研究課題/領域番号 |
21K19666
|
研究種目 |
挑戦的研究(萌芽)
|
配分区分 | 基金 |
審査区分 |
中区分58:社会医学、看護学およびその関連分野
|
研究機関 | 国立感染症研究所 |
研究代表者 |
氣駕 恒太朗 国立感染症研究所, 治療薬・ワクチン開発研究センター, 室長 (90738246)
|
研究分担者 |
佐藤 祐介 自治医科大学, 医学部, 助教 (20757265)
崔 龍洙 自治医科大学, 医学部, 教授 (50306932)
小野 久弥 北里大学, 獣医学部, 講師 (80704569)
|
研究期間 (年度) |
2021-07-09 – 2024-03-31
|
研究課題ステータス |
交付 (2021年度)
|
配分額 *注記 |
6,500千円 (直接経費: 5,000千円、間接経費: 1,500千円)
2023年度: 2,340千円 (直接経費: 1,800千円、間接経費: 540千円)
2022年度: 2,080千円 (直接経費: 1,600千円、間接経費: 480千円)
2021年度: 2,080千円 (直接経費: 1,600千円、間接経費: 480千円)
|
キーワード | バクテリオファージ / コリバクチン / 大腸菌 / 細菌感染症 / 下痢 / 腸内細菌叢 / マーモセット / 大腸がん |
研究開始時の研究の概要 |
大腸がんはわが国で最も罹患率の高いがんである。近年、大腸がん発症の一因が、大腸菌由来の『コリバクチン(毒素ペプチド)』にあるという報告が相次いだ。しかし、コリバクチン由来の大腸がんを防ぐ手法は未だ開発されていない。このような背景の中、我々は、特定の遺伝子を有する細菌を選択的に殺菌する抗菌ファージ技術を発表した(Kiga K. et al., Nat Commun. 2020)。本技術を用いれば、腸内細菌叢からコリバクチン産生性大腸菌を選択的に除去できる。本研究では、独自に開発した抗菌ファージ製剤を用い、大腸がん発症のリスクファクターであるコリバクチン産生性大腸菌の駆除を目指す。
|
研究実績の概要 |
大腸がんはわが国の死亡原因の第2位を占める。近年、大腸がん発症の一因がコリバクチンにあることが相次ぎ報告された。コリバクチンは、腸内細菌(主に大腸菌)のpks(polyketide synthases)遺伝子群から産生される毒素タンパク質である。しかし、コリバクチンによる発がんを防ぐ方法は開発されていない。本研究では、コリバクチン陽性大腸菌を狙ったファージ製剤により、pks(+)大腸菌(コリバクチン産生性大腸菌)の駆逐を目指した。 霊長類であるマーモセットは、ヒトに遺伝的に近縁な実験動物として利用される。実験動物糞便中のコリバクチン産生性大腸菌の有無を調べたところ、マーモセットから本菌が検出された。この結果から、コリバクチン産生菌の除去研究にマーモセットを利用できることが考えられた。そこでコリバクチン陽性大腸菌を保有するマーモセットの購入を試みた。しかし、糞便を調べたマーモセットはすでに在庫切れであったため、再度別のマーモセットの糞便を調べた。1回目に調べたときよりもコリバクチン遺伝子陽性大腸菌を保有するマーモセット数は少なかったが、マーモセットの確保はできた。 次に、確保したマーモセット由来の大腸菌(コリバクチン陽性)に感染するバクテリオファージを下水から採取する実験を行った。強力に殺菌するファージは得られなかったが、in vitroで十分な溶菌斑を作るファージの獲得には成功した。また、コリバクチン陽性株がファージ耐性を獲得することもわかったが、ファージ耐性菌にさらに感染できるファージの単離にも成功した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
実験に使おうと考えていたマーモセットが在庫切れとなってしまったことは予想外であったが、再実験を行うことで、マーモセットの確保が可能になった。マーモセットの糞便由来のコリバクチン陽性菌の取得、それに対するファージの単離にも成功したため、おおむね順調に進展していると考えられる。
|
今後の研究の推進方策 |
本研究はおおよそ順調に進んでおり、コリバクチン陽性大腸菌を殺菌できるファージの単離にも成功した。しかし、何度もファージ採取を行なっても、ファージはほぼ同一のものしか採れてこなかった。実際、ファージによるプラークの形状から、採取されたファージは全てゲノムの大きいファージであることが予想された。これらのファージは遺伝子改変が難しいことから、当初予定していた遺伝子改変ファージではなく、野生ファージを育種して殺菌活性を強化したファージで抗菌療法を行う予定である。
|