシステムを確立し実績、課題を集積、検証して、最適な実装化モデルを全国に提唱して社会貢献に繋げる。将来的には発症後治療から新生児スクリーニングによる発症予防にパラダイムシフトする必要性を社会に提唱し、予防医学による難病克服を目指す。 2年目の成果として、①初年度、岐阜県において確立した原発性免疫不全症、ライソゾーム病(ファブリー病、ポンペ病、ムコ多糖症1型、2型)、副腎白質ジストロフィー(ALD)、脊髄性筋萎縮症の7疾患の新生児スクリーニング追加検査を石川県、三重県に広げて実施した。②岐阜大学が構築したALD&ペルオキシソーム病診断システムをALD新生児スクリーニング陽性者の精密診断に応用し、初年度の岐阜県、愛知県、宮崎県から令和4年度には石川県、三重県、宮城県に拡大した。最終年度はこれらの実績より得られた様々な成果と課題を抽出して3年間の成果として報告し、治療法のある難病に対して早期診断による発症予防に繋げていく。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
1. 岐阜県における拡大新生児スクリーニング支援体制の構築から東海・北陸地域への普及 初年度に岐阜県において7疾患で開始した拡大検査を令和4年度は石川県、三重県において金沢大学小児科、金沢医科大学小児科、三重大学小児科、及び両県の産婦人科医会、小児科医会と協働して組織を構築して両県内に普及した。令和5年3月末時点での受検率は岐阜県81.3%、石川県55.8%、三重県28.5%で新たに開始した二県ではさらに増加傾向にある。スクリーニング検査で陽性と判定された全ての新生児は各県の大学病院小児科を受診し、保護者への疾患情報の説明から精密診断、遺伝カウンセリング、さらに診断患者に対しては適切な治療につながるフォローアップシステムを提供している。 2. ALDを疾患対象にした拡大新生児スクリーニング全国診断支援モデルの構築 岐阜大学に設置した登録衛生検査所遺伝子検査室と附属病院難病検査室において、スクリーニング検査で副腎白質ジストロフィーが疑われた陽性者の遺伝子診断を保険診療で実施している。初年度の岐阜県、愛知県、宮崎県に加えて令和4年度には石川県、三重県、宮城県にスクリーニング陽性者の精密診断支援を拡大した。その結果、2年間に70例の陽性者の精密診断依頼を受け、ガスクロマトグラフ質量分析装置を用いた血中極長鎖脂肪酸とペルオキシソーム代謝産物であるフィタン酸、プラスマローゲンの測定と副腎白質ジストロフィーの責任遺伝子であるABCD1遺伝子解析を施行して、診断結果を提供した。さらに遺伝カウンセリングから家系解析にも対応した。今後、得られたエビデンスを集積、課題を抽出し対策を検討して、政策研究班等での議論に繋げ、全国に発信する。
|
今後の研究の推進方策 |
1. 岐阜県を地域対象にした拡大新生児スクリーニング支援モデルの構築と普及 2年間に対象地域を拡大し、予定通りに推移している。最終年度はこれらの実績と課題を抽出して全国に発信して公的スクリーニング選別のためのエビデンスに基づく政策提言につなげる。 2. ALDを疾患対象にした拡大新生児スクリーニング全国診断支援モデルの構築 2年間に岐阜県、愛知県、宮崎県、石川県、三重県、宮城県、福井県にALD新生児スクリーニング陽性者への精密診断支援システムを普及した。最終年度はその中で得られた実績と課題を検証し、政策研究班でも発表、議論し、対象疾患選定に繋げる。今後、ALD以外にも対象となる希少疾患が増加することも予想されるが、全ての希少疾患の精密診断施設を各都道府県に設置することは現実的には難しく、本研究で構築した専門医による特定難病の全国診断支援モデルを他の希少疾患にも応用可能な形で提供する。 最終的には本研究での2つの支援モデルを最適化して全国に発信することにより、より多くの治療法のある難病の早期診断による発症予防に繋げる。
|