研究課題/領域番号 |
21K19639
|
研究種目 |
挑戦的研究(萌芽)
|
配分区分 | 基金 |
審査区分 |
中区分58:社会医学、看護学およびその関連分野
|
研究機関 | 浜松医科大学 |
研究代表者 |
土屋 賢治 浜松医科大学, 子どものこころの発達研究センター, 特任教授 (20362189)
|
研究分担者 |
秋永 智永子 浜松医科大学, 医学部附属病院, 特任助教 (40402333)
谷口 美づき 浜松医科大学, 医学部附属病院, 診療助教 (60402319)
成瀬 智 浜松医科大学, 医学部附属病院, 診療助教 (90647611)
朝羽 瞳 浜松医科大学, 医学部附属病院, 診療助教 (20869515)
伊東 宏晃 浜松医科大学, 医学部, 教授 (70263085)
高橋 長秀 名古屋大学, 医学部附属病院, 准教授 (50846714)
Rahman Md.Shafiur 浜松医科大学, 子どものこころの発達研究センター, 特任講師 (60874360)
|
研究期間 (年度) |
2021-07-09 – 2024-03-31
|
研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
|
配分額 *注記 |
6,370千円 (直接経費: 4,900千円、間接経費: 1,470千円)
2022年度: 3,640千円 (直接経費: 2,800千円、間接経費: 840千円)
2021年度: 2,730千円 (直接経費: 2,100千円、間接経費: 630千円)
|
キーワード | 分娩麻酔 / 神経発達 / 自閉スペクトラム症 / 分娩 / 硬膜外麻酔 / 鎮痛 / コホート / 無痛分娩 / 出生コホート |
研究開始時の研究の概要 |
硬膜外・脊髄くも膜下麻酔を用いて痛みを制御する「無痛分娩」は,日本では普及しない(5.2%,2018年)。わが国では,無痛分娩の長期予後への懸念,とりわけ「痛みに耐えなければ母親になれない」という信念や,児の発達にまつわる懸念が強い。そこで,1000名を超える新生児の10年追跡データをもとに,無痛分娩をうけた母児の長期予後をデータで明示し,これらの懸念を払拭できるかどうかを検討する。
|
研究実績の概要 |
1) メタ解析 麻酔薬の硬膜下投与による分娩鎮痛(LEA)と児の神経発達予後について分担研究者Rahman講師とともに文献を渉猟した。2022年12月までに投稿された学術論文のうち,①LEAと,コンポジットスケール(ベイリー小児発達尺度,マレン早期学習尺度のいずれか)により定量的に評価した神経発達との関連を検討した縦断・前向き研究が7本みつかった。メタ解析の結果,LEAは児の神経発達に影響を与えないことが示唆された。②LEAと,神経発達の異常の一型としての自閉スペクトラム症(ASD)診断との関連を検討した縦断・前向き研究が7本見つかった。メタ解析の結果,LEAは児のASD診断のリスクを高めないことが示唆された。 2)浜松母と子の出生コホート研究(HBC Study)を利用した検討 LEAが児の神経発達に影響を与えるか否かについて,LEAに用いる麻酔薬と児の神経発達の関連をHBC Study(N=1258)のデータから検討した。HBC Studyは進行中の出生コホート研究であり,2007年に開始して以来13歳における評価を進めている。本課題においては,HBC Studyに参加する68名のLEAを受けた妊婦とその児を対象とした。LEA施行中のブピバカインおよびロピバカインの時間当たり投与量と,児の6,10,14,24,32,40ヶ月における神経発達(コンポジットスコア)との関連を,多変量線形回帰を用い,児の性別,児の出生時体重,同胞順位,母の教育歴と年齢を共変量として解析したところ,ブピバカインの時間当たり投与量が大きいほど10,14ヶ月のコンポジットスコアが小さくなる傾向が認められた。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初の計画ではLEA児と非LEA児の比較を行うことをもくろんでいたが,分担研究者・秋永より,LEAと学習障害に関する検討があること,その背景に局所麻酔薬の関与が示唆されていることの指摘を受け,解析計画を若干変更した。頻用されている2種の局所麻酔薬の影響に焦点をしぼったことで,メカニズムに言及できない研究デザインであったところが,局所麻酔薬の関与の有無を明らかにするデザインとなったことであらたな視点が広がった。また,この成果を2023年6月の米国麻酔学会で発表する予定であり(秋永),成果の発表という点でも成果を得たものとみている。ただし,13歳における児の神経発達評価がコロナ禍により遅れが生じた。13歳の児の神経発達を含めた超長期予後も検討することをもくろんでいたが,それができなかった点は,進捗の遅れとみることは避けられない。 一方,メタ解析については予定通りの進捗があった。
|
今後の研究の推進方策 |
1)メタ解析については,予定通りの解析が終了したが,2)の進捗の遅れに伴い研究機関が伸びたことに伴い,論文作成を行うことが可能となった。2023年度中にメタ解析論文の上梓を見込んでいる。 2)HBC Studyでは13歳の児の神経発達データが2023年8月ごろまでに集まることが見込まれる。そこで,LEAに伴う局所麻酔薬の影響,およびLEAそのものによる13歳の神経発達への影響(コンポジットスコア,自閉スペクトラム症診断,注意欠如・多動性障害診断)があるかどうかを検討し,論文化して上梓することをもくろんでいる。
|